当事務所に約3年9か月勤務しました植田遼平弁護士(67期(大阪修習),京都大学卒,寝屋川市役所勤務,京都大学法科大学院卒,司法修習を経て,平成28年12月18日重次法律事務所に就職)が,今般,同期弁護士の事務所に合流し,独立して,退職する運びとなりました。

移転先の事務所は以下です。
上田・木岡法律事務所 電話 06-6809-1668  FAX 050-3730-4110
 大阪市北区西天満5-1-9 新日本曽根崎ビル4階
(67期2名の事務所→67期3名の事務所,今後,同期が更に合流する予定と聞いています)

従前,植田弁護士が担当した案件につきましては,引き続き,同弁護士が受任して対応する予定です(年末以降も,後任弁護士を採用する予定はありません)。

正式な登録変更は平成30年9月25日です。実際には,本日(26日)まで当事務所に出勤しており,上田・木岡法律事務所への出勤は明日以降となる予定です。

引き続き,植田遼平弁護士を,宜しくお願い申し上げます。

後任弁護士は採用しない方針です。弁護士の人数を要する場合は,経験弁護士の横のつながり,ネットワークの活用により,対応する予定です。

宜しくお願い申し上げます。

弁護士法人 大阪弁護士事務所 代表弁護士 重次直樹



医師は脳外傷は完治としたが,高次脳機能障害9級を取得した事例

依頼者

30代男性
 

委任の経緯

交通事故の被害者救済に熱心に取り組む整骨院の先生からの紹介

 

事故の概要

過失割合加害者:被害者=100:0
 

後遺障害診断書における傷病名

頭蓋骨骨折,脳挫傷,急性硬膜下血腫
 

後遺障害の等級認定

別表第2第9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)(基準となる労働能力喪失率は35%)
 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

手続き

病院同行(医師面談),自賠責保険の被害者請求(後遺障害の等級認定手続き),示談交渉
 

取得金額

治療費,休業損害の取得期間延長,慰謝料内金取得に加え,自賠責保険で616万円,示談成立で2900万円超,計3500万円超を取得
 

コメント

脳神経外科がある大病院で治療を続けていましたが,主治医は,本人にめまい,ふらつき,視野狭窄,視力減退等の自覚症状があるのに,脳に由来する症状は完治(後遺障害はない)と主張しました

しかし,本人の自覚症状や家族の話からは,高次脳機能障害の可能性を否定できないため,日常生活状況報告書を含む高次脳機能障害用の各書類を自賠責に提出して被害者請求した結果,「本件事故に起因する脳外傷による高次脳機能障害が残存しているものと捉えられます」として,
別表第2第9級10号が認定されました。

認定tt.png

【後遺障害等級認定票】 青下線部は,医師が「神経系統の障害に関する医学的意見」書において,後遺障害が残存したことを認めず,全て「正常」「自立」「障害なし」「日常生活は問題ない」等の記載をしたことを指摘する部分。赤下線部は,「日常生活状況報告」書やその他診断書の記載を総合判断すれば,高次脳機能障害による後遺障害について,9級10号に該当する旨を記載した部分。

医師は,治すこと(治療)については,関心が強く,高度の専門知識を有しており,正にプロフェッショナルな職業の代表ですが,治せなかった後遺障害を正当に評価することには,関心が低く,正しい評価をしない場合も珍しくありません。

特に,高次脳機能障害については,大病院の脳神経外科医においても,余り知識を備えていないと感じることが珍しくありません。逆に,小さな病院でも,高次脳機能障害の支援事業に参画するなどして,高次脳機能障害に取り組む専門医の方が,詳しい場合が少なくありません。

法曹(裁判所,弁護士等)においても,必ずしも高次脳機能障害の知識が充分とは言えない場合もありますので,高次脳機能障害の疑いがある場合には,この分野の知識・経験を有する弁護士に相談・依頼することをお勧めします。ただ,1件1件が重い事案になり,訴訟となる比率も高いため,経験を有する弁護士においても,余り多数の事件を受任することは,難しい事案になります。

担当及び分析 : 弁護士 重次直樹

 

交通事故の主な賠償項目(人身事故)

交通事故(人身事故)の主な賠償項目について,ご説明します。 
主な賠償項目t.png 




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 重次法律事務所 弁護士 重次直樹 

症状固定

ここで重要なのが,「症状固定」という概念です。
症状固定とは,治療を続けても大きな改善が見られず,治療効果が見られない状態を言います。

症状固定前:①治療費,②休業損害,③入通院慰謝料


この症状固定より前の段階では,主な損害賠償の項目は,①治療費,②休業損害,③入通院慰謝料となります。

①治療費

医師が診療報酬明細書で金額を明示しますので,カットされにくい項目です。個室代や,整骨院・接骨院等の費用は注意が必要な場合があります。また,症状固定の時期(治療期間の終期)が争われることがあります。

②休業損害

勤務先の休業損害証明書が出されれば,不当のカットされる心配はありません。
主婦でも賃金センサス評価により,休業損害が得られる点は留意が必要です。
個人事業主や役員については,評価が難しい問題が出てきます。

③入通院慰謝料(傷害慰謝料)

入通院慰謝料は,赤い本,青い本,大阪算定基準書などに,入院期間と通院期間(※)のマトリクスで基準が提示されています。
大阪地裁算定基準の一部は,下記表・グラフの通りです。たとえば,通院期間が6か月の場合,120万円が基準になります(重症基準なら150万円,他覚所見のないムチウチは3分の2(80万円)が基準になります。
一般の方には分からない金額なので,多くの場合,保険会社は弁護士基準よりずっと少ない金額を提示します。
自賠責基準は1日4200円が限度であり,通院90日なら37万8千円となります(大阪通常基準3か月の3分の1以下)
通院期間:実際に通院した日数ではなく,治療開始日から最終治療日までの期間,ただし,実通院日数が少ない場合には,実日数の3.5倍と期間とを比較して,短い方を通院期間とする場合があります。

入通院慰謝料(大阪基準)t.png

入通院慰謝料(大阪グラフ)t.png

当初の1か月は,通院で27万円,入院で53万円ですが,長期化するほど,1か月あたりの慰謝料増額幅が小さくなっていきます。

症状固定後:④後遺障害慰謝料,⑤後遺障害逸失利益

症状固定後は,後遺障害診断書を作成してもらい,等級認定を行う

症状固定と判断されると,その時点の状態で残った後遺障害について等級の認定を行い,残った後遺障害や認定された等級に応じて,④後遺障害の慰謝料と,⑤後遺障害の逸失利益が得られます。逸失利益というのは,交通事故がなく,後遺障害が残らなかった場合には,働いて稼ぐことが出来たが,交通事故による後遺障害で労働能力が低下して得られなくなった利益を言います。
等級によって,賠償額が大きく変わりますので,正当な後遺障害の等級認定を受けることは,極めて重要です。

④後遺障害慰謝料

等級ごとに基準値が定められています。
自賠責やこれに近い保険会社の基準よりも,弁護士・裁判基準の方が,大幅に高額となります。
赤い本,青い本,大阪地裁算定基準は,ほぼ同じですが,若干異なります。
     (左メモリ:万円,下メモリの右端2つは要介護2級・1級)
後遺障害慰謝料のグラフ(大阪・自賠責)t.png
等級別慰謝料の表t.png

⑤後遺障害逸失利益

基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間×ライプニッツ係数で計算します。
基礎収入は前年の所得で計算するのが原則です。主婦の場合は,賃金センサスで評価します。
労働能力の喪失率は,等級ごとに基準が定められています(下グラフ・表)。
喪失期間は,症状固定から67歳までの年数か,平均余命の半分の年数の,長い方が用いられるのが一般です。ただし,ムチ打ちの場合,12級では5~10年(多くの場合10年),14級では2~5年(多くの場合5年)に限定されます。
法定利率による中間利息の割り戻し計算があります(ライプニッツ係数)。

喪失率t.png

Ⅰ 第5回 全国交通事故シンポジウム

 平成30年7月4日,東京国際フォーラムで,「第5回 全国交通事故シンポジウム」が開催されました。
 当事務所からは代表の重次直樹弁護士と,植田遼平弁護士の2名が参加しました。IMG_2089t783.jpg交通事故(被害者側)で専門家として活動する弁護士が全国から集まりました。悪天候や多忙にもかかわらず,続いて行われた全国企業法務シンポジウムと合わせ,各地から参加した弁護士が,情報交換を行い,専門知識を高めるべく,活発に発表や議論を行いました。

Ⅱ 当事務所の参加と発表内容

当事務所からは,代表の重次直樹弁護士と,植田遼平弁護士が参加しました。
当事務所の発表内容は,以下の1~3です。

1 交通死亡事故と税金 → こちらのページもご参照ください。

 死亡保険金について,人傷保険金の過失割合部分や,搭乗者保険では,非課税とはならないこと,保険料の負担者によって税区分が異なること(一時所得,相続税,贈与税)などを説明しました。

2 最近の交通事故事案(被害者側)

1)保険会社が支払いを粘るケースが増えていること(保険会社の都合に合わせた医師の「意見書」,工学的な鑑定書の提出,紛センでのカルテ開示要求やあっせん提示直前での弁護士選任,訴訟移行の申立てなど)
2)調査事務所が被害者の知らないところで医療照会を掛けて,低い認定をした事例,特に,極めて不自然な関節可動域測定値を提出した事例
3)醜状障害について,紛争処理センターが,「外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会報告書」も引用して,労働能力喪失率を14%,労働能力喪失期間を67歳までとして,労働逸失利益を算定した裁決事例

3 前回報告のその後(高次脳機能障害,頚椎症性脊髄症,デグロービング損傷)

1 高次脳機能障害で自賠責が非器質性12級のみ認めた事案の訴訟提起のその後
2 頚椎症性脊髄症(脊柱管狭窄あり事故後悪化の例):類似事案が多く,他にも相談を受けたり,受任したりの状況
3 デグロービング損傷:審査請求の結果が間もなく出る(等級アップの見通しだが,どの程度あがるか不明,原処分は12級)
★主要抹消神経の損傷・麻痺などによる可動域制限は,自動値で認定すべきを,他動値で認定した事例は,取消し多発事案

Ⅲ 他事務所の発表や情報交換等

1 他事務所の発表例
・裁判員裁判となった交通死亡事故への被害者参加事例
・最近の事例報告:CRPSの事例,「下肢RSD症状についての所見」,SBI損保の弁特事例(一般的に払いが悪いという評判が弁護士の間では多い),自身の交通事故被害事件のその後
・他車運転危険特約について,保険会社に免責主張をされた事例
・将来介護費用
・弁護士費用特約,東京海上への弁特請求
・自動車損害賠償保障法に基づく照会の活用

2 他弁護士との情報交換
・当初予定していた準備書面への画像(MRI画像など)の貼り付け,指示説明のやり方については,発表では簡単に触れ,資料で一部,例示しましたが,終了後,他の事務所の弁護士から質問があり,具体的な準備書面の例をiPadで示したり,翌日のメールで作成方法を照会したりしました。
・自賠責調査事務所が,医療機関に働き掛けて,おかしな医療照会の回答書を書かせたり,不自然な関節可動域の測定値を出させたりした事例について,他事務所からアドバイスがあり,今後の参考にすべく,事務所内に徹底しました。

人身傷害保険:過失割合部分への充当等

交通死亡事故の解決事例2でも紹介していますが,人身傷害補償保険(人身傷害保険,人傷保険)を利用できる被害者の方は,過失割合が小さくない場合,人傷保険をどう活用するかが,非常に重要になります。改正保険法施行前はもとより,差額説の処理が強行規定となった改正保険法施行後も,過失割合が小さくない場合は,人傷保険金を先行請求することが被害者に有利になるのが一般的と考えます(後遺障害の認定,弁護士保険については,別途考慮が必要です。以下,詳述)。

目次
1 解決事例2による説明
2 損害賠償金との関係・・・絶対説vs訴訟基準差額説
3 人傷保険金の先行請求では,最高裁が被害者に有利な差額説を採用
4 人傷保険金の後行請求では,被害者に不利な絶対説の高裁判決が,上告不受理で確定
5 改正保険法の施行後も,先行請求が安全
6 後遺障害の認定,弁護士保険との関係
7 過失割合がちいさい場合:遅延損害金と弁護士費用
8 当事務所における対応


1 交通死亡事故の解決事例2による説明

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この事例は,交通死亡事故において,人傷保険金(2200万円)を先行請求することで,赤信号で横断した被害者の過失割合(基本割合80%,修正主張後65%)の相当部分を人傷保険金で埋め,加害者の過失割合部分(1900万円)と併せて,4100万円を獲得した事例です。 
  → 交通死亡事故の解決事例2

人傷保険会社は,自賠責保険を先行請求しないと(人傷保険金は後行請求でないと),支払いできない,と遺族に虚偽の説明をしていました。当事務所が介入して,人傷先行に切り替え,平成24年2月と5月の最高裁判決に従い,過失割合部分への充当に成功しました。

人傷保険会社の誘導に従って人傷保険金を後行請求した場合より,1900万円の増額(1.8倍超)となりました。

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2 人傷保険金と損害賠償金の関係・・・絶対説vs訴訟基準差額説

人傷保険金の取り扱いについては,絶対説(Ⅱ①)と訴訟基準差額説(Ⅱ②)で,被害者の獲得金額が全く異なることになります。

差額説t.png




































目次
1 解決事例2による説明
2 損害賠償金との関係・・・絶対説vs訴訟基準差額説
3 人傷保険金の先行請求では,最高裁が被害者に有利な差額説を採用
4 人傷保険金の後行請求では,被害者に不利な絶対説の高裁判決が,上告不受理で確定
5 改正保険法の施行後も,先行請求が安全
6 後遺障害の認定,弁護士保険との関係
7 過失割合がちいさい場合:遅延損害金と弁護士費用
8 当事務所における対応


3 人傷保険金の先行請求:最高裁が差額説を採用(最判平24.2.20最判平24.5.29


上記の説明図のように,被害者の獲得可能額が,絶対説なら7000万円(損害額の7割),差額説なら1億(損害額の10割)か,というような,大きな違い(※)の出るのですが,最高裁は人傷保険金の先行請求事例について,被害者に有利な差額説(訴訟基準差額説)採用しました(最判平24.2.20,最判平24.5.29)

 ※当事務所の交通死亡事故の事例2では,2200万円か4100万円か,という違いになりました。

上記2件の最高裁判決は,人傷保険金の後行請求の場合については判示していませんが,補足意見では,先行請求との均衡から,後行請求の場合でも差額説を採用すべき(24.2.20),あるいは,先行請求と同じになるよう約款の見直しを速やかに行うことを期待する(24.5.29)としました。
・最判平24.2.20,宮川裁判官の補足意見・・・約款の限定解釈により,後行請求の場合も,訴訟基準差額説
・最判平24.5.29,田原裁判官の補足意見・・・後行請求の場合も差額説の結論になるよう,約款の速やかな見直しを期待




4 人傷保険金の後行請求:絶対説の高裁判決が上告不受理で確定

ところが,被害者に有利な最高裁の平成24年の2件の判決と補足意見にも関わらず,大阪高判平24.6.7と東京高判平26.8.6は,人傷保険金の後行請求(賠償金取得の先行)の場合について,約款の文理解釈に従い,被害者に不利な絶対説の処理をして,訴訟基準差額説の主張を排斥し,これら判決が最高裁の上告不受理で確定しました。

これにより,(差額説を強行規定とする改正保険法が施行された)平成22年4月1日より前に締結された保険契約(旧商法により規律される)については,人傷保険金の先行請求と後行請求とで,大きな違いが生じうることになりました。


5 改正保険法の施行後も先行請求が安全

他方,改正保険法の施行により,平成22年4月1日以降に締結された保険契約では,被害者に有利な差額説によることになりました(改正保険法25条,26条により,差額説による処理が強行法規化されました)。

もっとも,改正保険法施行後の契約でも,過失割合の小さくない被害者は,人傷保険金を先行請求した方が安全です。

なぜなら,先行する賠償請求が判決や訴訟上の和解で行われていない限り,人傷保険会社は,裁判所により過失割合が認定されたものではないとして,過失割合を争い,あるいは低めの主張をして,過失割合部分の保険金支払いに,なかなか応じない場合が多いからです。

(写真左より)事務所代表弁護士 重次直樹, 相談室, ジオグランデ梅田(NU+の上層部)      
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6 後遺障害の認定,弁護士保険との関係

後遺障害の認定については,別の考慮が必要です。

一般的に,人傷保険金の先行請求が過失割合の小さくない被害者に有利な場合が多いとは言っても,後遺障害の等級認定の申請を人傷保険会社に任せることは別異のリスクが生じます。保険会社にとっては,後遺障害の等級認定が低くなるほど,支払いを抑えられますので,後遺障害の認定申請は被害者側の弁護士に委ねた方が安全です。

また,弁護士保険がある被害者の方は,賠償請求では弁護士保険が使えますが,人傷保険金の請求では使えないという点も考慮を要します。

人傷保険金については,後遺障害の等級認定を保険会社に委ねるリスク,弁護士保険が使えないデメリット,過失割合部分を埋められるメリットなどを総合的に検討して,どのような順序で,人傷保険金請求,自賠責保険請求,相手方への賠償請求などを行うのか,検討する必要があります。

目次
1 解決事例2による説明
2 損害賠償金との関係・・・絶対説vs訴訟基準差額説
3 人傷保険金の先行請求では,最高裁が被害者に有利な差額説を採用
4 人傷保険金の後行請求では,被害者に不利な絶対説の高裁判決が,上告不受理で確定
5 改正保険法の施行後も,先行請求が安全
6 後遺障害の認定,弁護士保険との関係
7 過失割合がちいさい場合:遅延損害金と弁護士費用
8 当事務所における対応


7 過失割合が小さい場合:遅延損害金・弁護士費用についての考慮

被害者の過失割合が0である場合や小さい場合,判決で認められる遅延損害金(年5%)や弁護士費用(概ね10%)を得られる賠償金請求と比較して,これらが得られない人傷保険金が不利になりますので,人傷保険金は使わない選択が多くなります。

もっとも,訴訟を予定していない場合,示談や紛争処理センターでの解決では,遅延損害金・弁護士費用分は得られないのが通常ですから,判決になれば,という圧力を加害者に加える以上の意義はありません。



8 当事務所における対応

過失割合が小さくなく,後遺障害の等級認定が必要な場合に,当事務所で良く行う対応パターンは以下です。
・症状固定時に,傷害部分の人傷保険金を請求する。
・後遺障害の等級認定を含む自賠責保険の手続きは,被害者側の弁護士が行う。
・等級獲得後に,過失割合を睨みながら,相手方への賠償請求を行うか,人傷保険金の後遺障害部分を取得した後に賠償請求を行うか,選択する。

過失割合が0の場合は,年5%の遅延損害金や概ね10%の弁護士費用分を考慮して,使わないのが一般的です。
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人傷保険金の請求順序は,前記の「交通死亡事故の解決事例2」のように,被害者の取得金額に大きく影響しうるものです。

死亡事故と比較すると,後遺障害の等級認定が必要な人身事故は,より複雑になります。

人身傷害保険を使える方で,過失割合が小さくない場合は,ぜひ,当事務所の弁護士にご相談ください。




文責:弁護士法人 大阪弁護士事務所 代表 弁護士 重次直樹
(写真左。右は事務所の入るジオグランデ梅田=NU+上部。梅田ロフト隣)
DSC_8661.jpg    600-450IMG_0276.jpgのサムネール画像 

交通死亡事故の逸失利益2:自賠責保険の基準

死亡逸失利益の裁判基準については,以下のサイトもご参照ください。
  ○ 死亡事故の逸失利益1(労働逸失利益)

低所得者では,賃金センサスを利用可能な自賠責基準>裁判基準の場合も少なくない


逸失利益は,低所得者の場合などで,自賠責保険基準>裁判・弁護士基準となることが少なくない項目です。
これは,死亡逸失利益でのみならず,後遺障害逸失利益でも同様です。

自賠責保険では,逸失利益の計算において,①事故前の年間収入額,②死亡時の年齢に対応する年齢別平均給与額(別表Ⅳ,平成12年賃金センサスによる)の年相当額,高い方を基礎に算定するため,低所得者の場合,自賠責保険基準>裁判・弁護士基準となりやすい傾向があります。

賠償総額では,結局,裁判基準の方が高くなるのが一般的

ただし,他の項目,特に慰謝料で裁判・弁護士基準が高い上,自賠責保険は上限が設けられているため(死亡の場合は3000万円が自賠責の上限),被害者の過失割合が高い事故を除き,合計額では結局,裁判・弁護士基準の方が高くなるのが一般です。

死亡逸失利益に関する自賠責基準の概要


(1)年金受給者以外
年間収入額(又は年相当額)×(1-生活費控除率)×死亡時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数

(2)年金受給者・・・ア+イの合計額
ア 就労可能年数分
年間収入額(又は年相当額)×(1-生活費控除率)×死亡時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数

イ 就労可能年数~平均余命分
年金年額×(1-生活費控除率)×(死亡時の年齢における平均余命のラ係数-同就労可能年数のラ係数)

(3)生活費控除率
・被扶養者がいる場合 ・・・ 35%
・被扶養者がいない場合 ・・・ 50%
  ※被扶養者は父母・配偶者・子に限られ,弟・妹・いとこ・甥・姪などを扶養している場合を含みません。

(4) 年収評価1:年金受給者以外
①有職者(原則)
  事故前1年間の収入額と,
(死亡時年齢の)年齢別平均給与額(別表Ⅳ)の年相当額の,高い方
②35歳未満の有職者(例外)
  事故前1年の収入額と,全年齢平均給与額の年相当額,年齢別平均給与額の年相当額の,高い額
③退職後1年未経過の失業者(定年退職は除く)
  「退職前1年間の収入額」を「事故前1年の収入額」とする。
④幼児・児童・生徒・学生・家事従事者
  全年齢平均給与額の年相当額(58歳以上で年齢別平均の方が低い場合は,低い額

⑤その他,働く意思と能力を有する者
  年齢別平均給与額の年相当額,全年齢平均給与額の年相当額の低い方

(5) 年収評価2:年金受給者
①有職者(原則)
  事故前1年間の収入・年金合算額と,
(死亡時年齢の)年齢別平均給与額(別表Ⅳ)の年相当額の,高い方
②35歳未満の有職者(例外)
  事故前1年の収入・年金合算額と,全年齢平均給与額の年相当額,年齢別平均給与額の年相当額の,高い額
幼児・児童・生徒・学生・家事従事者
  全年齢平均給与額の年相当額(58歳以上で年齢別平均の方が低い場合は,低い額)と,年金年額の高い方

④その他,働く意思と能力を有する者
  年齢別平均給与額の年相当額,全年齢平均給与額の年相当額の低い方と,年金年額の高い方

交通死亡事故の慰謝料4:自賠責保険の基準

交通死亡事故の慰謝料は,自賠責保険では裁判基準よりも相当に低額になります。

裁判基準では,①一家の支柱,②母親・被害者,③その他の3分類でしたが,自賠責基準では,そのような区分ではなく,(1) 本人の慰謝料 (2) 一定の身分関係のある遺族の慰謝料 (3) 一定の扶養関係による加算,により計算します。

(1) 本人の死亡慰謝料 ・・・ 350万円

(2) 父母,配偶者,子(養父母,養子,認知した子,胎児を含む)の死亡慰謝料
 ア 1人の場合 ・・・ 550万円(本人分と合算で900万円
 イ 2人の場合 ・・・ 650万円(本人分と合算で1000万円
 ウ 3人以上の場合 ・・・ 750万円(本人分と合算で1100万円

(3) 扶養関係による加算
 (2)の中に(※),被扶養者がいる場合,200万円を加算
 → ア 加算後,本人分と合算で1100万円
    イ 加算後,本人分と合算で1200万円
    ウ 加算後,本人分と合算で1300万円

  ※ 父母・配偶者・子以外の者を扶養していても,200万円加算にはなりません。
    例:兄が弟や妹を扶養している場合   
      → 弟や妹には(2)の慰謝料は支払われず,(3)の200万円加算もありません。

以上のとおり,交通死亡事故の慰謝料は,自賠責保険の基準では350万円~1300万円となっており,裁判・弁護士の基準と比較すると相当に低額になっています。

裁判・弁護士基準については,以下のサイトをご参照ください。
 ○ 交通死亡事故の慰謝料1:一家の支柱
 ○ 交通死亡事故の慰謝料2:母親・配偶者
 ○ 交通死亡事故の慰謝料3:その他


文責:弁護士法人 大阪弁護士事務所 代表 弁護士 重次直樹
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【人傷保険金の活用】交通死亡事故,赤信号で渡った高齢主婦でも,人傷保険金の先行請求で4100万円超を獲得した事例

坂根↑t.png2200万円→4100万円(+1900万円)の事例です。
人傷保険金2200万円を先行取得して,全額,過失割合部分に充当し,1900万円の増額に成功しました。
最高裁平成24年2月と5月の判決を受け,被害者に有利な解決を行いました(平成24年6月受任の事件)。

提示額・取得額の概要(2200万円→4100万円)

・人傷保険会社が提示した支払額・・・総額2200万円(自賠責保険2100万円+人傷保険金100万円)
   ①自賠責2100万円の取得,
   ②その後,人傷保険金の後行請求で100万円(人傷保険会社の負担は100万円)
・当事務所が取得した総額・・・・総額4100万円
   人傷保険2200万円の先行請求・取得
   ②その後,訴訟で加害者から1900万円取得(人傷保険会社の負担は2200万円)


増額ができた仕組(図解)

・基本過失相殺率 被害者80%(赤信号で渡る)
・修正主張後の過失相殺率 被害者65%(訴訟上の和解の前提)
・損害認定額5400万円(概算,訴訟上の和解の前提)
・人傷保険金2200万円取得後に,訴訟上の和解で加害者から1900万円を取得

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人傷保険金を先行請求・取得する重要性

被害者の過失割合が小さくない事件では,人傷保険金を先行請求・取得することが,極めて重要になります。
これは,差額説(上記Ⅲの処理)が強行法規化されて,絶対説の処理(上記Ⅱ)の処理が出来なくなった改正保険法改正後も,変わりません。人傷保険会社は,被害者が訴訟対応していない限り,過失割合や損害総額が裁判所により確定されていない,過失割合部分が不明だ,などと主張して,過失相殺部分の支払いを拒んだり,減額を主張したりする場合があります。
人傷保険に加入している被害者の方で,過失割合が小さくない事件の被害者となった方は,人傷保険金の扱いに詳しい弁護士事務所に相談されることを,強くお勧めします。
人傷保険金を過失割合部分に充当する重要性,先行請求の重要性については,専門ページを開設予定です。追って公開します。

人傷保険に加入している被害者の方で,過失割合が小さくない事件の被害者となった方は,当事務所への相談・委任をお勧めします。
   

(写真左より)事務所代表弁護士 重次直樹, 相談室, ジオグランデ梅田(NU+の上層部)  
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交通死亡事故:その他の解決事例

交通死亡事故:保険会社提示の2.3倍の獲得(2930万増額)の事例
死亡した被害者の両親や祖母(非相続人)に,固有の慰謝料が認められた事例
道路を横断中に飲酒運転の自動車に衝突された死亡事故の事例

 (解決事例1)
    走出2.3倍t.png
 

【交通死亡事故の事例】 保険会社提示の2.3倍獲得(3000万円近い増額)の事例

 【目次】
 1 概要
 2 損害賠償項目
 3 遺族に対応と,大幅増額への驚き
 4 安易に示談せず,弁護士に相談・委任する重要性
 5 交通死亡事故:その他の解決事例

1 概要

走出2.3倍t.png・保険会社から遺族への示談提示額 2281万円
・当事務所の介入後の取得額 5211万円(約2.3倍,+2930万円)
・過失割合は加害者100%,被害者0%(加害者の信号無視事案)
・高齢有職女性で低所得だったが,家事労働を賃金センサスで評価された

加害者の保険会社が,ネット系(最大手)だったこともあり,遺族への提示額は極めて低額でした(自賠責保険で確保できる金額からの上乗せは70万円)。しかも,速やかな提示ではなく,加害者(自動車運転者)の刑事裁判が終った後の提示でした。

2 損害賠償項目の説明


交通死亡事故の主な賠償項目は,①死亡慰謝料,②死亡逸失利益,③葬儀費用,④治療費,の4つで,特に①慰謝料,②逸失利益の金額が大きくなります。  → 詳しくは,交通死亡事故の賠償項目 の記事をお読みください。
交通死亡事故の損害項目.png
慰謝料,逸失利益という交通死亡事故の2大賠償項目は,いずれも,一般の方には相場が分からないので,保険会社は,裁判基準より大幅に低い額を提示するのが通常です。

本件は特に低い提示でした。




                     項目グラフ2t.png

    
走出項目別2t.png

①死亡慰謝料は,「母親・配偶者」の基準は2500万円ですが,この保険会社は,自賠責でカバーできる1100万円から50万円しか上乗せしませんでした(1150万円で提示,上のグラフの黄色部分)。訴訟上の和解の前提となった裁判所認定額2500万円の半分以下でした。
【死亡慰謝料】の詳細は,以下をご覧ください。
 ○ 交通死亡事故の慰謝料1(一家の支柱)
 ○ 交通死亡事故の慰謝料2(母親・配偶者)
 ○ 交通死亡事故の慰謝料3(その他)
 ○ 交通死亡事故の慰謝料4(自賠責保険の基準)

②死亡逸失利益は,自賠責保険でカバーできる金額と同額を遺族に提示しました(1111万円)。訴訟上の和解の前提となった認定額の約半分でした。
【死亡逸失利益】の詳細は,以下をご覧ください。
 ○ 交通死亡事故の逸失利益1(労働逸失利益)
 ○ 交通死亡事故の逸失利益2(自賠責保険の基準)

なお,上図「訴訟上の和解」のその他582万円(グレーの部分)は,かなりの金額が遅延損害金です(うち,自賠責保険金の入金までの確定遅延損害金が322万円)。

3 遺族の対応と,大幅増額への驚き

遺族は,何件か,交通事故の被害者側の法律事務所に連絡・相談した後,当事務所に依頼されました。
当事務所の弁護士が介入した後,提示額は増額されましたが,納得できる金額からは程遠く(4100万,内訳は上のグラフの左から3番目「弁護士への提示」ご参照),訴訟を提起しました。
訴訟後,訴訟上の和解により,約2.3倍,3000万円近い増額(総計5211万円)となった解決事例です。

弁護士介入前後での,余りの増額に,遺族を代表して手続きを進めていた方は,大変,驚かれていました。

4 安易に示談せず,弁護士に相談・依頼する重要性

保険会社の提示額は,正当な賠償額の半分以下の場合も珍しくないため,示談に応じる前に,弁護士に示談額をチェックしてもらうことをお勧めします。

この事案の頃は,大手財閥系の保険会社と比較して,ネット系の支払いは悪く,特に本件の保険会社(ネット系最大手と自ら宣伝)は,被害者側の弁護士の間で,支払いの悪さが度々話題になる保険会社でした。しかし,昨今では,大手財閥系の保険会社も,ネット系保険会社と余り変わらず,弁護士が介入した後も,弁護士基準(遅延損害金,弁護士費用分を除いたコア部分)から,さらに値切って粘ることが増えてきました。

死亡事故では医療面・後遺障害面での争いは大きくないため,本件のように3000万円近い(2900万円を超える)増額,2倍を超える増額は,余り見かけませんが,1.5倍程度の増額,1000万円を超える増額であれば,死亡事故でも,珍しくはありません。

保険会社から交通死亡事故に関する示談の提示を受けた場合は,示談に応じる前に,是非,当事務所にご相談ください。い。被害者の過失割合が大きい事件でない限り,大幅な増額になるのが一般です。    
     
(写真左より)事務所代表弁護士 重次直樹, 相談室, ジオグランデ梅田(NU+の上層部)  
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5 交通死亡事故:その他の解決事例

【人傷保険活用】赤信号で渡った高齢主婦で,4100万円獲得(1900万増額)の事例
死亡した被害者の両親や祖母(非相続人)に,固有の慰謝料が認められた事例
道路を横断中に飲酒運転の自動車に衝突された死亡事故の事例

(解決事例2)                   
坂根↑t.png    

交通死亡事故と税金


交通死亡事故により遺族が受領する賠償金等には,どのような税金がかかるのでしょうか?

要約すれば,
1 損害賠償金は,非課税(まれに例外扱いの項目あり)
2 人身傷害補償保険は,被害者の過失割合部分に課税される
3 搭乗者保険は課税される(損益相殺されない)。
4 2・3の課税項目は保険料の負担者により異なる
 ア 受取人が負担・・・所得税(一時所得)
 イ 死亡した被害者が負担・・・相続税
 ウ 第三者が負担・・・贈与税
 エ 非課税になる良くあるケース…当該保険金が,「被害者の死亡により,相続人等が被害者の雇用主等から受ける弔慰金等で,一定の条件を満たすもの(相基通3-20,3-23)」に該当する場合(雇用主等の代わりに受領して雇用主が支払うべき災害補償等に充当するケースが良く見られる)
5 贈与税の税率は高いですが,相続人ごとに控除が受けられるので,1000万円の搭乗者保険を受領しても,2名以上の相続人がいる場合は,100万円前後かそれ以下になります。
 なお,下の3の4「計算例」(搭乗者保険)は,当事務所で扱った交通死亡事故の事例に基づき,税理士の井川真理子先生にも確認を頂いています。
井川先生.PNG
 井川真理子税理士事務所 → ホームページ
 
 重次法律事務所と同じビル内に事務所を開設する,相続専門の税理士です。
 これまで,当事務所の交通死亡事故で遺族が受領した人身傷害補償保険,搭乗者保険の税務,相続税務などについて,申告納税の手続きやアドバイスを頂いています。

1 交通死亡事故の損害賠償金は,原則,非課税

1)まず,交通事故の被害者が受領する損害賠償金(治療費,慰謝料,休業損害,逸失利益など)は,原則,非課税です。課税対象となる例外は,ごく限らた場合です(所法9,51,73,所令30,94,所基通9-19,9-23,例外は事業関係が中心,詳細は,国税庁ホームページをご参照ください→こちら

2)次に,被害者が死亡したことに対して,遺族に支払われる損害賠償金についても,所得税法上,非課税規定があり,非課税です(相法2,所法9,所令30)。但し,被相続人(死亡した被害者)が生存中に受領することが決まっていた損害賠償金を,受け取らない間に死亡した場合は,損害賠償請求権という債権が相続財産となり,相続税の対象となります。

2 人身傷害補償保険の過失割合部分は非課税,被害者の過失割合部分は課税対象

1)人身傷害保険金については,課税の対象となるか否か,課税の種類について,場合分けが必要です。

2)平成24年の2つの最高裁小法廷判決が,訴訟基準差額説を採用しました。また,改正保険法は,差額説を強行法規として規定しました。このため,人身傷害保険金については,被害者の過失割合部分から充当されることになります。このため,被害者の過失割合部分に相当される保険金については,損害賠償の性質を有さず,課税対象となります。

 具体的には,保険料の負担者によって,以下の税金となります。
ア 保険金の受取人が,保険料を負担した場合・・・所得税(一時所得)
イ 死亡した被害者が,保険料を負担した場合・・・相続税
ウ アイ以外の第三者が,保険料を負担した場合・・・贈与税

3)これに対して,加害者の過失割合部分に相当する保険金については,損害賠償の性質を有するので,原則,非課税となります。

3 搭乗者保険(課税対象)

1 搭乗者保険を契約している場合,交通死亡事故では,対象となる死亡被害者1名あたり1000万円が給付される例が多く見られます。金額が控除対象内に収まらない場合が多く,ほとんどのケースで課税の問題が発生します。

2 損益相殺はされない(最高裁平成7年1月30日判決)
最高裁は,搭乗者保険について,その性質から,損害をてん補する性質は有さないとして,損益相殺を否定しました。
したがって,遺族が受領した搭乗者保険金は,課税対象になります。
なお,上記最高裁判決以降の下級審裁判例においては,搭乗者保険の受領について,慰謝料の減額事由にはなるとするものと,慰謝料の減額事由としても考慮しないものに分かれています。

3 保険料の負担者によって,以下の税金となるのは,人傷保険金と同様です。
ア 保険金の受取人が,保険料を負担した場合・・・所得税(一時所得)
イ 死亡した被害者が,保険料を負担した場合・・・相続税
ウ アイ以外の第三者が,保険料を負担した場合・・・贈与税

4 計算例
・搭乗者である男性が死亡,妻と2人の子が残された。
・加害者(運転者)の雇用主が保険料を負担する搭乗者保険金1000万円が支給された。
・妻の相続分 500万円
・子の相続分 250万円×2
・妻の税金 基礎控除110万円,控除後390万円,税率20%→78万円,金額対応控除25万円 → 53万円の贈与税
・子の税金 基礎控除110万円,控除後140万円,税率10%→14万円,金額対応控除はなし → 各14万円の贈与税
・総計 53+14×2=総計81万円の贈与税 
・申告納税が必要になります(申告納税期限 翌年3月15日)



交通死亡事故の慰謝料3 :その他

 ○ 交通死亡事故の慰謝料1:一家の支柱
 ○ 交通死亡事故の慰謝料2:母親・配偶者
 ○ 交通死亡事故の慰謝料4:自賠責保険の基準


「一家の支柱,母親・配偶者」以外が死亡した場合の,交通死亡事故の慰謝料については,以下の基準が各書籍に記載されています。
・赤い本 2000万円~2500万円  (平成28年増額改定,以前は2000万円~2200万円
・青い本 2000万円~2500万円

・大阪地裁算定基準(※)  2000万円~2500万円
※大阪地裁基準では,「その他」は「一家の支柱」以外であり,母親・配偶者を含めた基準になっています。


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 (赤い本(2018)下巻100頁図3を基に,当事務所で作成)

 上図の慰謝料分布は,平成21年~平成27年6月の裁判例の分析ですから,赤い本基準が「2000万円~2200万円」であった当時から,既に,現実の裁判例では,基準を上回る判決がむしろ通常だったと言えます。

 年齢層では,①20歳代までと,②60歳代以上が多く,③その中間(30歳代~50歳代)は少なくなります。これは,③中間層では,「一家の支柱」「母親・配偶者」が多くなるためです。

 そして,①20歳代までの死亡慰謝料は,2200万円~2900万円に多く分布していて,赤い本の新基準(2000万円~2500万円)=青い本や大阪基準よりも,高い水準になっています。
 他方,③60歳代以上では,2000万円~2600万円に分布しており,基準に近くなっています。

死亡慰謝料その他Wt.png 以上のとおり,赤い本の基準(2000万円~2500万円)より,実際の裁判例の方が,慰謝料認定額は高額となる傾向にあります(特に若年齢の被害者の場合)。

 事案ごとに個別事情が異なりますので,裁判例の具体的な認定内容を掘り下げて理解し,各事案において有利な事情を主張することが重要だと感じます。

(分析/文責:弁護士法人 大阪弁護士事務所 代表 弁護士 重次直樹)

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交通死亡事故の慰謝料2:母親・配偶者

   ★ 「母親・配偶者」以外は,こちらもご覧ください。
   ○ 交通死亡事故の慰謝料1:一家の支柱
    ○ 交通死亡事故の慰謝料3:その他
        ○ 交通死亡事故の慰謝料4:自賠責保険の基準
  
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★交通死亡事故の賠償項目全般については,以下のサイトもご参照ください。   
       ○ 交通死亡事故の損害賠償

母親・配偶者」が死亡した場合の,交通死亡慰謝料については,以下の基準が各書籍に記載されています。

・赤い本 2500万円(※2400万円から増額,平成28年版より)
・青い本 2400万円~2700万円

※大阪地裁算定基準では,「一家の支柱」以外を「その他」として,2000万円~2500万円とされていて,母親・配偶者についての基準は定められていません。

赤い本では,「母親・配偶者」の死亡慰謝料の基準額が,平成28年版より2400万円→2500万円に増額されました。
(「その他」も2000万円~2200万円→2000万円~2500万円に増額されています)

これは,赤い本(平成28年)版の下巻(講演録編)の97頁以下「裁判例における死亡・後遺症慰謝料の認定基準」という記事に詳しい説明がありますが,実際の裁判例では,以前の基準よりも高い水準にあることから,修正された経緯です。

※※赤い本 「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故相談センター東京支部編)

 
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 (赤い本(2018)下巻99頁図2を基に,当事務所で作成)

 この分析は,「子供たちが成長して独立したり,ほぼ自立しているという年齢層の被害者」について,「母親・配偶者」の典型的な事例とは断定しにくい,という問題意識をもって行われた経緯があります。

 結果は,死亡慰謝料が旧基準の2400万円,新基準の2500万円より低くなるのは,70歳代,80歳代です。

 たとえば,下の図表の赤枠の通り,50歳代では,新基準の2500万円よりも高い死亡慰謝料(平均2667万円)が認められています。
hahat.png(50歳代の死亡慰謝料,赤い本H28版下巻,99頁) 
2400万円(2件),2450万円(1件),2500万円(3件),2600万円(1件),2650万円(1件),2750万円(1件),3000万円(2件),3250万円(1件),平均2667万円

60歳代では,60歳代前半では2500万円超が5件,2500万円が1件,2500万円未満が3件で,2500万円を上回っています。60歳代後半では,2500万円1件,2500万円超が1件,2500万円未満が4件(うち,2400万円2件)であり,平均では,旧基準の2400万円は上回りますが,新基準の2500万円には届きません。

以上のとおり,子供が独立して自立する年齢になっても,直ぐに母親・配偶者の死亡慰謝料が基準を下回るのではなく,2500万円を下回るのが60歳代後半,2400万円を下回るのは70歳代以降,というのが,赤い本(28年)下巻における裁判例分析の結果です。

加害者側の保険会社は,子供が独立する年齢になると直ぐに,母親・配偶者基準の適用排除を主張することがありますが,実際の裁判例は上記の通りですので,60歳代前半までは,2500万円基準超,60歳代後半でも2400万円以上の金額を主張して問題ないと考えます。

★母親・配偶者が被害者となった交通死亡事故,当事務所の解決事例★
・保険会社から遺族への提示額 2281万円
・当事務所の介入後の取得額 5211万円(約2.3倍,+2930万円)
・手続き 示談交渉決裂後,訴訟提起,訴訟上の和解で解決

死亡事故2.3倍t.png                       (分析/文責:弁護士法人 大阪弁護士事務所 代表 弁護士 重次直樹)

DSC_8661.jpg    600-450IMG_0276.jpgのサムネール画像 

交通死亡事故の慰謝料1:一家の支柱

    ★ 一家の支柱以外を含め,こちらもご覧ください。
 ○ 交通死亡事故の慰謝料2:母親・配偶者
 ○ 交通死亡事故の慰謝料3:その他
 ○ 交通死亡事故の慰謝料4:自賠責保険の基準

「一家の支柱」が死亡した場合の,交通死亡事故の慰謝料については,一応,以下の基準が各書籍に記載されています。
・赤い本 2800万円
・青い本 2700万円~3100万円
・大阪地裁算定基準(※) 2800万円
  ※大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(第3版)
      (大阪地裁民事交通訴訟研究会編著,判例タイムズ社) 

「一家の支柱」とは,当該被害者の世帯が,主として被害者の収入によって生計を維持している場合をいいます(青い本,大阪地裁算定基準)。
※※青い本 「交通事故損害額算定基準 実務運用と解説」(日弁連交通事故相談センター)

交通死亡事故の損害項目.png
  ★交通死亡事故の賠償項目については,以下のサイトもご参照ください。
       ○ 交通死亡事故の損害賠償


死亡慰謝料については,赤い本2016(平成28年)版の下巻(講演録編)の97頁以下に,「裁判例における死亡・後遺症慰謝料の認定基準」という記事が掲載され,98頁に一家の支柱について,裁判例の検討結果が公表されています。
死亡支柱慰謝料.jpg                       (赤い本(2018)下巻98頁図1を基に,当事務所で作成)

上の図表のとおり,一家の支柱が死亡した場合の慰謝料については,2800万円に集中しており,赤い本,大阪地裁算定基準の2800万円は正当に見えます。また,青い本の2700万円~3100万円をはみ出る判決は,3100万円超が3件,2700万円未満が3件のみであり,青い本の基準も正当に見えます。

もっとも,実際には,原告(被害者)の弁護士が,家族のどの範囲までの慰謝料を主張するか,によって,金額が変わっている可能性があります。

以下は,当事務所が交通事故民事裁判例集から,平成28年1月1日~平成28年5月25日までの死亡慰謝料を集計したものです。死亡慰謝料hpt.png上の図表のとおり,妻子や両親については,一人○○万円と認定されています。最も金額が大きい3300万円の事例(東京地裁平成28年2月9日)では,妻200万円,子2人各150万円のほか,父母各100万円が認められて,合計が3300万円になっています。

また,年齢を見ると,81歳,79際,63歳の被害者でも,2800万円,3000万円,2800万円が認められています。年金生活者でも当該被害者の世帯が,主として被害者の収入によって生計を維持している場合をい,一家の支柱として,慰謝料2800万円という基準が妥当しています(81歳,63歳の男性は事故時無職)。なお,79歳の男性は,妻が働き夫は引退(主夫状態)ですが,配偶者基準に近い2510万円が認められました。
34歳,49歳という年齢では,3300万円と2800万円であり,平均3000万円を超えています。

以上を見ると,
・退職後の年金生活者でも2800万円を得られる可能性が充分にある
・2800万円を超える例も少なくない

ということが言えると考えます。

加害者側の保険会社は,退職後の年金生活者などについて,「一家の支柱ではない」として低い金額の死亡慰謝料を主張することがありますが,実際の裁判例は上記の通りです。年金生活者でも,主たる家計の担い手である限り,一家の支柱として,2800万円の死亡慰謝料を主張して問題ないと考えます。


(分析/文責:弁護士法人 大阪弁護士事務所 代表 弁護士 重次直樹)
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死亡事故ついてはこちらもご覧下さい

●死亡事故について ●死亡事故の損害賠償 ●死亡事故の逸失利益1(労働逸失利益)
死亡事故の慰謝料1(一家の支柱) ●死亡事故の慰謝料2(母親・配偶者) ●死亡事故の慰謝料3(その他)
 


交通事故の過失相殺率(過失割合)の基本

1 過失相殺率(過失割合)とは

交通事故の損害賠償では,まず,損害額を計算し,確定させます。しかし,損害額の全額を加害者に請求できるとは限りません。被害者側にも過失があった場合には,その過失の割合に応じて,獲得できる金額が減額されます。

このような被害者の過失の割合に応じた減額のことを「過失相殺」といい,その割合のことを「過失相殺率」又は「過失割合」と言います。


2 自賠責の場合

3つの基準の記事で説明しました通り,裁判基準(弁護士基準)で計算される賠償額は,一般的に,自賠責保険の基準額よりも,ずっと大きな金額になります。

他方,過失相殺については,自賠責保険の利用にメリットがあります。
被害者の過失割合が7割未満の場合,自賠責保険では過失割合により減額はされません。傷害部分では,7割以上10割未満の過失割合があっても,2割の減額にとどまります。


自賠責における減額割合は,以下の表の通りになります。

被害者の過失割合 減額割合
後遺障害・死亡部分 傷害部分
7割未満 減額なし 減額なし
7割以上8割未満 2割減額 2割減額
8割以上9割未満 3割減額
9割以上10割未満 5割減額

上記の通りですから,過失割合の大きい被害者の場合,自賠責保険の請求のみに留めた方が有利な場合もあります

弁護士の選び方

交通事故の事件処理を弁護士に依頼することは,多くの人にとって,一生に1,2度あるかどうかというところでしょう。最近では,テレビCMなどで法律事務所の広告を見ることができます。

また,インターネット上にも多数の法律事務所がホームページを掲載しています。多数の弁護士の中から,実際に依頼する弁護士を選ぶにはどうしたらよいのでしょうか。
 
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交通事故の事件処理を弁護士に依頼することは,多くの人にとって,一生に1,2度あるかどうかというところでしょう。最近では,テレビCMなどで法律事務所の広告を見ることができます。

また,インターネット上にも多数の法律事務所がホームページを掲載しています。多数の弁護士の中から,実際に依頼する弁護士を選ぶにはどうしたらよいのでしょうか。

 

弁護士を選ぶポイント

1 交通事故をどれくらい扱っているか

画像 319.jpg   交通事故の事件処理においては,一般的な法律知識のみならず,保険制度や医学に関する知識が必要です。

一度も交通事故を扱ったことがない弁護士はもちろん,あまり経験のない弁護士では,対応困難な場面に直面する可能性があります。

コンスタントに交通事故の事件処理を行っている弁護士に依頼することが望ましいでしょう。
 
 

2 同種の傷病について事件処理した経験があるか

交通事故の事件処理をコンスタントに行っている弁護士であっても,ありとあらゆる傷病について事件処理をしたことがあるとは限りません。


高次脳機能障害やTFCC損傷など,高度な医学的知識が必要となる事案については,事件処理の経験のある弁護士に依頼しなければ適切な対応ができない可能性があります。

 

画像 137.jpg

 

3 相性が合うか

0f549c29f20cca5917583323a0d7c892_s.jpg   弁護士との相性も重要です。交通事故は依頼者の方にとって一生にかかわることですから,信用がおけないような弁護士に依頼することは避けるべきです。

また,事件処理の進捗や今後の見通し等について気兼ねなく質問できないような弁護士に依頼してしまうと,現状どうなっているのかわからなくなってしまい,不安を抱くことになりかねません。
 
多数の弁護士の中から,ご自身に合った弁護士を一度で見つけるのは難しいかもしれません。最近では,無料相談を受け付けている弁護士も多いですから,まずは弁護士と実際に面談してみてはいかがでしょうか。
 

交通事故の事件処理を弁護士に依頼することは,多くの人にとって,一生に1,2度あるかどうかというところでしょう。最近では,テレビCMなどで法律事務所の広告を見ることができます。


また,インターネット上にも多数の法律事務所がホームページを掲載しています。多数の弁護士の中から,実際に依頼する弁護士を選ぶにはどうしたらよいのでしょうか。

 大阪府内では,平成26年に人身を伴う交通事故が,4万2729円発生しており,死傷者数は5万1644人にのぼります。件数・死傷者数とも減少傾向ではあります。
 上記の交通事故のうち,交差点及び交差点付近で発生した事故の割合は54%と過半数を占めています。やはり,交差点は,交通事故の発生の危険が高いといえます。
 
 大阪府内の交差点で発生した交通事故のうち,事故発生件数の多い交差点が公表されています。

 ①阿波座駅前交差点
  大阪市西区立売堀4丁目11番11号先
  平成26年の事故発生件数17件
  発生した17件すべて軽傷事故です。
  
 ②東天満交差点
  大阪市北区天満1丁目26番13号先
  平成26年の事故発生件数17件
  発生した事故のうち,2件は重傷事故です。

 ③桜橋交差点
  大阪市北区曽根崎新地1丁目4番12号先
  平成26年の事故発生件数17件
  17件の交通事故のうち,重傷事故が2件発生しています。

 ④梅新東交差点
  大阪市北区西天満4丁目13番8号先
  平成26年の事故発生件数16件
  発生した16件のうち,重傷事故が3件発生しています。

 ⑤西本町交差点
  大阪市西区阿波座1丁目1番10号先
  平成26年の事故発生件数16件
  発生した事故のうち,重傷事故は1件です。

 交通事故発生件数の多い交差点=危険な交差点の上位5か所は,すべて大阪市内でした。これらの5つの交差点で83件の交通事故が発生しています。左折事故が最も多く21件発生しています。次に多く発生したのが右折事故15件です。
 梅新東交差点や桜橋交差点は,高架道路・歩道橋や街路樹・地下鉄の入り口があり見通しの悪い交差点です。交差点を通行する際は,十分に気をつけて通行する必要があります。万が一,交通事故に遭った場合は,早めに弁護士に相談することをお勧めします。 平成27年の大阪府内の自転車事故での死亡者数は50人と平成26年比で16人増となりました。このような状況を受け,平成28年4月1日に,大阪府自転車条例が施行されました。

 この条例は,以下の4つを柱にしています。
 ①自転車保険の加入義務化
 ②交通安全教育の充実
 ③自転車の安全利用
 ④交通ルール・マナーの向上

 条例では,まず自転車の利用者に自転車保険の加入を義務づけています。そして,保護者に対して監護する未成年者が自転車を利用するときに,自転車保険の加入を義務づけています。
 また,事業者が事業活動において自転車を利用させるときは,自転車保険の加入するよう努力義務を課しています。自転車の小売業者に対して,自転車販売時に自転車保険の加入の有無の確認,自転車保険の加入についての情報を提供する努力義務を課しています。

 自転車保険の加入については,自転車事故により生じた損害を填補できる保険であれば,自転車保険である必要はありません。加入義務に違反しても罰則はありません。

 他に,夜間に自転車を利用する場合,自転車の側面に反射器材を備える努力義務,高齢者が自転車を利用する場合のヘルメット等の事故時の損害軽減のための器具を使用する努力義務についても規定されています。 【事案】
 ディサービスの送迎車から降車の際に,職員が踏台を使用せず,利用者の手を引いて,地面に降ろそうとしたところ,着地の際に大腿骨頚部骨折の傷害を負った。
 利用者の相続人が,その際の負った傷害により後遺障害が残存したとして,上記車両の自動車保険の搭乗者傷害特約に基づいて,後遺障害保険金の支払いを求め,保険会社がすでに支払った入通院保険金が法律上の原因がなく不当利得だとして,返還を求めた。

 上記の事案で,最高裁判決が出ました(最高裁平成28年3月4日第二小法廷判決)。

 最高裁は,以下のように判断し,上記の事故が車両の運行に起因するものとはいえないと,運行起因性を否定しました。
 事故が職員の介助により送迎車から降車した際に生じ,職員が降車場所として危険な場所に車両を停車していない。利用者が降車する際,通常踏台を置いて安全に着地するよう職員が介助していたが,事故時も職員の介助を受けて降車しており,車両の危険が現実化しないような一般的な措置がされていて,着地の際につまづいて転倒したり,足をくじいたり,足腰に想定外の強い衝撃を受けることもなかった。
 したがって,本件事故は,車両の運行が本来的に有する危険が顕在化したものであるということはできないので,車両の運行に起因するものとはいえない。

当事務所の交通事故問題解決の特徴

①充実した医療知識によるアドバイス~通院・治療・後遺障害等級認定など~

通院・治療のアドバイス

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治療終了(症状固定)後でないと対応しない弁護士・法律事務所もあります。旧来はそれが一般でした。
 
しかし,適切な補償(損害賠償)を受けるためには,適切な治療を受け,適切な後遺障害の等級認定を受ける必要があります。
 
当事務所では,交通事故の直後からでもご相談をお受けしています。また,事案により,治療・通院のアドバイスも行っています。
更に,弁護士による病院訪問・医師面談や医療照会も必要に応じて積極的に行っています。

>>>詳しくはこちらから
 

②後遺障害上位等級や死亡事故の実績~高次脳機能障害や要介護1・2級の高額事案も~

bf0604ad57c34f4be045c514d1772e3d_s.jpg  
交通事故による受傷部位のうち,統計上,約30%が頚部のむち打ち等,約17%が腰部のむち打ち等になります。
 
当事務所では,むち打ちはもちろん,多種多様の部位や種類の後遺障害の取扱い実績があります。骨折(指・腕から大腿骨・骨盤・頭蓋骨まで),圧迫骨折,TFCC損傷,脊髄損傷,高次脳機能障害,機能障害・醜状障害・短縮障害など,詳しくは事例をご参照ください。
当事務所で取扱った最近の後遺障害の上位等級実績の一例として,脳外傷後の高次脳機能障害により後遺障害等級別表第1(要介護)の第2級(別表第2の第1級より上位)を獲得した事例があります(平成27年12月時点)。
 
その他にも,要介護1級を含めた後遺障害上位等級の取得実績があり,数千万円以上の賠償金獲得の実績が多数あります。

>>>詳しくはこちらから

 

③年間300件以上のお問い合せ~弁護士1人平均100件以上です。~

画像 137.jpg   当事務所では年間300件以上,交通事故の被害者の方からのお問い合せをいただいています。お問い合わせ内容も死亡事故・高次脳機能障害・むち打ちなど多岐にわたります。

多数のご相談をお受けする中で培ったノウハウを活かし,交通事故被害者の方のサポートに尽力しています。交通事故に遭い,何をどうしたら良いか分からないという方に対しても,親切丁寧にご対応致しますので,是非,お気軽にご相談下さい。

④被害者専門の事務所~常に被害者側の立場で行動します。~

 当事務所は,損保会社との顧問契約がない被害者専門の事務所です。

   過去においても損保会社との顧問契約はありません。
2b9ae03e9c1e55b3435dcdf2d6be6b44_s.jpg   交通事故に詳しい弁護士・法律事務所の多くは,損保会社の顧問をしているか,過去において顧問契約をしていますが,当事務所では顧問契約はなく,完全に被害者側に立ち,被害者専門の立場でサポートを続けています。

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⑤相談料・着手金0円~弁護士特約のない方は0円,ある方も自己負担0です。~

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弁護士に事件を相談する場合は,一般的には,相談料が必要です。また,示談交渉や訴訟など,事件処理を依頼する場合には,着手金も必要です。

しかし,賠償を受け取る前に弁護士費用がかかるのでは,必ずしも被害者救済が充分ではありません。
 
そこで,当事務所では,交通事故被害者の方を一人でも多く救済したいという想いから,交通事故について相談料・着手金の負担を0円とすることで,スムーズな被害者救済を目指しています。

交通事故直後で,弁護士費用を心配されている方も,お気軽にご相談下さい。
 

⑥阪急梅田駅2分の好立地~梅田ロフト隣,JR大阪駅8分の好立地~

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当事務所は,阪急梅田駅(茶屋町口)から徒歩約2分,JR大阪駅や地下鉄梅田駅からは徒歩約8分,御堂筋線中津駅から徒歩約5分の好立地です。
 
北隣に梅田ロフト,東隣に丸善ジュンク堂書店,西隣に商業ビルNUがあります。
 

大阪の法律事務所は裁判所のある西天満に集中していますが,当事務所では,依頼者の利便性を考え,平成22年2月に梅田支部を開設,平成27年5月に梅田に本部を移転して事務所を集約しました。

 

阪急梅田駅2分の好立地~梅田ロフト隣,JR大阪駅8分の好立地~

当事務所は,阪急梅田駅(茶屋町口)から徒歩約2分,JR大阪駅や地下鉄梅田駅からは徒歩約8分,御堂筋線中津駅から徒歩約5分の好立地です。
 
北隣に梅田ロフト,東隣に丸善ジュンク堂書店,西隣に商業ビルNUがあります。
 

大阪の法律事務所は裁判所のある西天満に集中していますが,当事務所では,依頼者の利便性を考え,平成22年2月に梅田支部を開設,平成27年5月に梅田に本部を移転して事務所を集約しました。

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梅田支部時代は1名だった弁護士が,現在では3名,梅田にある当事務所に常駐しており,特に阪急沿線や御堂筋線をご利用の方,勤務先が梅田の方などにつきまして、交通面での利便性が格段に向上したものと考えております。
 

後遺障害上位等級や死亡事故の実績~高次脳機能障害や要介護1・2級の高額事案も~

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交通事故による受傷部位のうち,統計上,約30%が頚部のむち打ち等,約17%が腰部のむち打ち等になります。
 
当事務所では,むち打ちはもちろん,多種多様の部位や種類の後遺障害の取扱い実績があります。骨折(指・腕から大腿骨・骨盤・頭蓋骨まで),圧迫骨折,TFCC損傷,脊髄損傷,高次脳機能障害,機能障害・醜状障害・短縮障害など,詳しくは事例をご参照ください。
当事務所で取扱った最近の後遺障害の上位等級実績の一例として,脳外傷後の高次脳機能障害により後遺障害等級別表第1(要介護)の第2級(別表第2の第1級より上位)を獲得した事例があります(平成27年12月時点)。
 
その他にも,要介護1級を含めた後遺障害上位等級の取得実績があり,数千万円以上の賠償金獲得の実績が多数あります。
 
当事務所では,死亡事故の実績も多数あります。死亡事故の場合は,民事の損害賠償だけではなく,刑事手続きの段階から関与することがあります。

たとえば,刑事告訴や被害者参加を行い,刑事裁判に関与し,「死人に口なし」の交通死亡事故において,事故状況等の解明に被害者の立場で参画し,被害者遺族の思いを伝えるなどの活動を行っています。

年間300件以上のお問い合せ~弁護士1人平均100件以上です。~

DSC_8711.jpgのサムネール画像   当事務所では年間300件以上,交通事故の被害者の方からのお問い合せをいただいています。お問い合わせ内容も死亡事故・高次脳機能障害・むち打ちなど多岐にわたります。

多数のご相談をお受けする中で培ったノウハウを活かし,交通事故被害者の方のサポートに尽力しています。交通事故に遭い,何をどうしたら良いか分からないという方に対しても,親切丁寧にご対応致しますので,是非,お気軽にご相談下さい。
 
 

相談料・着手金0円~弁護士特約のない方は0円,ある方も自己負担0です。~

弁護士に事件を相談する場合は,一般的には,相談料が必要です。また,示談交渉や訴訟など,事件処理を依頼する場合には,着手金も必要です。

しかし,賠償を受け取る前に弁護士費用がかかるのでは,必ずしも被害者救済が充分ではありません。
 
そこで,当事務所では,交通事故被害者の方を一人でも多く救済したいという想いから,交通事故について相談料・着手金の負担を0円とすることで,スムーズな被害者救済を目指しています。

交通事故直後で,弁護士費用を心配されている方も,お気軽にご相談下さい。
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具体的には,弁護士費用特約のない方については,初回相談料30分(実際は1時間程度まで)を無料とし,着手金も0円で対応しています。特約のある方についても,相談料・着手金ともに,自己負担0で対応しています。なお,弁護士特約がなく,かつ,加害者が無保険で賠償金の回収可能性がない場合や,物損のみ等の損害額が少額な場合等は,受任しても費用倒れになる可能性が高く,相談も受任もお断りしています。かかる事案について,どうしても相談されたい場合には,無料相談の対象外となりますので,あらかじめお問い合わせください。
 
相談料・着手金0円の取扱いは,被害者救済のための対応です。弁護士費用特約に加入し,弁護士費用特約を使用できる場合は,当事務所所定の相談料・着手金・報酬金をお支払いいただいています。弁護士特約がある場合でも,相談料・着手金については,自己負担0となり,多くの場合,報酬金についても,自己負担0となっています。
 

被害者専門の事務所~常に被害者側の立場で行動します。~

1 当事務所は,損保会社との顧問契約がない被害者専門の事務所です。

    過去においても損保会社との顧問契約はありません。
600-450DSC_8624.jpg   交通事故に詳しい弁護士・法律事務所の多くは,損保会社の顧問をしているか,過去において顧問契約をしていますが,当事務所では顧問契約はなく,完全に被害者側に立ち,被害者専門の立場でサポートを続けています。

2 弁護士基準より大幅に低い保険会社基準

これは,弁護士業界では良く知られた事実ですが,加害者側保険会社は交通事故の賠償において,ほとんどの場合,裁判基準より大幅に低い金額での解決を目指しています。


事案によっては,自賠責保険で全てを賄い,任意保険会社の自己負担0円となることを目指しています。これを損保会社の業界用語で自賠内解決と言います。

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当事務所では,依頼者の利益と共に,社会正義の実現や社会貢献をも目指しており,正当な損害賠償額による解決,という観点から,任意保険会社側の仕事は,将来においても受ける予定はありません。
 

3 損保会社と被害者の間の知識格差と交渉ストレス
 

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損保会社は,非常に多くの交通事故を取り扱っていますが,被害者の方は一生に一度あるかどうかの経験です。損保会社と被害者との間には,余りにも大きな知識格差があり,多くの交通事故では,示談処理が損保会社のペースで進み,結果的に被害者が適切な賠償を受けられていません。
 
2で述べた賠償金額のみならず,交渉過程においても,知識格差により劣性に立ちがちな被害者をサポートすることが,当事務所の役割であると考えています。
 

金額以外でも損保会社の対応に不満を持ち,ストレスを感じている被害者は少なくありません。


当事務所の弁護士に依頼することで,面倒なやり取りやストレスから解放されることは,委任する大きなメリットです。

充実した医療知識によるアドバイス 通院・治療・後遺障害等級認定など

1 通院・治療のアドバイス

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治療終了(症状固定)後でないと対応しない弁護士・法律事務所もあります。旧来はそれが一般でした。
 
しかし,適切な補償(損害賠償)を受けるためには,適切な治療を受け,適切な後遺障害の等級認定を受ける必要があります。
 
当事務所では,交通事故の直後からでもご相談をお受けしています。また,事案により,治療・通院のアドバイスも行っています。
更に,弁護士による病院訪問・医師面談や医療照会も必要に応じて積極的に行っています。
 

2 後遺障害の等級認定

後遺障害が残った場合,適切な後遺障害の等級認定を受けることが,適切な賠償金を受ける上で重要です。

加害者側保険会社に等級認定の申請を任せると,なるべく等級が取れないよう,あるいは,低い等級認定になるよう,資料を選別・強調される危険性があることは,保険会社出身者の証言からも明らかです。
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当事務所では積極的に自賠責保険に対する等級認定の被害者請求を行っており,等級認定の実績が多数あります。

 

更に,既に取得された等級認定に対して,異議申立を行い,上位等級を取得した事例もあります。異議申立の成功率は一般的に高くないものの,当事務所では,交通事故でも労災事故でも,異議申立の成功事例があります。
 

バイク運転中,自動車に追突され540万円以上の賠償金を獲得した事例

依頼者

60代男性
 

委任の経緯

HPからお問い合わせいただき,ご依頼される

事故の概要

バイク運転中に後方から進行してきた自動車が追突(自動車とバイク)

過失割合加害者:被害者=100:0

 

後遺障害診断書における傷病名

右中指骨性マレット・右肩腱板損傷・右肩外傷性拘縮
 

後遺障害の等級認定

併合14級
右肩痛の症状について,14級9号
右第3指末節骨折後の右中指痛について,14級9号

弁護士介入前の示談提示

なし

手続き

自賠責へ被害者請求,示談交渉
 

取得金額

合計540万3674円
自賠責保険:75万0000円
任意保険:465万3674円

 

コメント

 依頼者が直接,保険会社とやり取りした際は,休業損害について自賠責保険の基準である日額5700円しかみとめないと言われたそうです。
 しかし,弁護士介入後は,自賠責保険の基準を上回る基準で和解に至りました。

 平成27(2015)年年末から平成28(2016)年年始にかけての弁護士法人大阪弁護士事務所の営業について,ご案内します。

 平成27年の年末は,12月28日(月)が年内の最終営業日となります。

 平成28年の年始は,1月4日(月)からの営業となります。

 休業期間中は,ご迷惑をおかけいたしますが,よろしくお願い申し上げます。

胸椎圧迫骨折による後遺障害逸失利益を獲得した事例

依頼者

40代男性
 

委任の経緯

大阪弁護士事務所の他の事件の依頼者からの紹介
 

事故の概要

自転車運転中に後方から進行してきた自動車が追突(自動車と自転車)

過失割合加害者:被害者=100:0

 

後遺障害診断書における傷病名

胸椎多発圧迫骨折,右環指小指捻挫,頚部挫傷
 

後遺障害の等級認定

8級相当
胸椎多発圧迫骨折後の脊柱の障害につき,「せき柱に中程度の変形を残すもの」として8級相当認定
(背中の痛み等の症状は上記の派生障害)

 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

手続き

自賠責へ被害者請求,示談交渉,紛争処理センターの示談斡旋・裁定
 

取得金額

合計3732万9182円
自賠責保険:819万0000円
任意保険:2913万9182円

 

コメント

自賠責保険の後遺障害等級に認定されても,実質上,労働能力が制限されないような類型の場合,後遺障害による逸失利益が損害として認められないことがあります。
本件の最大の争点は,胸椎圧迫骨折に伴う後遺障害による逸失利益の損害額でした。
保険会社は,後遺障害による逸失利益利益は,せいぜい12級の神経症状程度であるとの主張を崩しませんでした。
紛争処理センターにおいて示談斡旋はまとまらず,裁定がなされました。裁定では,労働能力喪失率30%・67歳までの逸失利益が認められました。

 

自動車で停車中に後方から追突され,14級の後遺障害を負った40代男性の事例

依頼者

40代男性
 

委任の経緯

大阪弁護士事務所に後遺障害の認定等について相談され,そのまま委任
 

事故の概要

自動車停車中に後方から自動車が追突(自動車と自動車)

過失割合加害者:被害者=100:0

 

後遺障害診断書における傷病名

頚椎捻挫,腰背部打撲傷
 

後遺障害の等級認定

併合14級
頚椎捻挫後の頚部から左上肢にかけての疼痛,だるさ,左手の疼痛及びしびれ等の症状,腰背部打撲傷後の腰痛の症状について,それぞれ14級認定

 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

手続き

自賠責へ被害者請求,示談交渉
 

取得金額

合計383万0000円
自賠責保険:75万0000円
任意保険:308万0000円

 

コメント

事故後約8か月後に受任し,自賠責への被害者請求,任意保険会社との示談交渉を行いました。
すでに症状固定間近だったため,後遺障害に向けて書類を揃える以上のアプローチはできない状態でした。治療は,整形外科をメインに月15日ほど通院し,リリカやノイロトロピンを症状固定まで,継続して処方されるという治療経過から後遺障害が認められました。
任意保険会社との示談交渉では,大きく争うことなく,任意保険会社と示談が成立することができました。

 

自動車運転中に追突され,14級の後遺障害を負った50代女性の事例

依頼者

50代女性
 

委任の経緯

大阪弁護士事務所に今後の流れ等について相談され,そのまま委任
 

事故の概要

自動車で運転中に加害車両が衝突(自動車と自動車)

過失割合加害者:被害者=100:0

 

後遺障害診断書における傷病名

頚椎捻挫,腰椎捻挫,脳しん盪,右半身不全マヒ
 

後遺障害の等級認定

併合14級
頚椎捻挫後の頭痛・首から手にかけての痛み・しびれ感等の症状,腰椎捻挫後の腰痛の症状について,それぞれ14級認定

 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

手続き

自賠責へ被害者請求,示談交渉
 

取得金額

合計380万0000円
自賠責保険:75万0000円
任意保険:305万0000円

 

コメント

事故後4か月ほど経過してから受任し,自賠責への被害者請求,任意保険会社との示談交渉を行いました。整形外科に月15日ほど通院し,ブロック注射やノイロトロピンを処方されるという治療経過から後遺障害が認められました。
任意保険会社との示談交渉では,訴訟前の解決を前提に,大きく争うことなく,家事従事者の休業損害を含め,任意保険会社と示談が成立することができました。

 

 誠に勝手ながら,大阪弁護士事務所では,下記の期間を夏季休業とさせていただきます。
 
                  記
 
 平成27年8月13日(木)~平成27年8月16日(日)


 平成27年8月17日(月)より,平常通り営業いたします。

 休業期間中はご迷惑をおかけいたしますが,よろしくお願い申し上げます。
 人身傷害保険の約款上,保険会社が支払うべき保険金について,決定された損害額から自賠責保険等によってすでに給付が決定しまたは支払われた金額を差し引くことになっています。

 人身傷害保険金の支払いに際し,保険会社は,損保料率算出機構に自賠責保険からの支払可否,重過失減額の有無,後遺障害等級について判断をあおいでいるのが通常だと思われます。
 そうすると,人身傷害保険の支払いに際し,常に自賠責保険から支払われる金額が決定されていて,差し引かれると解する余地がでてきます。

 東京地裁平成24年2月3日判決は,この点について,以下のように判断しています。
 人身傷害保険の約款上,「すでに給付が決定し」た金額とすでに「支払われた金額」を同列に規定していることから,「すでに給付が決定し」た金額とは,未だ支払われていないが,すでに「支払われた金額」と同視できる程度に支払われることが確定した金額をいうと解するのが文理上素直な解釈である。
 自賠責保険から支払われる金額は,実際に自賠責保険に対する請求がなされ,損害調査が終了した段階で自賠責保険会社が決定するものである。加害者による請求も被害者による請求も行われていなければ,自賠責保険会社による決定も行われていない。
 被害者が訴訟を提起している場合(本事案は別訴提起済み),訴訟において事前認定と異なる司法判断が示され,これに基づ支払いを行った加害者から自賠責保険に請求がなされた場合,司法判断を尊重した認定が行われ,事前認定と異なる金額になることもある。
 したがって,損保料率算出機構が行った事前認定によって,自賠責保険からの支払可否,重過失減額の有無,後遺障害等級の判断が示され,それに基づく金額の積算がされているからといって,自賠責保険から支払われる金額が確定しているとはいえない。

息子がお亡くなりになり,近親者固有の慰謝料を獲得した事例

・被害者の慰謝料は,交通死亡事故の場合,法定相続人が請求します。
・被害者の父母,配偶者,子については,固有の慰謝料が認められます(民法711条)。
・本件では,民法711条に規定のない被害者の祖母についても,固有の慰謝料が認められました

依頼者

死亡した被害者の両親
 

委任の経緯

相続人と利害が対立し,弁護士が辞任したことから,当事務所へ依頼
 

事故の概要

道路停車中の被害車両に,居眠り運転していた加害車両が後方から追突,被害者は自車の下敷きになり即死
 

過失割合

加害者:被害者=100:0
(保険会社主張は加害者:被害者=70:30)

 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

手続き

訴訟提起(控訴審で和解)
 

取得金額

合計337万円
父親:192万円(固有の慰謝料100万円,葬儀費用の一部,弁護士費用・遅延損害金相当額含む)
母親:145万円(固有の慰謝料100万円,単独相続した祖母の固有の慰謝料20万円,弁護士費用・遅延損害金相当額含む)

 

コメント


息子さんを交通事故でなくされたご両親からご依頼をいただきました。被害者の相続人には,別の弁護士が就いていましたので,近親者の固有の慰謝料等の請求を行いました。
訴訟においては,過失割合が争点になりましたが,道路の状況,停車位置,事故現場の明るさ等から被害者に過失はないとの主張を裁判所が認め,過失相殺は0となりました。
両親以外にも,被害者がお亡くなりになった後にお亡くなりなった祖母の固有の慰謝料も認められました。
大阪地方裁判所の損害賠償の基準では,死亡慰謝料には近親者の固有の慰謝料も含まれていますが,結果的に基準額以上の慰謝料が認められました。

 

 弁護士法人大阪弁護士事務所は,西天満(大阪弁護士会向かい)と梅田の事務所で営業していましたが,平成27年5月18日より,梅田に事務所を統合することになりました。

 移転後の連絡先等
  住所:〒530-0013 大阪市北区茶屋町8番21号
                ジオグランデ梅田2705号
  電話番号:06-6136-6111
  FAX番号:06-6136-6112

 従前,梅田支部は,ジオグランデ梅田2506号でしたが,同じビルの27階2705号へ移転しました。受付は2705号になります。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。

横断歩道横断中に自動車と接触し,別表第1第2級1号の後遺障害(高次脳機能障害)を負った事例

依頼者

80代女性
 

委任の経緯

別事件を受任中の依頼者の母親が交通事故に遭ったと相談があり,受任
 

事故の概要

横断歩道横断中に自動車と接触し転倒(歩行者と自動車)

過失割合加害者:被害者=90:10(当初保険会社主張は85:15)

 

後遺障害診断書における傷病名

外傷性くも膜下出血,小脳挫傷・後遺症
 

後遺障害の等級認定

別表第1第2級1号
頭部外傷後の障害について別表第1第2級1号,右股関節の機能障害について12級7号

 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

手続き

後見開始審判申立て,自賠責へ被害者請求,示談交渉
 

取得金額

合計2927万6730円
自賠責保険:2427万6730円
任意保険:500万000円

 

コメント

事故直後に受任し,家庭裁判所へ後見開始審判申立て自賠責への被害者請求,任意保険会社との示談交渉を行いました。自賠責請求が最大の山でしたが,画像,意識障害の所見,神経系統に関する医学的所見,脳損傷又はせき髄損傷による障害の状態に関する意見書などの後遺障害診断書以外の書類を準備し,ご家族にも日常生活状況報告の作成に協力いただいたおかげで,別表第1第2級1号が認定されました。


頭部外傷後の高次脳機能障害は,他の後遺障害よりも自賠責請求の際に必要な資料が多くなります。成年後見人の選任についても検討する必要があります。なるべく早期に弁護士に相談することをお勧めします。
 

 責任能力のない未成年者が交通事故の加害者である場合,未成年者の両親に対して損害賠償請求を行うことが考えられます(子が事故を起こした場合の親の責任未成年者の自転車事故も参照)。

 民法は,714条で監督義務者の責任について規定しています。責任能力のない人の不法行為がなされたとき,無能力者が監督する義務を負っている監督義務者が損害賠償責任を負います。ただし,監督義務を怠らなかったことを立証できれば賠償責任を免れます。
 監督義務について,具体的状況下で結果発生を回避するために必要とされる監督行為をすべき義務にとどまらず,責任無能力者の生活全般についてその身上を監護し教育すべき包括的な義務と解されています。
 したがって,監督義務者が監督義務を尽くしたことを立証することが非常に困難と言われてきました。

 交通事故の事案ではありませんが,最高裁平成27年4月9日判決は,管理監督者の責任について以下のように判断しました。
 「責任能力のない未成年者の親権者は,その直接的な監視下にない子の行動について,人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があると解される」。「親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的にならざるを得ない」。「通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない」。

  交通事故が業務上災害や通勤災害の場合,被害者が労災保険から給付を受けていることがあります。加害者に対する損害賠償請求に当たって,労災保険の給付は損益相殺されることになります。
 損益相殺の順序として,元本から充当するのか,遅延損害金から充当するのかが最高裁の判断が分かれていたため,争いになっていました(従前の最高裁の判断は,労災給付と遅延損害金への充当労災給付と遅延損害金への充当②参照)。

 平成27年3月4日最高裁大法廷判決により,最高裁の判断が統一されました。以下が最高裁大法廷の判決の概要です。

 労災保険法に基づく保険給付は,制度の趣旨・目的に従い,特定の損害について必要額を填補するために支給される。遺族補償年金は,労働者の死亡による遺族の被扶養利益の喪失を填補することを目的とするものである。填補の対象となる損害は,被害者の死亡による逸失利益等の消極損害と同性質であり,かつ,相互補完性がある。
 損害の元本に対する遅延損害金は,債務者の履行遅滞を理由とする損害賠償債権であるから,遅延損害金を債務者に支払わせる目的は,遺族補償年金の目的とは明らかに異なり,遺族補償年金による填補の対象となる損害が,遅延損害金と同性質・相互補完性があるとはいえない。
 したがって,被害者が不法行為により死亡した場合,損害賠償請求権を取得した相続人が,遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,損害賠償額を算定するに当たり,遺族補償年金を逸失利益等の消極損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきである。
 遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情がない限り,填補の対象となる損害は不法行為の時に填補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当である。
  交通事故によって,胎児が死産してしまった場合,死亡とは扱っていません。裁判実務上は,胎児の死亡は,母親の傷害についての慰謝料を算定する際の斟酌事由として扱っています。
 
 交通事故による慰謝料の金額は,基準化されていますが,胎児が死産した場合の慰謝料額については,基準化されていません。
 出産予定日4日前の胎児の死亡について800万円の慰謝料(高松高裁平成4年9月17日判決),妊娠2か月で流産した事案で150万円の慰謝料(大阪地裁平成8年5月31日判決),妊娠18週の死産について慰謝料350万円(大阪地裁平成13年9月21日判決)など,慰謝料の金額は様々です。

 これらの裁判例は,いずれも母親の慰謝料についての判断ですが,胎児が死産した場合に胎児の父親に慰謝料請求権を認めるかどうかについては,裁判例は分かれています。
 慰謝料請求権を否定した大阪地裁平成8年5月31日判決は,胎児が死亡したことによる損害は,母親の慰謝料によって填補できるので,父親に固有の慰謝料を認める必要はないと判断しています。東京地裁昭和60年7月26日判決も,父親の慰謝料請求権を否定しています。
 慰謝料請求権を肯定した高松高裁昭和57年6月16日判決は,流産に伴う生理的病理的苦痛は父親と母親と異なるが,胎児を失ったこと自体の苦痛については,父親と母親を区別する理由がないと判断しています。
 東京地裁平成11年6月1日判決は,死亡した胎児が新生児と紙一重の状態にあり,失った両親とりわけ母親の悲しみ,落胆は相当なものというべきと述べ,父親にも慰謝料請求権を認めています。

自動車運転中に追突され,14級の後遺障害を負った40代男性の事例

依頼者

40代男性
 

委任の経緯

大阪弁護士事務所の出張相談に参加され,そのまま委任
 

事故の概要

自動車で運転中に加害車両が衝突(自動車と自動車)

過失割合加害者:被害者=100:0

 

後遺障害診断書における傷病名

頚椎捻挫,腰椎捻挫,腰椎椎間板症
 

後遺障害の等級認定

併合14級
頚部の後屈時疼痛の症状,腰痛・両大腿~足指のしびれ等の症状について,それぞれ14級認定

 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

手続き

自賠責へ被害者請求,示談交渉
 

取得金額

合計374万1370円
自賠責保険:75万0000円
任意保険:299万1370円

 

コメント

事故後3か月ほど経過してから受任し,自賠責への被害者請求,任意保険会社との示談交渉を行いました。任意保険会社との示談交渉では,休業損害の範囲が争点となりました。訴訟前の解決を前提に,慰謝料を上乗せるという形で,任意保険会社と示談が成立しました。


交通事故の被害に遭われた場合は,なるべく早期に弁護士に相談することをお勧めします。
 

 自賠責保険が準拠する労災保険は,非器質性精神障害の等級を9級,12級,14級の3段階に区分しています。

 通常の労務に服することはできるが,非器質性精神障害のため,就労可能な職種が相当な程度に制限されるものは,9級になります。
 労災では,①就労している人又は就労の意欲はあるが就労していない人と②就労意欲の低下又は欠落により就労していない人に分けて認定がされます。
 ①の場合は,判断項目(非器質性精神障害の能力に関する判断事項参照)の(2)~(8)のいずれか一つの能力が失われているもの又は判断項目の4つ以上にしばしば助言・援助が必要とされる障害を残しているものと説明されています。例として,非器質性精神障害のため,対人業務につけないことによる職種制限が認められる場合を挙げています。

 通常の労務に服することはできるが,非器質性精神障害のため,多少の障害を残すものは,12級になります。
 12級は,①の場合,判断項目の4つ以上について時に助言・援助が必要とされる障害を残しているものと説明されています。例としては,非器質性精神障害のため,職種制限は認められないが,就労に当たりかなりの配慮が必要である場合を挙げています。

 通常の労務に服することはできるが,非器質性精神障害のため,軽微な障害を残すものは,14級になります。
 判断項目の1つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残しているものと説明されています。例としては,非器質性精神障害のため,職種制限は認められないが,就労に当たり多少の配慮が必要である場合を挙げています。 交通事故や労災の後遺障害で問題となるのは,高次脳機能障害やPTSD,CRPSなどの目に見えにくい後遺障害です。これらの障害は他覚的所見が乏しく自覚症状が主体であるため,評価が困難です。

 CRPSは,複合性局所疼痛症候群と呼ばれているものです。労災・自賠責保険とも真正面からCRPSを後遺障害としては採用していません。
 RSDと呼ばれるものについては,労災では,「神経系統の機能又は精神の障害」中の「その他の特徴的障害」の「疼痛等感覚障害」の中の「特殊な性状の疼痛」として評価されます。
 
 RSDはカウザルギーと同位概念として位置づけられています。カウザルギーは末梢神経の不完全によって生じる灼熱痛,血管運動性症状,発汗異常,軟部組織の栄養状態の異常,ズディック萎縮と呼ばれる骨の変化などを伴う強度な疼痛とされています。RSDは主要な末梢神経の損傷がなくても微細な末梢神経の損傷が生じて,外傷部位にカウザルギーと同様の疼痛が起こるものとされています。この定義で明らかなように,労災・自賠責では,RSDは器質的損傷であると位置づけています。

 カウザルギーの障害等級は,以下の3つの等級になります。
 ①7級の3
 軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるもの
 ②9級の7の2
 通常の労務に服することはできるが,疼痛により時には労働に従事することができなくなるため,就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
 ③12級の12
 通常の労務に服することはできるが,時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの

 RSDもカウザルギーと同様の基準で7級・9級・12級の障害等級に該当します。ただし,①関節拘縮,②骨の萎縮,③皮膚の変化という慢性期の主要な3つのすべての症状が健側と比較して明らかに認められることが前提になります。 事業所得者の逸失利益の算定に当たって,基礎収入は,事業所得者の労務等の個人的寄与によって生み出された収益部分のみということになります。寄与率の判断要素として,裁判例は以下のような事情を考慮しています。

 ①交通事故前後の収支状況・営業状況
 たとえば,事故後に事業所得者が就労できず,事故後の収益が事故前よりも大幅に減少したり,赤字になった場合などは,事故前の事業所得者の労務等による個人的寄与が大きかったという一事情になります。
 事業所得者が休業したことによる減収分がそのまま事業所得者の寄与分と認定するのは困難です。なぜなら,家族・従業員の労務が事故前よりも加重されたり,代替労働者を雇用するなど,事業所得者の労力不足を補うための経営内容の変更がなされることが多いからです。

 ②業種形態
 事業所得者個人の特殊な技能,能力,知識,経験や個人的に培ってきた人脈等が事業経営に重要と見られる業種・形態であれば,事業所得者の寄与率は高いということになります。

 ③事業所得者の職務内容・稼働状況
 事故前の職務内容・稼働状況は,事業全体に占める事業所得者の個人的寄与の程度を判断する上で,特に重要な判断要素であると考えられています。
 事業全体の職務内容のうち,事業所得者が担当する職務が大部分を占める場合や担当する職務が事業において重要なものである場合,寄与率は高いと言えます。

 ④家族の関与の程度・給与額
 事業が零細で,家内工業的な営業形態であることが多く,家族の関与の程度は事業所得者の寄与率の判断に際して重要な判断要素となります。
 家族の労務の寄与分の認定に当たっては,専従者の給与額は参考にならず,事業全体の職務の中で家族の担当する職務内容・程度等を個別具体的に考慮し認定することになります。

 ⑤従業員の関与・給与額
 事業所得者が従業員を雇用し,従業員の給与以上の収益を上げている場合は,従業員の給与を上回る収益は事業所得者の手腕によると考えられます。つまり,事業所得者の個人的寄与分と評価されます。

 ⑥代替労働の雇用
 事業所得者が就労できず,代替労働者を雇用した場合,代替労働者の賃金相当額が事業所得者の個人的寄与分を金銭評価しする一つの事情と考えられます。 交通事故の逸失利益,たとえば,休業損害は,基礎収入×休業期間×休業割合によって算出します。給与所得者の場合,基礎収入に関して争いになることはあまりありませんが,事業所得者の場合は,基礎収入の範囲が争いになることが多々あります。
 
 事業所得者の場合,家族等が労務を提供し事業を補助したり,従業員を雇用している場合には,営業収益の中に,個人事業主の労務等の個人的寄与によって得た収益だけでなく,家族や従業員の労務によって生じた収益が含まれます。また,土地・建物などの設備を利用することで生じた不動産賃料,利子,老舗,特許等に基づく収益が含まれることもあります。
 
 最高裁昭和43年8月2日判決は,個人事業主の死亡逸失利益の算定に関して,いわゆる労務価値説に立つことを明らかにしました。労務価値説とは,事業所得者の労務等の個人的寄与のみによって得られるものではないが,事業所得者が死傷した場合の逸失利益は,営業収益に占める事業所得者の労務等の個人的寄与によって生み出された収益部分のみを基礎として算定すべきとの考え方です。

 したがって,個人事業主の営業収益から,物的設備を利用することによって生み出された不動産の賃料や利子等を除外し,さらに,家族・従業員の労務によって生み出された収益部分を除外した個人事業主の労務等の個人的寄与によって生み出された収益部分を営業利益に占める個人事業主の労務等の個人的寄与の割合(寄与率)をもって算出し,当該収益部分が逸失利益の算定基礎ということになります。 
等級 後遺障害 補足的な考え方
別表第1・1級1号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し常に介護が必要 身体機能は残存しているが高度の認知症があるために,生活維持に必要な身の回りの動作に全面的介護を要するもの
別表第1・2級1号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,随時介護を要するもの 著しい判断力の低下・情動の不安定等があり,一人では外出できず,日常生活範囲は自宅内に限定。身体動作的には排泄・食事等の活動はできても,生命維持に必要な身辺動作に,家族からの声掛け・看視を欠かすことができないもの
別表第2・3級3号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの 自宅周辺を一人で外出できる等,日常生活範囲は自宅に限定されない。声掛け・介助なしに日常動作を行える。しかし,記憶力・注意力・新しいことを学習する能力・障害の自己認識・円滑な対人関係維持能力等に著しい障害があり,一般就労がまったくできないか,困難なもの
別表第2・5級2号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 単純繰り返し作業等に限定すれば,一般就労が可能。ただし,新しい作業を学習できなかったり,環境が変わると作業を継続できなくなる等の問題がある。一般人に比べ作業能力が著しく制限されており,就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができない。
別表第2・7級4号 神経系統の機能または精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することはできないもの 一般就労を維持できるが,作業手順が悪い,約束を忘れる,ミスが多いこと等から一般人と同等の作業を行うことができないもの
別表第2・9級10号 神経系統の機能または精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一般就労を維持できるが,問題解決能力等に障害が残り,作業効率や作業持続力等に問題があるもの

 自賠責保険において,高次脳機能障害の後遺障害の認定は,上記の「補足的な考え方」をイメージして行われています。 過失相殺の規定を類推適用する素因減額の主張は,加害者側の抗弁と位置づけられています。交通事故ではなく,労災民訴の事案ですが,最高裁平成20年3月27日判決は,以下のように判示しています。

 加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患が共に原因となって損害が発生した場合,その疾患の態様・程度等に照らして,加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは,裁判所は,損害額を定めるに当たり,過失相殺の規定を類推適用し,被害者の疾患を斟酌することができる。
 過失相殺については,賠償義務者からの過失相殺の主張がなくても,裁判所は訴訟にあらわれた資料に基づき被害者に過失相殺の主張がなくても,裁判所は訴訟にあらわれた資料に基づき被害者に過失があると認めるときは,損害額の額を定めるに当たって,職権で斟酌することができる。過失相殺の規定を類推適用する素因減額についても別異に解する理由はない。

 最高裁は,加害者側から素因減額の主張がなくても,裁判所が職権で斟酌することができると考えています。つまり,素因減額の主張について主張・立証責任の問題は生じないということになります。
 過失相殺に関しては,被害者の過失を基礎づける事実については加害者に立証責任があると解されています。過失相殺とパラレルに考えると,被害者の素因を基礎づける事実については加害者に立証責任があると考えられます。 被害者が有している素質が損害の発生又は拡大の原因となっている場合は,損害賠償請求額の算定に当たり,被害者の素因を斟酌されることがあります(素因減額)。
 身体的要因による素因減額について,被害者の身体的特徴が平均的な体格や体質と異なっていても,それが疾患に当てはまらあない場合は特段の事情がない限り,素因減額することはできないと解されています。

 素因減額に際し,身体的変性が疾患なのか,身体的特徴なのかが問題となります。特に加齢的変性の場合に問題になります。判例のいう「平均的な体格ないし通常の体質」は年齢に応じるものと考えられています。
 したがって,年相応の老化現象による身体的変性は,医学的には疾患に該当しても身体的特徴にとどまり,それを超える身体的変化が疾患として評価されることになります。素因減額に際して,斟酌する疾患は,医学上の疾患とは異なるということになります。

 身体的特徴と疾患の区別は,①当該病的状態が平均値からどの程度離れているか?,②当該病的状態の除去のために医学的にはどの程度の処置を要するか?,③当該病的状態のため,交通事故前どの程度の健康状態であったか?を総合考慮すべきと指摘されています。

 交通事故(人身事故)の損害のうち,精神的苦痛に対する慰謝料は,裁判基準による金額が公表されています。入通院慰謝料は,入通院期間に応じて算出されます。後遺障害に対する慰謝料は後遺障害の等級に応じて算出されます。

 慰謝料は,精神的苦痛に対する損害を金銭評価してものですが,補完的機能や調整的機能があると言われています。交通事故の損害賠償額は,積極損害(治療関係費等),消極損害(逸失利益),精神的損害(慰謝料)のそれぞれの費目ごとに損害額を積上げて算出します。慰謝料には,個別損害積上げの総額を調整する機能があると言われています。
 たとえば,休業損害や後遺障害による逸失利益の算定に関し,証拠が不十分で算定できない場合,事故態様が悪質な場合などに慰謝料が増額されることがあります。また,外貌醜状のような労働能力に影響がないと考えられる後遺障害の場合,後遺障害に対する慰謝料で考慮する裁判例もあります。自賠責保険の等級認定表に該当しない後遺症が残存した場合に障害の内容・程度に応じて慰謝料が認められることもあります。

 ただし,日本の不法行為制度は,あくまでも損害の公平な分担を目的としています。加害行為に対する非難や加害者の処罰を目的としていません。そのため,制裁的慰謝料やアメリカの懲罰的賠償は認められません(最高裁平成9年7月11日判決)。

 交通事故の解決方法として,紛争処理センターの和解あっせん・審査手続きがあります。紛争処理センターは,公益財団法人交通事故紛争処理センターのことで,略して紛センと呼ばれることがあります。

 紛争処理センターでは,自動車事故の被害者と加害者が契約する保険会社(共済組合の一部を含む)との示談をめぐる紛争の解決のために,被害者と保険会社との間に立ち,法律相談・和解あっせん・審査手続きを行っています。弁護士が相談担当弁護士として委嘱されて,法律相談・和解あっせんを担当しています。

 和解あっせん手続きでは,担当弁護士が,被害者と保険会社の双方の主張,証拠を踏まえて,争点・賠償額等のあっせん案をまとめ,当事者双方に提示します。
 当事者双方があっせん案に同意すれば,和解成立となります。人身事故の場合は,通常3回から5回の期日で和解が成立していると言われています。

 和解あっせんが不調に終わった場合,当事者双方は審査の申立てをすることができます。審査に移行すると,3人の審査委員から構成される審査会において,裁定が下されます。
 被害者は,この裁定に拘束されませんが,保険会社は,被害者が裁定に同意した場合には,裁定を尊重しなければならず,裁定の内容で和解が成立することになります。

 なお,争点が複雑であったり,証拠調べの必要があるような場合,保険会社から訴訟移行の申し出がなされることがあります。 自動車保険には,保険料を節減するために,補法範囲を制限する特約があります。保険による保護を受ける範囲を運転者の家族に限定する特約が運転者家族限定特約と呼ばれる特約です。

 運転者家族限定特約の被保険者に,通常は,保険契約者又はその配偶者の同居の親族等が家族に含まれます。その範囲について争いになることがあります。東京高裁平成18年9月13日判決は,以下のように判断しています。
 運転者家族限定特約は,記名被保険者と身分上・生活上の関係から被保険自動車を使用することが通常予想される一定範囲の者に被保険者の地位を限定したものである。この特約のいう同居とは,同一家屋に居住し起居を共にしているという通常の理解による。この意味での同居の親族に該当すれば,記名被保険者が世帯主であることや,同居親族と同一生計を営んでいる必要ない。また,扶養関係がある必要もない。
 同居者といえるかどうかは,記名被保険者とその親族の生活の実態に即して判断すべきである。保険契約時に申告した住所での同居に限定されない。
 以上を前提に,記名被保険者である息子が父親の居住する家に住民登録をしていても,息子が経済的に独立して,通勤の便宜のためにアパートを借りて週の大半を過ごしているような場合は,父親は同居の親族とはいえないと判断しています。
 自賠責保険の等級認定に対して,自賠責保険会社へ異議申立てをすることができます(後遺障害に対する異議申立て)。この異議申立ては,同じ認定者である損保料率機構に対して再審査を求めるものです。認定者が同じであるため,異議申立てによって再審査するとしても公平性を欠くのではないかと指摘があります。
 そこで,第三者機関である一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構に審査を求めることができます。

 自賠責保険の等級認定に対する不服申立てとしては,自賠責保険・共済紛争処理機構に対する紛争処理(調停)の申立てをすることができます。紛争処理の申立て自体に費用はかかりません。自賠責保険会社に対する異議申立てと同様,被害者に対する不利益変更はありません。

 紛争処理は調停と呼ばれていますが,民事調停や家事調停と異なり,書面審査のみで行われ,出頭する必要はありません。紛争処理の申立ては1回のみで,調停結果に対して不服があっても再度,紛争処理の申立てをすることはできません。紛争処理の申立て後も自賠責保険会社に対する異議申立てはできるようですが,自賠責保険・共済紛争処理機構と異なる判断がなされることはないと考えられます。ちなみに,紛争処理(調停)による変更率は,現在は11%ほどです。 交通事故で傷害を負い,治療の甲斐なく,何らかの後遺障害が残った場合,まずは,被害者請求・事前認定を問わず,自賠責保険の後遺障害の等級認定により,後遺障害の有無や等級が認定されます。
 
 この自賠責保険の等級認定に対して不服がある場合は,まずは,自賠責保険会社に対して異議申立てを行うのが一般的です。形式上は,自賠責保険会社に対しての申立てですが,実際に認定をしているのは,損保料率算出機構のため,実質上は損保料率算出機構に対する申立てということになります。

 自賠責保険会社に対する異議申立てに制限はなく,制度上は何度でも申立てすることができます。被害者に対する不利益変更がないため,すでに認定されている等級を下回るということはありません。
 後遺障害の等級認定の初回は,損保料率算出機構の調査事務所で行われることが通常です。異議申立てを行うと,地区本部や自賠責保険審査会等の損保料率機構の上位組織で認定が行われることになります。
 画像に関しては,調査事務所の認定では,大量に見ているため,精査されていないことがあり,異議申立てによって専門医により画像の精査がなされ等級認定が覆ることもあるようですが,一般的には等級認定が覆るケースはあまり多くありません。 交通事故によって,関節に傷害を負うことがあります。関節の外傷は①骨折,②脱臼,③軟骨損傷,④靭帯損傷の4つがあります。
 
 ①骨折は,関節内の骨折のことです。傷病名としては,「関節内骨折」と診断されますが,軟骨の損傷や靭帯の損傷を合併していることがあります。
 骨折の治療原則は,解剖学的修復,ずれた骨を正しく戻すということになります。その後は,できるだけ強固に固定して,早期に動かしていくことになります。

 ②脱臼は,関節の適合性,関節面が完全に外れてしまう状態です。脱臼する際に靭帯や軟骨が傷んでいるケースが多いです。つまり,脱臼と診断されていても靭帯損傷や軟骨損傷が隠れていることがあります。
 脱臼の治療原則も早期に元に戻すことが必要になります。

 ③軟骨損傷は,4つに分類されます。最も多いのは,関節の表面が傷んでいるケースです。骨ごと傷むケースや骨と軟骨の接合部で傷むこともあります。また,半月板のような特殊な軟骨組織が傷むこともあります。
 軟骨損傷の治療は,保存療法と手術療法があります。軟骨損傷は難治性で現在の医療では軟骨を元に戻すことはできないと言われています。

 ④靭帯損傷は,関節が本来動かない方向に力が加わった場合に制御している靭帯に傷が入ります。靭帯損傷は三段階に分かれます。Ⅰ度は微小断裂,Ⅱ度は部分断裂,Ⅲ度は完全断裂になります。
 靭帯損傷の治療は,関節外靭帯は固定し,関節内靭帯は手術をすることになります。関節外靭帯とは,関節包の外側の靭帯のことです。血流のいい空間にあるため,保存・固定することで治りやすいと言われています。関節の中の靭帯は血流が乏しいため保存・固定で治ることはなく,手術が必要となります。 自賠責保険には,被害者に対する当座の費用として一定額を支払う仮渡金という制度があります。たとえば,交通事故で負傷した被害者が治療費を支払わなければならないが,加害者が責任を否定している場合,被害者は自賠責保険会社に仮渡金の請求をすることができます。

 被害者は,自賠責保険に対して直接請求権を有します。仮渡金の支払いは,直接請求と異なり,自動車事故によって負傷又は死亡したという事実のみに基づき,厳格な損害立証を求めずに,直接請求に比べて簡易な手続きで一定額を支払う手続きです。

 仮渡金の金額は,たとえば,死亡事故の場合で290万円,脊柱骨折で脊髄を損傷した場合で40万円,内臓破裂の場合で20万円,11日以上の治療を要する傷害の場合,5万円などと決められています。

 仮渡金も損害賠償の先払いということになります。最終的に被害者の損害賠償額から控除されます。損害賠償額が確定した時点で仮渡金が損害賠償額を超えた場合は,被害者は返還する必要があります。
 仮渡金の支払時には,加害車両の保有者の運行供用者責任の発生自体は要件にはなっていません。支払後に,運行供用者責任を負わないと確定した場合は,被害者は受領した仮渡金全額を返還する必要があります。 交通事故の加害車両が無保険車である場合があります。交通事故で後遺障害が残るような事故の場合,損害賠償額が高額になり,自動車保険に加入していない加害者に支払能力がないことが多く,支払が受けられないことも考えられます。

 無保険車による事故の場合,被害者が無保険車傷害保険や人身傷害保険に加入してれば,これらの保険を利用することで,症状固定までの治療費の支払いや一定額の保険金の支払いを受けることができます(無保険車傷害保険と人身傷害保険)。
 また,交通事故が労災(通勤災害も含む)の場合は,労災保険から給付を受けることも有用です。

 加害者の親族が自動車を保有していて,他車運転危険補償特約を付保している場合は,親族の自動車保険の支払対象となることもあります。
 他車運転危険補償特約は,たとえば,被保険者等が借りた自動車を運転中に起こした対人・対物事故により法律上の損害賠償責任を負う場合に借りた自動車の保険に優先して保険金が支払われる特約です。
 対象となるのは,記名被保険者,記名被保険者の配偶者,記名被保険者・配偶者の同居の親族,記名被保険者・配偶者の別居の未婚の子です。
 上記の者が,記名被保険者,記名被保険者の配偶者,記名被保険者・配偶者の同居の親族が所有する自動車以外の自動車(自家用8車種)を運転し,事故を起こし賠償責任を負う場合に適用されます。
 
 加害車両が無保険車の場合,運転者の親族の保険が使えることがありますので,被害者自身の保険も含めて,保険関係を調査することが重要です。

 
 
  交通事故の損害費目のうち,治療費及び入院費は,必要かつ相当な実費が損害として認められます(治療関係費について)。交通事故後に海外で治療を受けた治療費が損害として認められるかが争われた裁判例として東京地裁平成15年5月8日判決があります。

 上記の東京地裁の裁判例は,交通事故後,日本で治療を受けていたが症状が改善しないため,アメリカで治療を受けた事案です。裁判所は,日本で治療を継続した場合の結果について検討した上で,わざわざアメリカで治療を受ける必要性があったと認定することは困難であると認定しました。また,アメリカでの治療費は内容・期間を前提に日本での治療費と比べて相当高額であるとも認定しています。その一方で,アメリカでの治療は治療効果があったとも認定しています。
 そして,裁判所は,アメリカでの治療費のうち約半分を損害として認めました。なお,アメリカへの渡航費用は損害としては否定されています。

 海外での治療は,治療の必要性,金額の相当性が厳格に判断されることになります。さらに,海外渡航費が損害として認められるには,日本では行えない治療で,他に代替する治療法がなく,かつ症状の改善・効果が認められる高度の必要性が要求されると指摘されています。 交通事故の損害賠償請求で問題となることは,ほとんどありませんが,不法行為に基づく損害賠償請求権には,消滅時効の他に除斥期間というものがあります。

 不法行為に基づく損害賠償請求権は,「損害及び加害者を知った時」から3年で消滅時効にかかります。民法724条後段は,「不法行為の時から20年を経過したとき」は権利を行使することができないと規定しています。この20年の期間は消滅時効ではなく,除斥期間を定めたものと解されています(最高裁平成元年12月21日判決)。
 除斥期間は消滅時効と異なり,当事者が援用する必要はなく,中断・停止が認められず,除斥期間の主張が権利濫用・信義則となることはないと解されています。
 
 除斥期間の起算点は不法行為時です。加害行為時に損害が発生する場合は,加害行為時が起算点になることに異論はありません。不法行為によって発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当期間が経過後に損害が発生する場合は,起算点は損害の全部又は一部が発生した時と解されています(最高裁平成16年4月27日)。
 交通事故の損害賠償請求に関しては,後遺障害事案でも不法行為時,すなわち,交通事故発生日が起算点となると解されています。 保険法の施行により,自賠責保険に対する被害者の直接請求権は,3年で消滅時効にかかります(自賠法3条)。消滅時効の起算点は,請求区分ごとに異なります。傷害部分は事故発生日の翌日,後遺障害部分は症状固定日の翌日が消滅時効の起算点になります。複数の後遺障害があり,症状固定日が異なる場合は,直近の症状固定日が消滅時効の起算点となると解されています。

 任意保険会社が一括払手続きを行っていて,任意保険会社と示談交渉中の場合は,自賠責保険に対する被害者の直接請求権の消滅時効は進行しないと解されています。
 示談交渉によって,被害者が損害賠償請求権と継続的に行使していると評価されることが根拠と説明されています。一括払手続が中断すると,消滅時効は進行することになります。

 後遺障害の等級認定に対しての異議申立ては,新たな直接請求権の行使として扱われます。等級が認定されれば自賠責保険から損害賠償額が支払われた日の翌日から,非該当の場合,支払不能通知が到達した日の翌日から3年で消滅時効にかかります。

 実務上は,自賠責保険会社に,時効中断申請書を提出し,承認書を返送してもらうことで,消滅時効は中断し,承認日から3年で消滅時効にかかります。

 自賠法3条に基づく保有者に対する損害賠償請求権が消滅すれば,自賠責保険に対する被害者の直接請求権も消滅すると解されています。 交通事故の物損(車両損害)に関して,アジャスターが損害の評価をすることがあります。アジャスターは,一般社団法人日本損害保険協会に登録し,保険事故の損害調査を行う者とされています。

 アジャスターには,①特殊車アジャスターと②技術アジャスターの2種類があります。①は,建設機械等の特殊な用途に用いる自動車について,技術アジャスターと同様の業務を行います。
 ②は,一般的な保険事故に関して損害車両の損害額,事故の原因・損傷部位,事故との技術的因果関係の調査確認等の業務を行います。損害額のみではなく,事故との原因や損傷部位と事故との技術的因果関係についても調査をすることになります。
 アジャスターは,資格(国家資格ではない)が必要で,1級・2級・3級・初級の4ランクがあります。1級のアジャスターはいないと言われています。
 アジャスターは,保険会社からの依頼で,損害に関する調査を行います。保険会社以外の個人が,アジャスターに調査を依頼することはできません。

 裁判例では,アジャスターの査定は,裁判所の認定を補足する意味での一つの判断として用いられることが多いようですが,アジャスターの査定を採用しない裁判例も存在します。
  交通事故の被害者が,事故によりPTSD(心的外傷後ストレス障害)にり患したかどうかが争われる事案が増えてきていると言われています。

 従前,自賠責保険では,脳の器質的損傷を伴わず,被害者に精神症状が生じた場合は,外傷性神経症として後遺障害の等級として14級が認定されることはあっても,14級を超える等級が認定されることはありませんでした。
 しかし,平成15年に労災の認定基準が変更され,9級,12級,14級で評価されることになりました。労災の認定基準に準拠する自賠責保険でも14級を超える等級が認定される余地が出てきたといえます。

 労災基準では,次の(1)の精神症状のうち1つ以上の精神障害を残し,かつ,(2)の能力に関する判断項目のうち1つ以上の能力について障害が認められることが必要とされています。

 (1)精神症状
 ①抑うつ状態
 ②不安の状態
 ③意欲低下の状態
 ④慢性化した幻覚・妄想性の状態
 ⑤衝動性の障害,不定愁訴等のその他の障害

 (2)能力に関する判断時効
 ①身辺日常生活
 ②仕事・生活に積極性・関心を持つ
 ③通勤・勤務時間の遵守
 ④普通に作業を持続すること
 ⑤他人との意思伝達
 ⑥対人関係・協調性
 ⑦身辺の安全保持,危機の回避
 ⑧困難,失敗への対応

  交通事故で件数の多いむちうち損傷ですが,症状固定時に症状が残存している場合,後遺障害の等級は,①非該当,②14級,③12級のいずれかになります(むちうち(鞭打ち)について)。

 12級と14級は,他覚所見が認められるか否かによって区別されます。他覚所見としては,画像所見と神経学的所見が必要です。
 主治医からは,MRI画像上,神経が圧迫している等言われることがありますが,交通事故によるものではなく,加齢性・経年性の変性と判断されるケースが非常に多いです。また,神経学的所見で異常が認められても整合性がない場合は,12級とは判断されません。

 以下のようなケースは,非該当になると言われています。
 ①事故態様が軽微な場合
   軽微な事故の場合,むちうち損傷にはならないと判断されます。
 ②治療経過が通常と異なる場合
   治療経過が通常と異なるケースとしては,初診日が遅い,治療の中断がある,治療中に症状が悪化する,治療中に新たな症状が 現れるといったことが挙げられます。
 ③症状が軽微な場合
   労災の基準では,受傷部位にほとんど常時疼痛を残すものが14級とされています。自覚症状が,運動時痛(動かすと痛い)や天気 が悪いと痛い,気温が低いと痛いという場合は,後遺障害とは認められません。

  損保料率算出機構が公表しているデータによると,交通事故(自動車事故)による受傷部位の割合は約30%で頚部が一番多いことがわかります。追突事故による頚椎捻挫,頚部挫傷,外傷性頚部症候群等の診断名のつくむちうち損傷が頻度としては,一番多いといえるかと思います。

 むちうち損傷は,首の長い女性の方が男性よりも症状が出やすいと言われています。また,神経質で几帳面な人は,何となく首が痛い等,治療が長引くことがあり,難治性の傾向があると言われています。

 むちうち損傷の治療は,受傷直後・急性期,亜急性期,慢性期に分けられます。
 受傷直後・急性期(1か月以内)は,局所の安静固定と対処療法が行われます。薬物療法としては,消炎鎮痛剤が処方されることが多いと思われます。近年,頚椎装具は基本的に不要とされ,頚部痛が強い場合に2週間程度の短期間に限って処方されると言われています。急性期は,できるだけ安静を保つことが必要と言われています。
 亜急性期(1か月~3か月)は,牽引と温熱療法といった理学療法が中心になります。薬物療法としては,消炎鎮痛剤,精神神経用剤,筋弛緩剤などが処方されることがあります。症状の改善がみられない場合は,神経ブロック・圧痛点の局所麻酔が行われることもあります。
 慢性期(3か月以上)は,リハビリの期間になります。症状が残存している場合,亜急性期の治療と合わせて,全身の調整運動や心理的調整を加えた治療が行われるようです。

 

  交通事故の損害賠償額の算定に際し,被害者に過失があれば,過失相殺がなされます。過失相殺については,被害者と身分上,生活上の一体関係がある者の過失を被害者側の過失として斟酌します。

 夫が運転する自動車の助手席に妻が同乗し,第三者が運転する自動車と衝突し(第三者と夫の過失が競合),妻が受傷し,当該第三者に損害賠償請求を行った最高裁昭和51年3月25日判決があります。
 最高裁は,夫婦の婚姻関係がすでに破たんしているなどの特段の事情がない限り,夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができると判断しています。

 最高裁の事案は,被害者自身は事故発生に寄与しているわけではなく,第三者と夫の共同不法行為を理由に,本来は,全損害の賠償が認められると考えられます。
 加害者は,被害者に全損害を賠償した後,共同不法行為者である夫に過失割合に応じて求償することになります。最高裁は,この求償関係も含めて紛争を一回で解決できる合理性があるとして,夫の過失を被害者側の過失として斟酌していると考えられています。

 東京地裁平成18年3月29日判決は,交通事故当時は結婚していたが,事故後に離婚した場合に,求償関係を含め紛争を一回で処理することができる場合に当たらないとして,配偶者の過失を被害者側の過失として斟酌しないと判断しています。 関節の機能障害の後遺障害の認定に当たっては,関節の主要運動の可動域が評価の対象となります(関節機能障害の評価)。
 そして,上肢及び下肢の3大関節は,主要運動の可動域が2分の1以下に制限されると著しい機能障害に,4分の3以下に制限されると機能障害と評価されます。
 主要運動の可動域が,2分の1又は4分の3をわずかに上回る場合に,当該関節の参考運動が2分の1以下又は4分の3以下に制限されると,関節の著しい機能障害又は機能障害と評価されます。

 せき柱に関しては,頚椎又は胸腰椎の主要運動の可動域制限が参考可動域角度の2分の1をわずかに上回る場合に,参考運動が2分の1以下に制限されていれば,頚椎又は胸腰椎の運動障害として評価されます。

 わずかに上回る場合とは,原則として5度とされています。ただし,以下の主要運動について,せき柱の運動障害又は関節の著しい機能障害かどうかを判断する場合には10度とされています。
 ①せき柱(頚部)の屈曲・伸展,回旋
 ②肩関節の屈曲・伸展
 ③手関節の屈曲・伸展
 ④股関節の屈曲・伸展

 なお,参考運動を評価の対象とする場合には,参考運動が複数ある関節については,1つの参考運動の可動域角度が2分の1以下又は4分の3以下に制限されていれば足りるとされています。 交通事故の中には,駐停車車両が事故の客体となって生じることがあります。自賠法3条の運行供用者責任が認められるには,「自動車を運行の用に供する」ことが必要です。駐停車車両の事故については,「運行」に該当するかどうか,すなわち運行起因性が問題となります。

 走行との時間的・場所的関連,駐車目的等から当該駐停車が前後の走行行為と一体といえるかどうかによって,「運行」に該当するかどうかを判断するという見解が,近時,有力となっています。

 駐停車車両による事故は,①駐停車車両への追突事故,②駐停車車両を避けようとして生じた事故,③駐停車車両が障害となって見通しが悪くなったことによって生じた事故,④他の車両等との事故の被害車両が駐停車車両に衝突する事故等の態様が考えられます。

 ①に関しては,事案のほとんどで運行起因性が認められると考えられます。①以外の事故態様については,運行起因性が認められるかが問題となります。
 駐停車禁止場所ではない場所に駐停車中の場合には,責任の成否が否定されることがあります。また,駐停車車両による事故に関して駐停車車両に運行起因性が認められる場合でも,被害車両に過失が認められることが多く,被害車両に過失が認められる場合は過失相殺の対象になります。 交通事故(人損)では,通常,加害者側の自賠責保険と任意保険から支払いがなされます。しかし,被害者の過失が大きい場合や加害者が無保険の場合等は,被害者側が加入している人身傷害保険から支払いを受けることがあります。

 被害者が加入する自動車保険に,人身傷害保険金の支払請求した場合,人身傷害保険の保険会社は,保険金の支払後に,自賠責保険から回収(代位請求)することが予定されています。そのため,人身傷害保険の保険会社は,損保料率算出機構に対して,後遺障害等級の認定を依頼しています。この手続きを人傷一括の事前認定と呼ぶことがあります。

 人身傷害保険は,保険契約に基づいて保険金を支払いますが,後遺障害の等級認定は,自賠責保険と同じ認定基準で行われます。また,人身傷害保険の後遺障害等級認定に対しても異議申立てをすることができます。ただし,自賠責保険の支払いではないため,自賠責保険・共済紛争処理機構の紛争処理の対象にはなりません。
 自賠責保険・共済紛争処理機構の紛争処理手続きを利用するには,被害者が,まず,自賠責保険に対して被害者請求(直接請求)を行ったうえで,自賠責保険の後遺障害等級認定に対して,自賠責保険・共済紛争処理機構に対して紛争処理の申立てを行うことになります。 未成年の子が自動車を運転し,交通事故を起こした場合,親は自賠法3条の運行供用者責任を負うことがあります(子が事故を起こした場合の親の責任)。監督者である親が,運行供用者責任を負う場合には,民法上の損害賠償責任を問題にする必要はありません。

 しかし,物損の場合や自転車による交通事故の場合は,自賠法3条の運行供用者責任を負う余地はありません。特に自転車事故の場合,保険に加入していることが少なく(自転車事故と被害者の保険自転車事故とTSマーク),被害者としては,資力があるであろう監督者である親に対して,民法上の賠償請求を行う必要性に迫られることになります。
 
 民法714条の監督者責任ではなく,一般の不法行為の規定である民法709条に基づき監督者に損害賠償請求を行う場合,一般的な監督義務ではなく,未成年者の具体的な加害行為に対する予見可能性と相当な監督をすることで,当該加害行為を防止できたにもかかわらず,相当な監督義務を怠ったり,経験則上,監督義務者が相当な監督を行っていれば,当該加害行為が発生しなかったであろうことを主張立証する必要があります。

 交通事故の加害行為は,事故直前の前方不注意や速度超過などの単純な過失によることがほとんどです。そうすると,監督者である親が,交通事故による加害行為を防止することのできる可能性は低いと言わざるをえません。監督者である親が民法上の賠償責任を負うのは,同居している未成年の子が無免許運転や飲酒運転を繰返していることを黙認していたような場合か,事故を繰返していたにもかかわらず,何ら注意をしなかったような場合に限られるのではないかと考えられています。 交通事故の損害賠償額の算定に際しては,被害者に過失がある場合,過失相殺として損害賠償金から一定割合が控除されます。被害者の過失には,被害者側の過失も含みます(被害者側の過失参照)。

 被害者である被用者(従業員)の過失により,損害が発生又は拡大した場合,過失相殺が認められるというのが,判例の立場だと考えられています。
 使用者は,被用者(従業員)が第三者に対して加えた損害について損害賠償責任を負います(民法715条)。このこととパラレルで,使用者が損害賠償を請求する場合も被用者の過失を斟酌することができるというのが根拠です。被害者側の過失を認める根拠が身分上生活上一体をなすとみられる関係にあるのと異なります。

 被用者の過失が問題となったわけではありませんが,最高裁昭和56年2月17日判決を紹介します。この判決は,被害者が,同じ職場の同僚の運転する自動車の助手席に乗車中に,第三者の運転する自動車と衝突したというという事案です。被害者の損害賠償額の算定に際し,同僚の過失を斟酌することができるかが,争点になりました。
 最高裁は,被害者と同僚は,特段の事情がない限り,身分上,生活関係上一体をなす関係にあるとは認められないので同じ職場の同僚であるというだけで,過失相殺することはできないと判断しています。 自賠法16条は,被害者の自賠責保険会社に対する直接請求権を規定しています。任意保険における被害者の直接請求権と異なり,自賠法によって特別に付与された法定の請求権ということになります。

 直接請求権は,車両の保有者に運行供用者責任が生じていなければ行使することはできません。自賠責保険会社は,直接請求権を受け付け,支払に関する調査の結果,保有者が運行供用者責任を負わないと判断した場合は,自賠責保険から支払いを受けることはできません。

 被害者に自賠責保険から支払われた損害賠償額は,加害者側が負担する損害賠償金の一部です。加害者側が被害者に損害賠償金を支払い,自賠責保険会社がその金額を保険金として支払った場合,直接請求権は,その限度で消滅します。
 被害者の直接請求権が先行した場合には,加害者側が損害賠償金を支払っているか不明なため,自賠責保険会社は,被害者に支払いをする前に自賠責保険の被保険者に意見を求めるとともに,損害賠償金を支払っているかどうかを確認しています。また,自賠責保険会社が被害者に支払いをした場合は,被保険者にその旨を通知しています。

 加害者側が被害者に損害賠償金の一部を支払い自賠責保険の請求をした際に,被害者の直接請求権と競合した場合は,加害者の保険金請求権が優先され,残りの範囲で被害者の直接請求権に応じることになっています。 交通事故で脳を損傷し,高次脳機能障害が残存することがあります。自賠責保険において,以下の各所見を総合的に検討し,脳外傷(器質的損傷)による高次脳機能障害かどうかを判断されています。

 まず,交通外傷による脳の受傷を裏付ける画像検査結果があることが必要です。ここでいう交通外傷による脳の受傷は,脳の器質的病変が生じていることをいいます。非器質的精神障害と自賠責における高次脳機能障害は区別されています。
 したがって,自賠責においては,画像所見が重視されます。画像所見については,MRIとCTが基本となります。

 次に,一定期間の意識障害が継続したことが必要です。意識障害の程度については,意識障害の程度及びGCSによる意識障害の程度を参照ください。

 そして,一定の異常な傾向が生じていることが必要となります。異常な傾向の例としては,①感情の起伏が激しく,気分が変わりやすい,②場所をわきまえずに怒り大声を出す,③並行して作業ができない,④周囲の人間関係で軋轢が生じる等です。交通事故後に「人が変わった」と周囲の人が感じる場合は高次脳機能障害の可能性があります。
 また,身体機能の異常についても着目されます。具体的には,起立障害や痙性片麻痺等が併発していること等が挙げられます。当然のことですが,これらの異常は内因性の疾患等の他の原因で生じたものではないことが必要です。「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」(報告書)では,頭部への打撲があっても,脳の器質的損傷を示唆するものではなく,通常の生活に戻り,事故から数か月経過後に高次脳機能障害をうかがわせる症状が発現した場合は,外傷と無関係の疾病が発症した可能性が高いと言及しています。

 
   自賠責保険の後遺障害等級認定は,原則として労災保険の障害認定基準に準拠します。もっとも,自賠責保険の障害等級認定は,必ずしも労災保険の障害認定基準に従って結論を出すわけではありませんが,労災の認定基準は大いに参考になります。そこで,労災保険における高次脳機能障害のポイントをまとめてみました。

 労災保険では,高次脳機能障害を4つの能力の喪失の程度によって評価を行います。
 
 ①意思疎通能力
  職場で他人とコミュニケーションを適切に行えるか?の観点から判定されます。主として,記銘・記憶力,認知力,言語力の側面からの判断となります。

 ②問題解決能力
  作業課題に対する指示,要求水準を正確に理解し適切な判断を行い,円滑に業務が遂行できるか?を判定します。主に理解力,判断力,集中力(注意の選択等)の判断となります。

 ③作業負荷に対する持続力
  一般的な就労時間に対処できるだけの能力が備わっているかどうか?について判定されます。精神面における意欲,気分又は注意の集中の持続力・持久力についての判断となります。この判断には,意欲,気分の低下等による倦怠感,疲労感も含めての判断となります。

 ④社会行動能力
  職場で他人と円滑な共同作業,社会的行動ができるか?等が判定されます。主として,協調性の有無,不適切な行動の頻度についての判断となります。

 そして,労災保険では,上記の4つの能力の喪失の程度をAからFの6段階で評価します。
 
 A:多少の困難はあるが概ね自力でできる(14級,わずかに喪失)。
 B:困難はあるが概ね自力でできる(12級,多少喪失)。
 C:困難はあるが多少の援助があればできる(9級,相当程度喪失)。
 D:困難はあるがかなりの援助があればできる(7級,半分程度喪失)。
 E:困難が著しく大きい(5級,大部分を喪失)。
 F:できない(3級,全部を喪失)。 交通事故を原因とする高次脳機能障害の後遺障害の認定には,意識障害の有無が重視されます。意識障害の測定方法には,JCS(Japan Coma Scale)とGCS(Glasgrow Coma Scale)が存在します(意識障害の程度)。

 GCSは,外傷性脳障害による意識障害を評価することを目的に作られていると言われています。GCSでは,意識障害の程度を以下の3つの要素に分けて,その合計点で評価をしています。正常な場合は15点,点数が低いほど重症になり,8点以下は重症と評価されます。3点となります。JCSに比べて態様ごとに計測することができます。国際的にはGCSを使用していますが,日本では簡易なJCSが一般的に用いられています。最近は,日本でもGCSを用いることが増えているようです。

 E 開眼
  4 自発的
  3 言葉により
  2 痛み刺激により
  1 なし

 M 運動反応
  6 命令に従う
  5 はらいのける
  4 逃避的屈曲
  3 異常な屈曲
  2 伸展する
  1 なし

 V 言語性反応
  5 見当識あり
  4 錯乱状態
  3 不適当
  2 理解できる
  1 なし

 「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」(報告書)では,当初の意識障害の程度として,GCSの場合は,12点以下が少なくとも6時間以上,13~14点が少なくとも1週間以上続いている場合を高次脳機能障害について慎重に審査を行う場合として挙げています。 交通事故による高次脳機能障害の後遺障害の認定は,頭部外傷の画像所見と意識障害が重視されています。意識障害の測定方法には,JCS(Japan Coma Scale)とGCS(Glasgrow Coma Scale)が存在します。

 JCSは,数値が大きくなるほど意識状態は悪くなり,意識障害の程度を以下の3つに分類しています。
 
 Ⅰ刺激しないでも覚醒している状態(1桁)
  0 清明
  1 清明とはいえない
  2 見当識障害がある
  3 自分の名前,生年月日が言えない

 Ⅱ刺激すると覚醒する状態(刺激をやめると眠り込む)(2桁)
  10 普通の呼びかけで容易に開眼する(合目的な運動をするし,言葉も出るが,間違いが多い)
  20 大きな声または身体をゆさぶることにより開眼する(簡単な命令に応じる)
  30 呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する

 Ⅲ刺激しても覚醒しない状態(3桁)
  100 痛み刺激に対して,はらいのけるような運動をする
  200 痛み刺激に対して,少し手足を動かしたり,顔をしかめたりする
  300 痛み刺激に反応しない

 また,R:restlessness(不穏状態),I:incontinence(失禁),A:akinetic mutism(無動性無言),apallic state(失外套症候群)を付記する場合もあります。

 「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」(報告書)では,当初の意識障害の程度として,JCS3,2桁が少なくとも6時間以上,1桁が少なくとも1週間以上続いている場合を高次脳機能障害について慎重に審査を行う場合として挙げています。
 交通事故によって,関節に機能障害を残す後遺障害が残存することがあります。関節の機能障害のうち,最も重いのが関節の用廃です。

 自賠責保険が準用する労災保険の障害の等級認定基準に関してですが,厚労省の通達では,関節の用廃を以下のいずれかに該当するものと説明しています。
 ①関節が強直したもの
 ②関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
 ③人工関節・人工骨頭をそう入置換し,主要運動のいずれか一方の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているものの
 なお,③に関して主要運動が複数ある関節の場合は,主要運動のいずれか一方の可動域が健側の2分の1以下に制限されていれば,関節の用廃として評価されます。

 関節の強直とは,関節の完全強直又はこれに近い状態にあるものをいうと説明されています。「これに近い状態」とは,関節可動域が,原則として健側の関節可動域角度の10%程度以下に制限されているものをいいます。「10%程度」とは,健側の関節可動域角度の10%に相当する角度を5度単位で切り上げた角度です。また,関節の可動域角度が10度以下に制限されている場合は,「これに近い状態」に該当すると説明されています。

 主要運動が複数ある肩関節,股関節は,いずれの主要運動もまったく可動しない場合又はこれに近い状態となった場合に関節の用廃と評価されます。 交通事故によって,後遺障害として上肢や下肢の関節に機能障害が残ることがあります。自賠責保険の後遺障害の認定は,原則として,労災保険の障害の等級認定基準に準じて行われます。

 労災保険における関節の機能障害は,関節の可動域制限の程度に応じて評価されます。関節の可動域の測定は,日本整形外科学会・日本リハビリテーション学会が定めた「関節可動域表示ならびに測定方法」に準拠した「第2 関節可動域の測定要領」に基づきます。

 関節可動域の比較は,健側と患側とを比較し,可動域制限の程度を評価します。せき柱やもともと健側に障害がある場合等は,参考可動域角度とを比較することになります。
 関節の運動は,単一のものと複数のものがあります。複数ある場合は,主要運動,参考運動,その他の運動に区別し障害の評価を行います。関節の機能障害は,主要運動の可動域制限の程度で評価するのが通常です。一定の場合は主要運動と参考運動の可動域制限の程度によって評価されますが,その他の運動は評価の対象にはなりません。
 主要運動とは,各関節の日常の動作にとって最も重要なものをいいます。通常は主要運動は一つですが,せき柱,肩関節及び股関節は二つの主要運動があります。
 屈曲と伸展のような同一局面にある運動は,両方の角度を合計した運動範囲によって可動域制限の程度が評価されます。なお,肩関節の屈曲と伸展は,前者が主要運動,後者が参考運動なので,それぞれの可動域制限は独立して評価されます。
  未成年の子が,交通事故を起こした場合,加害者の親が賠償責任を負うのかが問題となります。自動車で事故を起こした場合は,自動車が親の所有かどうかを区別して考える必要があります。

 子が起こした事故について,親に自賠法3条の運行供用者責任を負うかどうかは,以下の事情が考慮要素となります。
 ①人的関係(同居の有無,生計・職業の異同)
 ②費用の関係(自動車の購入費用,維持費・管理費の負担関係,保管場所)
 ③登録名義,保険加入者
 ④現実の保管状況
 ⑤自動車の使用目的,使用状況等

 自動車が親の所有の場合,②と③が問題となることは,ほとんどないでしょう。親が所有者である以上は,自動車の管理・保管を親自身がすることが求められ,実際に親が管理・保管していることがほとんどだと考えられます。
 したがって,自動車の所有者である親に無断で子が運転し,事故を起こした場合でも親の運行支配及び運行利益は失われず,親は運行供用者責任を負うと考えられます。

 自動車の所有者が子である場合,子が自動車の管理・保管をしなければなりません。しかし,親子という人的関係を通じて自動車の管理・保管をすべき地位が親にもあると考えることが可能です。上記の①~⑤の事情を考慮し,親の運行供用者責任を判断することになります。
 最高裁昭和49年7月16日判決は,(1)父親が車両の買い与え,保険料やその他の経費を負担していること,(2)子に独立して生活する能力がなく,全面的に父親に依拠して生活していたことなどを認定し,父親の運行供用者責任を肯定しています。 保険法は,故意による損害の招致を保険者(保険会社)の免責事由としています。自動車保険についても,故意による事故の招致の場合には,保険金は支払われないことが約款上,明記されています。

 故意免責について自動車保険の約款の解釈が問題となった事案に最高裁平成5年3月30日判決があります。
 一審は,自賠責保険実務上,未必の故意は免責事由としての悪意に含まれないことを理由に,対人賠償保険でも同様に免責規定の故意に未必の故意は含まないと判断しました。原審は,免責規定の故意に未必の故意を含むと判断しました。下級審の判断は分かれました。

 最高裁は次のように判断しています。問題となっているのは,免責条項によって保険者が例外的に保険金の支払いを免れる範囲がどのようなものとして合意されているかという保険契約者の意思解釈の問題である。故意免責条項の解釈に当たっては,保険者の免責という例外的な場合を定めたことを考慮しつつ,予期しなかった損害の賠償責任の負担という結果について,保険契約者,記名保険者等の故意を理由として免責を及ぼすのが一般保険契約当事者の通常の意思といえるか,そのように解さなければ,免責条項を設けた趣旨を没却することになるかという見地から当事者の合理的意思を定めるべきである。
 傷害と死亡では損害賠償責任の範囲に大きな差異があり,傷害の故意しかなかったのに,予期しなかった死の結果を生じた場合についてまで保険契約者,記名保険者等が招来した保険事故として免責の効果が及ぶことはないとするのが一般保険契約当事者の通常の意思に沿う。

 最高裁によれば,被保険者が故意に事故を起こしただけでは,保険者は免責を主張できないことになります。免責を主張するには,被保険者が損害の発生を認識・認容していたことが必要ということになります。
 
 交通事故によって傷害を受けた被害者が,搬送先の病院の医療過誤で症状が悪化したり,死亡したりすることがあります。医療過誤が生じた場合,被害者やその遺族は,医療機関に対して,損害賠償請求をすることが考えられます。
 では,交通事故の加害者に対して,被害者に生じた全損害の賠償を求めることができるのかは問題となります。

 交通事故により生じた傷害が放置すれば死亡に至るもので,適切な治療を受ければ死亡を免れたが,医療過誤により被害者が死亡したという事案について,最高裁平成13年3月13日判決があります。
 最高裁は,交通事故の加害者と医療機関との間で共同不法行為の成立を認め,交通事故の加害者は寄与度減責の主張をすることはできないと判断し,過失相殺については相対的過失相殺によると判示しています(共同不法行為と過失相殺)。

 交通事故によって生じた傷害が死亡に至る程度のものではなかったが,医療過誤により死亡や症状が悪化した場合も一律に共同不法行為の成立を否定することはできないと考えられます。しかし,かといって,常に共同不法行為が成立するというわけでもありません。
 たとえば,医療過誤が医師の重過失による場合や,医師の過失が説明義務違反の場合は,交通事故の加害者との間で共同不法行為は認められないのではないかと指摘されています。
 また,共同不法行為が認められるとしても,交通事故の加害者は寄与度減額の主張をなしうると解されます。過失相殺については,相対的過失相殺によるとの指摘があります。 交通事故の人身損害について,加害者に,自賠法3条に基づく運行供用者責任を追及するには,相手方が運行供用者である必要があります。
 所有権留保やリース契約の場合,売主やリース会社は,原則として運行供用者には当たりません(運行供用者とリース契約)。加害者が運転していた自動車がレンタカーの場合,レンタカー会社は運行供用者に当たるのでしょうか?

 レンタカーの場合は,レンタカー会社が運行供用者に当たり,運行供用者責任が認められる場合は多いと言えます。
 最高裁46年11月9日判決は,利用者が運転免許等を有しているか審査し,使用時間が短期でも料金が安くなく,燃料代・修理代等は利用者負担であり,利用者は予定利用時間・走行区域・制限走行距離を遵守する義務を負う等の事実を認定し,レンタカー業者は運行支配及び運行利益を失っていない,すなわち運行供用者であると判断しています。
 最高裁は,レンタカー会社が利用者に一定の制約を課していることを運行支配を失わない根拠と考えているようですが,下級審の裁判例には,そのような制約がない場合にもレンタカー会社の運行供用者性を肯定しているものもあります。

 もっとも,レンタカーの利用者が無断で第三者に転貸し,返還期限後に生じた事故のように,レンタカー会社の支配から離脱したといえる場合は,レンタカー会社の運行供用者性は否定されることになります。このようなケースで,レンタカー会社の運行供用者性性を否定した裁判例は,レンタカー会社が警察に所在調査を依頼したことや,警察に相談に行っている事実を認定しています。レンタカー会社が回収のための努力をしていることを運行支配を否定する根拠の一つとして考えているようです。 交通事故の被害者が年金受給者の場合,年金の種類によっては逸失利益の対象となります。年金が逸失利益の対象となる場合も,生活費控除率は,通常よりも高くなります(年金受給者の逸失利益)。

 年金を受給し,稼働収入(家事労働も含む)がある場合の年金部分の生活費控除率に関しては,裁判例は,いくつかの方法を取っています。
 
 ①就労期間中は稼働収入と同じ控除率を用いる。
 ②年金部分については稼働収入部分より高い控除率を認める。

 ③就労可能期間経過後の年金部分のみとなった収入に対して従前より高い控除率に変更する。
 ④就労可能期間経過後の年金部分のみとなった収入に対して従前の控除率をそのまま用いる。

 就労可能期間中に②の方法により算定した場合は,就労可能期間経過後は④の方法で算定するケースが多いですが,中には③の方法を用いることもあります。

 就労可能期間中の基礎収入を稼働収入と年金の合算で,生活費控除率を同じ割合として,就労可能期間経過後の年金部分の控除率を従前より高い割合とした裁判例として,大阪地方裁判所平成20年6月17日判決があります。

 稼働収入部分と年金部分とで異なる生活費控除率とした裁判例として神戸地裁平成23年11月30日判決があります。 交通事故による後遺障害が重篤で,将来にわたって被害者に介護が必要な場合は,将来の介護費が損害として認められます(将来の介護費)。

 将来介護費の日額について,裁判所は職業付添人と近親者付添の場合を区別しています。裁判例では,介護の主体が職業付添人か近親者かを明示して日額を算定しています。
 近親者の介護と職業付添人による介護を併用しているケースで,近親者の年齢,職業によって併用が認められる場合は,近親者分と職業付添人分を個別に算定しています。
 被害者の後遺障害の程度によっては,複数の付添人による介護が必要な場合やヘルパーではなく看護師が付添う必要がある場合の付添費は加算される傾向にあります。

 訴訟で問題となるのは,近親者が高額の所得を得ていたが,介護によってその所得を得られなくなった場合の日額です。
 裁判例の傾向としては,近親者がどれほど高額の所得を得ていても,職業付添人による一般的な日額以上の金額は損害として認めないと言われています。このような事情があれば,それを前提とした介護体制を整えるのが通常であるというのが,根拠として言われています。

 職業付添人による介護は,介護保険制度の開始に伴って付添費が高額化していると指摘されています。裁判例でも日額を1万8000円から2万円程度認められており,中には2万円以上の金額を認めた裁判例もあります。
 介護保険は3年ごとに見直しがなされ,介護報酬の単価引下げや料金体系の変更等の可能性があります。そこで,裁判例では,介護保険制度開始後の職業付添費の変動などの不確定要素を考慮し,口頭弁論終結時の介護費をそのまま認定せず,控えめな認定をする傾向があると指摘されています。

  交通事故は加害者と被害者との関係で起こりますが,道路環境や道路事情が影響することもあります。道路の設置又は管理に瑕疵があることが交通事故の原因というケースもありえます。

 国家賠償法2条は,「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたとき」は,国又は地方公共団体の賠償責任を肯定します。
 交通事故と道路の設置又は管理の瑕疵が競合した場合,両者の責任関係はどうなるのか?共同不法行為が成立するのか?という議論があります。裁判例には,共同不法行為の成立を認めたものがあります。

 このような議論を行うのは,共同不法行為の成立要件にかかわります。交通事故の加害者と道路管理者との間で意思の共同はありえません。主観的共同説に立つと,共同不法行為の成立は否定され,被害者は交通事故の加害者と道路管理者のそれぞれに対して,損害への寄与度に応じて個別に賠償請求をしなければなりません。
 しかし,それぞれの寄与度を明らかにすることは不可能に近く,被害者にその立証をさせるのは酷です。そこで,客観的共同説に立ち,被害者はいずれの加害者に対しても全損害の賠償請求ができると解されています。

 通常,道路の設置又は管理の瑕疵と交通事故の加害行為は,別個に存在するので,たまたま競合したとしても,いわゆる弱い関連性しか認められません。
 したがって,共同不法行為のうち,民法719条1項後段が適用されます。道路管理者及び交通事故の加害者は,損害に対する自分の寄与度を主張・立証することで,責任の減免が認められることになります。 交通事故により,嗅覚又は味覚の脱失又は減退が認められる場合,自賠責保険では,労災に準じて,脱失は12級相当・減退は14級相当の後遺障害が認定される余地があります。
 加害者への損害賠償請求に際しては,嗅覚及び味覚の障害によって,労働能力が喪失するのか?という問題が生じます。

 裁判例では,嗅覚・味覚障害のみが問題となった事案はほとんどなく,他の後遺障害も考慮して労働能力喪失率が認定されています。嗅覚・味覚障害の場合も,他の後遺障害と同様,後遺障害の内容,被害者の職業,被害者固有の特性,減収の有無・程度等の事情を勘案することになります。

 職業との関連では,調理師,すし職人,溶剤を使用する職人等に関しては,嗅覚及び味覚は,味付け,材料の見極め等に重要であるので,労働能力に多大な影響を及ぼすと指摘されています。この点を踏まえて,後遺障害による支障の実態に合わせて高い数値の労働能力喪失率が認められることがあると考えられます。

 被害者が家事従事者,すなわち主婦の場合,家事労働への支障について,裁判例の考え方は異なっています。嗅覚・味覚の脱失により料理等の家事労働の重要な部分に重大な支障を生じていると判示した判決があります。一方で,後遺障害の部位,内容,程度と従事する労働が家事労働であることからすれば喪失率をそのまま適用するのは不適当と判示した判決もああります。

 労働能力喪失期間については,嗅覚・味覚障害が発生した機序を検討し,回復の可能性の度合いに応じて認定することになるとの指摘がなされています。 交通事故が原因で,むちうち症により後遺障害が残存した場合,後遺障害の等級表の12級13号又は14級9号に認定される可能性があります。
 むちうちの後遺障害の逸失利益については,労働能力喪失期間が他の後遺障害の累計に比べて制限され,14級で2年から5年,12級で5年から10年を目安とされています。

 むちうち症以外にも,神経症状で12級13号又は14級9号の後遺障害が認定されることがあります。神経症状の後遺障害の逸失利益の算定に際して,むちうちと同様に労働能力喪失期間が制限されるのか?という問題があります。

 まず,症状固定後に症状の改善傾向が認められる場合は,理論的根拠は別にして,労働能力喪失期間を限定する事情となると考えられます。
 他方,症状固定後,相当期間経過しているにもかかわらず症状が改善していない場合は,労働能力の喪失期間を限定するのは,妥当ではないと考えられます。
 可動域の制限は認められるが,それが自賠責の後遺障害には該当せず,神経症状として後遺障害が認定されている場合,直ちに労働能力喪失期間を限定するのは妥当ではないと考えられます。
 神経症状が疼痛(痛み)のみの場合は,労働能力喪失期間を限定する方向に働くと考えられます。
 
 上記のように,労働能力喪失期間を限定するのが妥当ではないとして,具体的な労働能力の喪失期間はどのくらいなのか?という問題は残ります。
 傾向としては,被害者が高齢者であれば就労可能年数まで認められる可能性が高く,若年者であれば就労可能年数まで認められる可能性は低くなると考えられます。
  交通事故が業務上災害又は通勤災害の場合,被害者は,労災給付を受けることができます。被害者が労災給付を受けた場合,損益相殺の対象となり,加害者への損害賠償額から控除されます。

 最高裁平成16年12月20日判決は,遺族補償給付に関して,損益相殺を行うに当たり,まず遅延損害金に充当すべきであると判示しています(労災給付と遅延損害金への充当)。

 後遺障害事案について,最高裁平成22年9月13日判決は,以下のように判示しています。
 被害者が,不法行為により傷害を受け,後遺障害が残った場合に,労災保険の各種給付や公的年金制度に基づく各種年金給付を受けたときは,それぞれの制度の趣旨目的に従い,特定の損害について必要額をてん補するために支給されるものであるから,各種給付について,てん補の対象となる特定の損害と同質であり,かつ,相互補完性を有する損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきである。

 最高裁は,22年判決において,労災保険による療養給付,休業給付について損害の元本から損益相殺を行うと16年判決とは異なる判断をしています。その後の22年10月15日判決も最高裁は,22年9月13日判決を引用し,同様の判断をしています。

 16年判決は被害者の相続人が受給した遺族補償年金との損益相殺が問題となり,22年判決は後遺障害が残存した被害者に労災給付がなされた事案で,両者は事案が異なるとの指摘があります。
 また,遺族年金給付は被害者の死亡後の扶養者の生活の維持を図ることを目的として給付され,被害者の逸失利益をてん補を目的とするものではないこと,生活保障的な政策目的が加味されているので,損益相殺の調整の可否について前提が異なるとの指摘もなされています。

 【追記】
  労災給付と遅延損害金への充当について,平成27年3月4日に最高裁の大法廷判決が出されました。大法廷判決については,労災給付と損益相殺をご参照ください。
 交通事故の被害者が,加害者からの損害賠償請求とは別に,労災保険等の公的給付を受給することができる場合があります。

 これらの給付を受給した場合には,損益相殺の対象となることがあります(損益相殺)。損益相殺に関して,損害金の元本に充当するのか,遅延損害金に充当するのか?という問題があります(遅延損害金と損益相殺)。

 最高裁平成16年12月20日判決は,自賠責保険金について,遅延損害金から充当すべきであると判示しています。
 最高裁は,「本件自賠責保険金等が支払時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは,遅延損害金の支払債務にまず充当されるべき」と判示しています。
 最高裁平成16年判決の事案は,自賠責保険金とは別に,労災保険法に基づく遺族補償年金と厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金を受給していました。最高裁のいう自賠責保険金等のの中に労災保険法に基づく遺族補償年金と厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金が含まれると解するのが文理上明らかです。
 したがって,最高裁平成16年判決に従うと,労災保険法による給付のうち,遺族補償年金については,損益相殺の際は,損害金の元本ではなく,遅延損害金から充当することになります。

 【追記】
  労災給付と遅延損害金への充当について,平成27年3月4日に最高裁の大法廷判決が出されました。大法廷判決については,労災給付と損益相殺をご参照ください。 逸失利益の算定について,東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」は,比較的若年の被害者で生涯を通じて全年齢平均賃金を得られる蓋然性がある場合には,原則,全年齢平均賃金または学歴別平均賃金によるとしています。

 共同提言を受けて,大阪地方裁判所の算定基準でも,若年者の実収入が学歴計・全年齢平均賃金を下回る場合であっても,年齢,職歴,実収入額と学歴計・全年齢平均賃金との乖離の程度,その原因等を総合考慮し,将来的に生涯を通じて学歴計・全年齢平均賃金を得られる蓋然性が認められる場合は,学歴計・全年齢平均賃金を基礎収入とするとしています。

 生涯を通じて学歴計・全年齢平均賃金を得られる蓋然性が認められない場合は,現実収入を基礎にせざるを得なくなりそうですが,大阪地方裁判所の算定基準では,以下のようになっています。
 生涯を通じて学歴計・全年齢平均賃金を得られる蓋然性が認められない場合であっても,直ちに現実収入を基礎にするのではなく,学歴計・全年齢平均賃金,学歴計・年齢対応平均賃金等を採用することもあると述べています。

 以上のとおり,若年者であれば,機械的に基礎収入が学歴計・全年齢平均賃金となるわけではありません。学歴計・全年齢平均賃金を将来,生涯にわたり得られる蓋然性の立証が必要となります。
 裁判例では,現実収入と学歴計・全年齢平均賃金とにそれほど差がないことが蓋然性を基礎づける大きな要因となっているとの指摘があります。
 現実収入との開きが大きい場合は,収入増が期待できる専門技術・技能,資格取得の有無,転職の意思・機会の有無,勤務先の規模・安定性等を考慮し蓋然性を判断することになると指摘されています。 交通事故により,被害者が死亡した場合,逸失利益は以下のように算定します。

 (基礎収入-生活費控除)×就労可能年数に応じたライプニッツ係数

 基礎収入の算定について争いになることがあります。現実に収入を得ている場合は,現実収入を基礎収入として算定するのが通常です。では,将来の昇給を考慮することはできないのでしょうか?

 最高裁昭和43年8月27日判決は,将来,昇給等による所得の増加を得たであろうことが証拠に基づき,相当の確かさをもって推定できる場合は,昇給等の回数,金額等を予測できる範囲内で控えめに見積もり,これを基礎に逸失利益を算定することができると述べています。

 立証の程度は,相当の確かさで足りることになります。公務員や大企業で昇給基準が明確にある場合はもちろん,基準が存在しない場合でも認められる余地があるということになります。

 ちなみに,若年者の逸失利益の算定に当たっては,将来的に生涯を通じて賃金センサスの学歴計・全年齢平均賃金を得られる蓋然性があれば,賃金センサスの学歴計・全年齢平均賃金を基礎収入とするというのが,大阪地方裁判所の賠償額算定基準です(逸失利益利益の算定-三庁共同提言-参照)。 交通事故の被害に遭った場合,被害者に過失があれば過失相殺がなされ,賠償額が一定程度,減額されることになります。自賠法3条の運行供用者責任を追及する場合にも過失相殺はなされます。

 過失相殺により,運行供用者の賠償額が減額されるとすると,運行供用者責任を担保する自賠責保険の支払額も過失割合に応じて減額することになりそうです。
 自賠責保険の制度発足当初は,過失相殺が厳格に適用されていました。被害者からみると,過失相殺は,受取る賠償額又は保険金額が減ることになります。過失相殺をめぐって紛争が長期化すると,自賠責保険からの支払も遅延してしまいます。そうすると,交通事故の被害者の保護という自賠法の目的が不十分となってしまいます。

 そこで,自賠責保険の支払いについては,被害者に過失がある場合は,以下のように減額がなされます。本来の過失相殺ではないため,過失相殺とは言わず,「減額」という用語を使用しています。

 
被害者の過失割合 後遺障害又は死亡 傷害
7割未満 減額なし 減額なし
7割以上8割未満 2割減額 2割減額
8割以上9割未満 3割減額 2割減額
9割以上10割未満 5割減額 2割減額

 自賠責保険で上記の取扱いができるのは,加害者の責任が自賠責保険の範囲で完全に担保され,その限りで加害者が自己の財産から賠償額を支払う必要がないからと言われています。つまり,実質的な賠償額負担者が自賠責保険会社であるからです。 交通事故は,被害者にも何らかの過失があることが多く,過失相殺によって,一定の割合で損害賠償額が減額されることがあります(過失割合・過失相殺とは?)。

 過失相殺でいう過失は,公平の理念に基づき損害賠償額を減額するために斟酌されるので,不法行為者に対して賠償責任を負わせる民法709条の過失と同等である必要はありません。
 過失相殺に関して,被害者の能力は,責任能力ではなく,事理弁識能力で足りるというのが判例です(最高裁昭和39年6月24日大法廷判決)。

 問題は,どの程度の知能があり,どの程度の年齢になれば事理弁識能力が認められるのか?ということになります。
 事案ごとの判断にならざるをえない問題ですが,前掲の最高裁判決が,「交通の危険につき弁識があった」と述べていることから,交通事故の場合の事理弁識能力は,交通の危険について弁識があることと言い換えることができそうです。
 最高裁判決後,「交通の危険を弁識するに足りる知能」という言回しを使っている裁判例があります。

 上記のように,被害者に事理弁識能力があれば,過失相殺をすることができることから,過失相殺が認められる場面は広がってきました。
 しかし,被害者にどれほどの落ち度があっても,事理弁識能力がなければ,過失相殺はなされないということになります。
 加害者からみると,被害者の事理弁識能力の有無によって,過失相殺の可否が左右されるのは不公平で,被害者に事理弁識能力がなくとも,さらにいえば,被害者に過失がなくても,公平の観点から賠償額を減額すべき場合があるのではないか?という問題意識が出てきました。そして,被害者と一定の人的関係にある者の過失を過失相殺の場面で斟酌してもいいのではないかという被害者側の過失の議論につながります。
 
  XとYが1つの交通事故で被害者に対して連帯して損害賠償積金を負う場合に,Yの損害賠償責任についてのみ過失相殺がなされ,結果,XとYで賠償すべき損害額が異なることがあります。

 Xが損害の一部を填補した場合,填補された額をYの賠償すべき損害額から控除することができるのか?ということが問題となります。最高裁平成11年1月29日判決がこの問題について判断しています。

 最高裁は,Xが填補された額をYが賠償すべき額から控除できるとすると,以下のような不都合が生じると指摘しています。
 Yは自分の責任を果たしていないにもかかわらず控除分のみ責任を免れることになります。Xが無資力で填補した以上の賠償をすることができない場合,Yが控除後の賠償額をすべて賠償しても,被害者は損害の全額の填補を受けることができなくなります。
 また,Xが自賠責保険から損害の一部を填補した場合,Yの賠償すべき額からその額を控除すると,Yの自賠責保険に基づき填補される金額は減少することになります。その結果,X,Yの自賠責保険の合計額の範囲内で填補することのできる損害であっても,自賠責保険で填補できない事態が生じることが出てきます。
 以上は,Xが損害の一部を填補した額をYが賠償すべき額から控除できるとするから生じる不都合です。したがって,最高裁は,Xが填補した額は被害者が填補を受けるべき損害額から控除すべきであり,控除後の損害額がYが賠償すべき損害額を下回らない限り,Yが賠償すべき損害額に影響しないと判断しました。

 この判決の射程が問題になりますが,判旨の一般論からすると,射程は広く解させますが,上記の理由付けからすると事例判決のようにも思えます。
 交通事故の被害者に遭った際に,相手方が任意保険に加入していないというケースも存在します。このようなケースでは,被害者側の保険,たとえば,無保険車傷害保険等を使用せざるをえないことがあります。

 無保険車傷害の被保険者は,以下の者です。
 ①記名被保険者
 ②記名被保険者の配偶者
 ③記名被保険者・配偶者の同居の親族
 ④記名被保険者・配偶者の別居の未婚の子
 ⑤①~④以外で非保険自動車の正規の乗車装置,当該装置のある室内に搭乗中の者

 交通事故の発生時に胎児で,事故によって出産後に後遺障害を負った場合に無保険車傷害保険の被保険者といえるのでしょうか?
 出産前の胎児には,法律上,権利能力はありません。しかし,不法行為に基づく損害賠償請求と相続については,権利能力が擬制されています。

 最高裁平成18年3月28日は,以下のように判断しています。

 胎児である間に受けた不法行為により出産後に傷害が生じ,後遺障害が残った場合,その損害を加害者に対して損害賠償請求することができる。
 無保険車傷害保険は,法律上の損害賠償請求権はあるが,相手方自動車が無保険自動車であり,十分な補てんを受けることができない場合に支払われ,賠償義務者に代わって損害をてん補するという性格を有する。保険契約は,加害者が賠償義務を負う損害はすべて保険金によるてん補の対象となるという意思で締結された。
 被害者は,記名被保険者の子であり,加害者に対して損害賠償請求をすることができる。被害者に生じた損害について記名被保険者の同居の親族に生じた損害に準じるものとして,無保険車傷害保険契約に基づく保険金を請求することができる。 交通事故により,関節又はせき髄の固定術等骨移植が必要な外科手術を行う場合,腸骨から移植する骨を採ることにより,骨盤が変形することがあります。
 自賠責保険の後遺障害等級認定では,骨盤骨に著しい変形を残すものとして12級5号と認定される可能性があります。

 労働能力喪失表に従うと,12級の労働能力の喪失率は14%です。骨盤変形の後遺障害による逸失利益の算定に当たり,14%の労働能力喪失率が認められるか?が争いになります。骨盤はもっとも大きな骨で,変形によって労働能力が喪失するとは考えられないというのが,ここでの問題意識です。

 腸骨からの採骨術後に変形障害以外に,骨欠損部からのヘルニアや疼痛があるとの指摘があります。裁判例でも,被害者が疼痛を訴えてることが認定されています。
 これらを考慮し,骨盤変形の後遺障害による労働能力の喪失は,採骨術後の疼痛によって労働能力に影響があることが立証できれば,14級の神経症状として評価できるのではないかと指摘されています。
 また,その場合の労働能力の喪失期間は,手術後1年から2年が目安になると指摘されています。

 労働能力への影響が立証できず,後遺障害による逸失利益が認められない場合も,身体の完全性は失われ,健常部への侵襲があることから,後遺障害による慰謝料の増額事由として斟酌することができると考えられています。 自賠法3条の運行供用者責任に基づき損害賠償請求をするには,相手方が運行供用者である必要があります(運行供用者について)。

 自動車の使用者が割賦販売で自動車を購入し,その担保として所有権が売主に留保されている場合があります。
 所有権留保特約付割賦販売契約の売主は,原則として運行供用者には当たりません(最高裁昭和46年1月26日判決)。

 所有権留保付割賦販売契約の売主と似た立場に,ファイナンス・リース契約のリース会社が挙げられます。
 リース契約では,リース会社がサプライヤーからユーザーの指定する自動車を購入し,ユーザーへ賃貸します。ユーザーはリース会社に賃料を支払いますが,実質は賃貸者ではなく,金融であり,リース会社の立場は所有権留保特約付の売主と類似します。
 リース契約の自動車の所有権は,リース会社にありますが,原則として運行供用者ではないというのが下級審の裁判例です。

 リース契約の中には,自動車の維持管理をリース会社が行うメンテナンス・リース契約があります。メンテナンス・リース契約の場合,リース会社の運行供用者性を肯定する見解と否定する見解があります。肯定説は,リース会社を自動車の修理業者とパラレルに考えているようです。 交通事故で損傷した被害車両が改造車の場合に,被害車両の改造部分についても損害賠償の対象となるのかという問題があります。

 裁判例として1審と控訴審で判断がわかれた金メッキ事件を紹介します。追突事故により後部に損傷を受けた被害車両(ベンツ)の修理費用の中に,リアバンパーに施されていた金メッキを同種のものに取り換える費用が含まれていました。
 1審(東京地裁平成2年2月8日判決)は,被害車両のバンパーに金メッキをするための費用は,事故と相当因果関係のある損害ではないと判断しました。
 控訴審(東京高裁平成2年8月27日判決)は,金メッキ部分の修理費用の5割を減額した上で,損害として認めました。

 (1)損害を否定した1審の理由の概要です。
 金メッキをしたバンパーは,普通のバンパーと比べ,少しも効用を増加させておらず,かえって,自己の損害を拡大させている。バンパーは交通事故の際に自動車本体の損傷及び搭乗者の死傷を防止,軽減することを目的にしているので,バンパーに金メッキをすること自体,社会的に相当な行為ではない。
 したがって,バンパーに金メッキをするための費用は交通事故から通常発生する損害ではなく,特別損害である。

 (2)損害と認めた控訴審の理由の概要です。
 被害車両に金メッキが施されたリアバンパーが取付けられており,事故により損傷が生じ,同種の金メッキを施したバンパーと交換せざるを得なかったので,交換に要した費用は事故と相当因果関係のある損害である。
 しかし,バンパーは交通事故が発生した際に自動車本体の損傷及び搭乗者の死傷を防止,軽減させることを目的にしている。バンパーに金メッキを施したところで,その効用を増加させるものではなく,かえって損傷した場合の修理費用を増大させ無用に損害を拡大させた。過失相殺の法理により損害額を算定するに当たり被害者の行為を斟酌することができる。

   脾臓は肝臓と並び,交通事故や転落事故等による鈍的腹部外傷の際に損傷が生じる頻度が高い臓器と言われています。現在の後遺障害等級認定では,交通事故で被害者が脾臓を失った場合,13級11号が認定されます。なお,平成18年3月までは8級11号が認定されていました。
 
 交通事故で脾臓を損傷した場合,労働能力喪失表に従うと,13級の労働能力喪失率は9%ということになります。脾臓損傷の労働能力喪失率については,裁判例において労働能力を喪失するのか?喪失するとしてどの程度喪失するのか?が争われてきました。
 もっとも,かつて,脾臓の損傷による後遺障害の等級は,8級11号が認定されており,労働能力喪失表に従うと労働能力の喪失率が45%となることから生じた争点ということもできます。

 脾臓は医学上の機能がまだ完全に明らかになっていないと言われています。脾臓を取り除いても他の器官が脾臓の機能を代用するため著名な脱落症状は残らず,生命に支障はないと言われています。しかし,脾臓の摘出後に感染防御機能が低下するとも言われています。
 従前の裁判例では,被害者の年齢,生活状況,減収の有無・程度,職業の内容,脾臓の摘出が被害者の仕事の遂行に影響を及ぼす程度等の事情を考慮して労働能力喪失率を認定していました。認定された労働能力の喪失率は20%から40%が多いようです。

 現在の裁判例では,認定される後遺障害の等級が13級11号になりましたので,おおむね,労働能力喪失表どおりの9%の喪失率が認められているようです。 交通事故によって後遺障害が残存した場合,まずは自賠責保険において,自賠法施行令別表第一及び第二に該当するかどうかが判断されます。

 自賠責保険では,自賠法施行令別表第二に該当する後遺障害は複数存在する場合は,以下のように取合扱います。この取扱いを「併合」と呼んでいます。
 ①別表第二5級以上の後遺障害が2つ以上ある場合,重い方の等級を3つ繰り上げる。
 ②別表第二8級以上の後遺障害が2つ以上ある場合,重い方の等級を2つ繰り上げる。
 ③別表第二13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合,重い方の等級を1つ繰り上げる。
 ④その他の場合,重い方の等級を採用する。

 併合の場合,それぞれの後遺障害の等級の保険金額の合計が併合後の後遺障害の等級の保険金額を超過する場合は,それぞれの等級の保険金額の合計額を限度に自賠責保険からの支払いを受けることになります。

 自賠法施行令別表第一及び第二の各等級に該当しない後遺障害であっても,各等級に相当するものは,別表第一,第二の後遺障害に準じて,等級が定められます。この取扱いを「相当」と呼び,相当の方法で定められた等級を「相当級」と呼んでいます。
 相当級と評価される後遺障害には,様々な類型があります。たとえば,嗅覚脱失,味覚脱失は,別表第一及び第二に該当する等級はありませんが,神経障害に近い障害と扱われ,程度に応じて12級相当,14級相当と扱われています。 交通事故の被害者は,加害者側の自賠責保険会社に対して,損害賠償額を直接請求することができます。
 自賠責保険会社への直接請求権は,自賠法16条に基づくもので,16条請求や被害者請求と呼ばれています。

 加害者側の任意保険会社に対しても,保険約款上,被害者の直接請求権が定められています。任意保険会社への直接請求権は,加害者側に任意保険が付保されているにもかかわらず,加害者が破産してしまった場合や,行方不明になった場合等の被害者が救済されない事態に対処するための条項です。

 任意保険会社への直接請求権の発生要件は,以下の2つです。
 ①対人事故によって,被保険者が法律上の賠償責任を負うこと
 ②保険会社が被保険者に対して支払責任を負うこと

 以上の2つの要件を満たしたうえで,さらに以下の支払条件に該当する場合に,保険会社から支払いが行われます。
 (1)判決や和解,調停等により損害賠償責任が確定した
 (2)損害賠償請求権不行使の書面による承諾があった
 (3)損害賠償額が保険金を超過することが明らかであること
 (4)被保険者の破産等

 (2)の損害賠償請求権の不行使の書面による承諾とは,一般に免責証書と呼ばれるものです。任保険会社と訴訟外で示談が成立した際に取り交わします。免責証書を取り交わすことによって,保険会社は被保険者である加害者ではなく,被害者へ保険金を支払いをすることができるようになります。

 自賠法16条の直接請求権と異なり,任意保険会社は,被保険者に対して主張できる各種の免責事由を被害者に対しても主張することができます。
 被害者の直接請求権と被保険者の保険金請求権が競合した場合は,被害者の直接請求権が優先することになっています。 交通事故の被害に遭った場合,通常は,加害者側の任意保険会社が,医療機関に直接,治療費を支払ったり,被害者に対して休業損害を支払ったりといった対応をします。

 自動車保険には,自賠責保険と任意保険があり,それぞれ別個の契約で,損害の査定も別個に行われます。任意保険は自賠責保険の上積み保険なので,自賠責保険の支払後に,任意保険から支払がなされるというのが本来です。
 しかし,被害者からすると,まず自賠責保険に被害者請求し,その後,自賠責保険の超過額を任意保険会社から受取るという二重の手間をかけなくてはなりません。
 そこで,被害者の迅速な救済を図るために,損保業界のサービスとして,一括払制度が実施され,通常,冒頭のような対応がなされています。

 一括払制度は,加害者の車両に自賠責保険と任意保険の両方が付保されている場合に,任意保険会社が自賠責保険会社が支払うべき自賠責保険金も含め保険金を支払い,後に自賠責保険金分を自賠責保険会社へ求償するという制度です。
 任意保険が免責になる場合や,被害者の損害額が明らかに自賠責保険の範囲内で収まる場合は,一括払いは行われないのが原則です。

 任意保険会社が自賠責保険金分を支払うには,自賠責保険会社の認定と任意保険会社の認定が一致していることが前提となります。そこで,事前認定という制度が設けられています。
 事前認定は,加害者の賠償責任の有無,重過失減額の有無,後遺障害の有無・程度を事前に損保料率算出機構の調査事務所へ照会するという制度です。

 後遺障害の認定は,事前認定によることも,被害者が自賠責保険会社に直接請求(被害者請求)することもできます。大阪弁護士事務所は,被害者請求をすることを勧めています(後遺障害の等級認定参照)。 交通事故による損害のうち,逸失利益(休業損害,後遺障害による逸失利益,死亡による逸失利益)の算定に際し,基礎収入を算定する必要がありますが,賃金センサスを利用することがあります。

 賃金センサスとは,厚生労働省大臣官房統計情報部が毎年7月に実施している賃金構造基本統計調査結果に基づき,翌年6月に賃金センサスとして全5巻が刊行されています。もっとも,厚労省のホームページ上で刊行前に公表されています。
 第1巻「全国(産業大分類)」,第2巻「全国(産業中分類)」,第3巻「全国(役職,職種,新規学卒者,標準労働者,短時間労働者,企業規模5~9人)」,第4巻「都道府県別」,第5巻「雇用形態」の全5巻からなります。

 賃金構造基本統計調査は,主要産業に雇用される労働者の賃金の実態を雇用形態,就業形態,職種,性別,年齢,学歴,勤続年数,経験年数等から明らかにする目的で行われています。
 5人以上の常用の労働者を雇用している民間の事業所と10人以上の常用の労働者を雇用している公営の事業所が調査対象になっています。
 調査結果は,最低賃金の決定や労災保険の給付額算定の資料として用いることが予定されています。また,雇用・労働に関する国の政策検討の基礎資料としても用いられています。これらにとどまらず,損害賠償請求に際し,損害額の算定の資料としても用いられています。

 損害賠償請求の算定に当たっては,第1巻第1表の産業計・企業規模計の平均賃金を使用します。もっとも,特定の業種や職種の平均賃金を利用する際には,第2巻や第3巻を利用することになります。 交通事故による損害賠償請求権は,損害及び加害者を知った時から3年で時効により消滅します。消滅時効にかからないようにするには,時効の中断させる必要があります。時効の中断事由に,「債務の承認」があります。

 被害者が自賠法16条に基づき,自賠責保険に損害賠償額の支払いを請求し,支払を受けた場合は,時効は中断しないと解されています。
 自賠責保険会社への請求権と加害者に対する損害賠償請求権は,別個の権利です。また,自賠責保険会社が加害者の代理人的立場にあると解することもできません。
 したがって,自賠責保険会社に対して,被害者が損害賠償額の支払の請求やその支払は,加害者に対する損害賠償請求権の時効中断事由には該当しません。

 交通事故の加害者が任意保険に加入している場合,保険実務上,任意保険会社が,医療機関等に対して直接,治療費が支払うことがあります。また,任意保険会社から被害者に直接,休業損害や通院交通費等が支払われることがあります。
 これらの支払は,保険約款(契約)に基づいて被保険者である加害者の同意の下,加害者の損害賠償債務の支払を行っているといえます。つまり,加害者の代理人としての被害者側への支払いということができます。
 したがって,代理人による債務の承認として,時効中断事由になると解されています。被害者ではなく,医療機関への治療費が直接支払われる場合も,被害者との関係では,損害賠償債務の支払として,被害者の医療機関に対する債務を代位弁済していると考えられるため,時効は中断すると解されています。
 保険約款上,被害者が任意保険会社に対して直接請求権を行使することができますが,この場合,自賠責保険会社への直接請求と同様,保険会社自身の債務の承認にすぎないと解さざるを得ないという場合もありえます。 交通事故の加害者が自転車の場合,保険に加入していないことも多く,たとえ,裁判で高額の賠償を命じる判決が出ても,加害者が支払えない場合もあります。自転車にTSマークが付いている場合は,保険で保障されることがあります。

 TSマークとは,自転車安全整備士が点検整備した普通自動車に付けられます。このTSマークには,傷害保険と賠償保険が付いています。
 この保険は自転車に付けられているので,自転車の所有者だけでなく,自転車に搭乗している家族や知人等も被保険者になります。
 TSマークは自転車安全整備店で取扱われています。同店でTSマークの貼付を依頼し,有料の自転車の点検・整備を受ける必要があります。
 保険の有効期間はTSマークに記載されている点検日から1年です。保険の対象となるのは,点検年月日と自動車安全整備士番号が記載された保険有効期間中のTSマーク貼付自転車に搭乗中の人になります。

 TSマークには,第一種(青色マーク)と第二種(赤色)があり,賠償内容が異なります(金額は平成26年10月1日以降の貼付分)。 
 ①傷害保険
  TSマークが貼付されている自転車に搭乗中の人が交通事故により,事故日から180日以内に,入院,死亡,重度後遺障害を負った場合に保険金が支払われます。重度後遺障害は,自賠責の後遺障害等級の1級~4級です。
 第一種は,死亡・重度後遺障害は30万円,入院(15日以上)で1万円の保険金が支払われます。
 第二種は,死亡・重度後遺障害は100万円,入院(15日以上)で10万円の保険金が支払われます。

 ②賠償責任保険
 TSマークが貼付されている自動車搭乗者が第三者に死亡又は重度後遺障害を負わせたことで,法律上の賠償責任を負った場合に,以下の金額を限度に保険金が支払われます。重度後遺障害は,自賠責の後遺障害等級の1級から7級です。
 第一種は1000万円,第二種は5000万円

 ③被害者見舞金
  TSマーク貼付されている自転車に搭乗中の人が,第三者に傷害(入院15日以上)を負わせ,法律上の損害賠償責任を負う場合に第二種の場合10万円が一律に支払われます。

  被害者が交通事故で負傷した際の治療は,労災事故でなければ,健康保険を利用することができます。被害者が健康保険を利用して治療を受けた場合,社会保険者は被害者の第三者(加害者)に対する損害賠償請求権を代位取得することになります。

 自賠責保険の保険金額は120万円なので,被害者の直接請求権と社会保険者が代位取得した直接請求権が競合し,両請求権の合計が自賠責保険の保険金額を超過する場合,どちらが優先するのか?という問題がありました。
 この問題については,①被害者が優先するという考え方と②被害者と社会保険者で按分するという考え方が対立していました。学説上は①の被害者優先説が有力でしたが,保険会社実務上は②の按分説によっていました。もっとも,被害者が直接請求権を行使した時点で,社会保険者が直接請求権を行使していない場合には,被害者に保険金額を全額支払っていました。

 被害者の直接請求権と老人保健法に基づき代位取得した直接請求権の優劣について,最高裁平成20年2月19日判決が判断しています。
 自賠法16条の被害者の直接請求権は,被害者が自賠責保険の限度で確実に損害の填補を受けられ,被害者の保護を図るという趣旨であり,被害者に未填補の損害があるにもかかわらず,自賠責保険から保険金額全額の支払いを受けられないのは,自賠法16条の趣旨に反する。
 老人保健法に基づく医療費の給付は社会保障の性格を有する公的給付である。被害者の第三者に対する損害賠償請求権を代位取得するのは,医療に関する費用を賄うものではなく,代位行使することで,被害者の未填補の直接請求権が妨げられるのは趣旨に反する。
 以上の理由から最高裁は,両者の直接請求権が競合し,その合計額が,自賠責保険の保険金額を超過する場合は,被害者の直接請求権が優先すると判断しています。 最近,加害者が自転車である交通事故で,加害者に高額の賠償を命じた裁判が話題になっています。もっとも,自転車が加害者の場合も賠償額自体は,自動車の場合と変わりません。自動車は,自賠責保険と任意保険に加入していることがほとんどのため,保険から賠償額が填補されますが,自転車の場合は保険に加入しているケースはあまりなく,賠償額を支払えないという事態が生じます。
 
 自転車が加害者である交通事故で,加害者が保険に加入していない場合,被害者の保険を利用することを考える必要があります。
 
 ①傷害保険
  傷害保険には,傷害総合保険,仏傷害保険,家族傷害保険などいろいろな種類がありますが,基本的なものは,普通傷害保険です。普通傷害保険は,免責事由がない限り,日常生活で生じた事故の大部分はカバーすることができます。
 
 ②交通事故傷害保険
  この保険は,交通事故以外に,乗り物・建物火災による傷害も補償されます。交通事故はについては,自動車事故に限定されず,自動車以外の交通用搭乗中の事故,歩行中の事故なども補償されます。

 ③国内(海外)旅行傷害保険
  旅行中に自転車事故に遭った場合は,補償される可能性があります。

 ④人身傷害保険
  通常の人身傷害保険は,自動車事故によって死傷した場合に補償され,自転車事故の場合には補償されません。最近の人身傷害保険は,自転車を含む交通用具による事故を補償対象としている場合があり,その場合は補償を受けることができます。 自賠法3条の運行供用者責任を追及するには,人身事故が加害車両の「運行によって」生じた交通事故であることが要件の一つです。「運行によって」という要件を運行起因性と呼んでいます。

 車両が路上に駐停車している状態が運行に当たるか?という議論がありました。たとえば,駐停車中の車両に後方から進行してきた車両が衝突したケース,駐停車中の車両のドアが開いたことで後方から進行してきた車両と衝突したケース,荷降ろしや荷積み中の事故などです。

 理論的には,2つの考え方があります。
 ①駐停車自体は運行に当たらず,駐車しようと停車するまでの行為が運行であり,その後は因果関係の問題として扱うという考え方
 ②駐停車自体も運行に当たるという考え方

 裁判例の蓄積により現在は,運行起因性は肯定されています。そして,運行起因性は争点とはならず,過失相殺の問題として議論されています。
 この問題の実質は,駐停車の運行起因性というよりも,駐停車と事故との相当因果関係にあると考えられます。駐停車車両の駐停車に交通事故を誘発する危険性があり,交通事故が誘発された危険が現実化したということが必要となります。

 なお,車両内で幼児を放置し,熱中症で死亡させた事案では,運行性と運行起因性の両方を否定した裁判例があります。 不法行為に基づく損害賠償請求権は,民法724条により,損害及び加害者を知った時から3年で時効により消滅します。
 交通事故で物損のみの場合は,交通事故の日が消滅時効の起算点となることが多く,実務上もほとんど問題になることはありません。
 しかし,人損で治療が長期間に及んだ場合は,交通事故の日には,損害の全体はわからず,ある程度の治療期間経過後に損害の全体が明らかになります。また,受傷から相当期間経過後に事故時に予想できなかった後遺障害現れるケースもあります。

 交通事故により,被害者に後遺障害が残存した場合の損害は,交通事故時に一定内容のものとして発生していると観念されます。これは,一時金賠償方式を採る場合に損害賠償請求権の内容と範囲を確定させる法的な擬制です。
 現実には,事故後,症状の経過を確認しながら治療が行われ,症状固定に至り,後遺障害の内容,程度が確定します。症状固定に達していない段階では,被害者が加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に損害及び加害者を知ったとするには無理があると考えられます。
 仮に,症状固定前に損害賠償請求を行うとすると,損害賠償全体は不確定のまま請求することになり,症状固定までに長期間要する場合もあり,常に被害者に一部請求を強いるのは合理的とはいえません。

 そもそも,交通事故の被害者は医学的知識を十分に有しているとは限らず,症状固定と診断を受けて初めて症状固定の事実を認識し,その時点で損害額の算定が可能になることが多いといえます。
 被害者が加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に損害を知った時と評価できるのは,症状固定の診断を受けた時と考えられます。
   交通事故により,被害者に介護が必要となる後遺障害が残った場合,症状固定後の介護費が損害として認められることがあります(将来の介護費参照)。
 将来の介護費は,積極損害に区分されていますが,将来の予測を含む問題であり,損害額算定の基礎になる事情に変更があることがあります。

 被害者の介護に当たる近親者が高齢の場合,被害者の平均余命まで介護を期待することはできません。裁判実務上は,近親者が就労可能年数の終期である67歳までは近親者の介護で足り,その後は職業付添人による介護の必要性を認める取扱いがなされていると言われています。
 また,現在,近親者が介護に当たっているが,近い将来,職業付添人による介護への変更が予定されている場合,職業付添人による介護へ変更することの蓋然性の立証が必要です。

 被害者が病院,福祉施設等に入所しているが,近親者が将来的に在宅介護を行うことを前提に将来の介護費を請求する場合は,在宅介護への移行する蓋然性を立証する必要があります。
 たとえば,施設退所の時期,施設の性格,被害者の状況,近親者の意向,被害者を受け入れる家庭の状況,在宅介護に向けた準備の状況,在宅介護の可否に関する医師などの意見・判断等を具体的に立証していくことになります。

 なお,施設における介護は永続性が存在しないため,施設入所中の被害者が施設介護の継続を前提に,将来の介護費用,施設利用料等を請求する場合は,将来の施設介護の継続の蓋然性の立証が必要です。そのうえで,介護の内容・程度,付添費の額を立証し,現在の施設利用料等に基づいて将来の施設利用料等の額を立証していくことになります。 自賠責保険に加入していない自動車を運行の用に供してはならないと,自賠責保険の加入を法律上,強制しています。
 しかし,自賠責保険に加入していない自動車が交通事故を起こすことも皆無ではありません。加害者が自賠責保険に加入していない場合,自賠責保険から支払いを受けることはできませんが,政府の自動車損害賠償保障事業から支払いを受けることができます。

 加害自動車に自賠責保険が締結されていない場合だけでなく,ひき逃げ等で運行供用者として責任を負う者が不明な場合にも,政府保障事業から損害の填補を受けることができます。
 政府保障事業は,自賠責保険の補完であるので,支払限度額や保障内容は自賠責とほぼ同一ですが以下の違いがあります。
 まず,政府保障事業は,被害者のための最終的な救済手段という位置づけのため,健康保険や労災保険などの他の給付を受けることができる場合は,填補を受けることはできません。
 自賠責保険は,加害者と被害者が家族の場合でも保険金は支払われます。政府保障事業は,同一家族内の賠償義務者に求償することは実質的な意味がないという理由で,親族間の事故については,原則,填補を受けることはできません。
 複数の自動車の過失による交通事故で,無保険車と自賠責保険に加入している自動車があった場合,被害者は加害者のうち,自賠責保険に加入している加害者の自賠責保険から支払いを受けることができますが,政府保障事業から填補を受けることはできません。複数の自動車すべて無保険車の場合は,政府保障事業から填補を受けることができますが,自賠責保険と異なり,限度額は1台の無保険車の場合と変わりません。 自賠責保険の後遺障害の等級は,別表第1と第2の2つに大きく分かれます。別表第1は介護を要する後遺障害で,第1級と2級の等級があります。
 交通事故により,別表第1の後遺障害が残った場合,自動車事故対策機構法に基づき介護料の支給を受けることができる場合があります。

 介護料の支給は,自動車事故が原因で,脳,脊髄,胸腹部臓器を損傷し,重度の後遺障害があるために,移動,食事,排泄などの日常生活動作について常時又は随時の介護が必要な被害者に支給されます。
 最重要度特Ⅰ種,常時要介護Ⅰ種,随時要介護Ⅱ種の3つの区分があり,障害の程度に応じた介護料が支給されます。支給金額は以下の範囲です。
 ・特Ⅰ種:6万8440円~13万6880円
 ・Ⅰ種:5万8570円~10万8000円
 ・Ⅱ種:2万9290円~5万4000円

 Ⅰ種は,後遺障害の別表第1の第1級,Ⅱ種は別表第1の2級の認定を受けたことが要件です。
 最重度の特Ⅰ種は,脳損傷と脊髄損傷でそれぞれ要件があります。
 ①脳損傷
  自力移動が不可能,自力摂取が不可能,尿失禁状態
  眼球はかろうじて物を追うことはあるが,認識はできない
  声を発しても意味のある発言は不可能
  手を握れ等の簡単な命令にはかろうじて応じることもあるが,それ以上の意思の疎通は不可能
 ②脊髄損傷
  自力移動が不可能,自力摂取が不可能,尿失禁状態,人工介添呼吸が必要

 上記の要件を満たしても,以下にいずれかに該当する場合は,介護料は支給されません。
 (1)自動車事故対策機構の療養施設に入院している。
 (2)特別養護老人ホーム,身体障害者療養施設,重度身体障害者更生援護施設に入所している。
 (3)病院に入院している。
 (4)労災保険の介護(補償)給付の給付を受けた。
 (5)介護保険法の介護給付を受けた。
 交通事故により,車両が損傷した場合,事故当時の車両価格と修理後の車両価格の差額を評価損が,損害として認められることがあります(評価損参照)。

 評価損の算定方法には以下のものがあります。

 (1)減価方式
   事故当時の車両価格と修理後の車両価格の差額を損害とする方法です。

 (2)時価基準方式
  事故当時の車両価格の一定割合を損害とする方法です。

 (3)金額表示方式
  事故車両の種類,使用期間,被害の内容・程度,修理費用などの様々な事情を考慮して,損害を金額で示す方法です。

 (4)修理費基準方式
  修理費の一定割合を損害とする方法です。

 車両の損傷の程度が大きければ,修理費は高額になります。そして,車両の価値も低下も大きくなります。そのため,実務上は,修理費の一定割合とする方法が多いと言われています。初度登録からの期間,走行距離,修理の程度などを考慮し,修理費の3割程度の範囲で認める例が多いとも言われています。
 具体的な算定に際しては,被害車両の車種,走行距離,初度登録からの期間,損傷の部位・程度,修理の程度,事故当時の被害車両と同型車の時価,事故減価額証明書の査定額などが考慮されています。

 評価損は,事故に遭えば必ず認められるわけではありません。外国車や国産の人気車種で初度登録から5年(走行距離6万キロメートル程度)以上,国産車で3年(走行距離4万キロメートル程度)以上を経過すると,評価損が認められにくい傾向にあります。 交通事故により車両が損傷した場合,被害車両の時価をどのように算定するか?が問題となることがあります。
 中古自動車の時価は,被害車両と同一の車種・年式・型,同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場で取得することのできる価額になります。
 
 中古車市場価格の算定には,レッドブックを使用することが一般的です。しかし,レッドブックの掲載期間は10年ほどで,レッドブックに記載のない古い車両が被害車両というケースも存在します。そのような古い車両は中古車市場での流通実績もなく時価を算定する資料がないことが多いです。また,市場価格がほとんどつかないこともめずらしくありません。
 被害車両は,事故前まで実際に走行していたので,車両の価値を0とするのは相当ではなく,一定の価値を認めるべきではないか,交換価値はないとしても使用価値はあるのではないかという問題意識があります。

 裁判例では,レッドブックにより掲載期間の長い「中古車価格ガイドブック」が基準としている平均的な中古車の条件や実績の中古車市場価格を参考に,被害車両の価格を算定したものもあります。
 また,中古車市場における類似する取引例が存在しない場合は,使用価値を認め,一定額を損害として認定したり,車検期間満了日までの日額の認定がなされることもあります。
 交通事故によって,被害車両が損傷した場合,車両の時価をどのように算定するのか?が問題になります(車両修理費参照)。特に納車直後の車両の場合には,経済的全損に至っていなくとも被害者から新車購入価格が損害であるとの主張がなされることがあります。
 しかし,車両自体は新車同様であっても一度,ナンバー登録されると相当程度市場価格が下落してしまうことから,新車購入価格を損害として認めていいのかという問題になります。

 新車購入価格を損害として認める見解は,以下のような理由を挙げています。
 (1) 納車から日が浅く,かつ,走行距離がわずかな場合,新車購入価格による賠償を認めていい。
 (2) 一度,ナンバー登録されると,登録落ちにより自動車の価格が下落するが,そのリスクをなぜ被害者が負担しなければならないのか。
 (3) 新車又は新車同然と評価できる車両が損傷した場合,新車の再調達価格によることが許されるべきである。

 一方,新車購入価格を損害として認めない見解は,以下のような理由を挙げています。
 民法の原則は金銭賠償である事故当時の車両価格を賠償すれば足りる。同種同等中古車を入手することは容易である。そもそも自動車は使用することで価格が著しく下落するので,新車購入価格を賠償させるのは加害者に過大な負担を負わせることになる。また,被害者に,事故当時の価格と新車価格の差額を不当に利得させることになる。

 裁判例は,新車購入価格を損害として認めない傾向にあります。一例として,納車後20分後に事故にあった事案で,一般の車両と同様に公道で通常の運転の用に供されている状態にあった以上,新車の買替えを肯定する特段の事情はないとした東京地裁平成12年3月29日判決を挙げておきます。 交通事故の被害者に遭った場合,通常は加害者側の任意保険会社が示談代行サービスによって,加害者側に代わって被害者に対応します。
 しかし,何らかの事情で加害者側が自動車保険の使用を拒んだり,ひき逃げ等で加害者が不明というケースも出てきます。このようなケースにおいて,被害者自身が保険に加入していれば,自身の保険会社から支払を受けることができる場合もあります。無保険車傷害保険や人身傷害保険などです。

 無保険車傷害保険は,加害者が対人賠償保険に加入していない場合や,加入していても保険金額が不十分な場合や免責事由があり保険金が支払われない場合,加害者が不明な場合などのリスクをカバーする保険です。
 保険の対象は,被害者(被保険者)の死亡又は後遺障害による損害です。損害額は,通常は保険会社の対人賠償保険の支払基準に基づき被保険者と保険会社の協議によります。協議が成立しない場合は訴訟ということになります。

 人身傷害保険は,被害者側の過失を考慮せずに,保険会社の支払基準に基づいて算出された損害額の支払いを受けることができるファーストパーティ型の保険です。保険の対象は,被害者(被保険者)の傷害,後遺障害,死亡による損害です。

 人身傷害保険の補償範囲は広く,通常は無保険車事故や自損事故も含まれます。損害額が人身傷害保険の保険金額でおさまる場合は,無保険車傷害保険は意味をなさないということになります。
 保険会社によっては,自損事故と無保険車事故の補償範囲を人身傷害保険に取り込んでいます。無保険車傷害保険は人身傷害保険の保険金額が無保険車事故による損害額を下回る場合に意味を持つことになり,人身傷害保険を補完するものとなっています。 交通事故の車両損害のうち,代車料(代車費用)は,代車を使用した期間のうち,相当期間に限って認められます。修理に着手するまでに長期間経過したことで代車使用期間が長期に及び,相当期間の有無が争われることがあります。
 
 被害者には,信義則上,損害の拡大を防止する義務があるので,速やかに被害車両の修理や買替えに着手すべき義務があると考えられます。
 したがって,特段の事情もなく,被害者側が修理に着手するまでに長期間要した場合,社会通念上相当と認められる期間に限って,代車使用の相当性が認められることになります。

 加害者が対物賠償保険に加入している場合,保険会社と修理業者との間で,修理方法・内容・単価等について協定が結ばれます。加害者側と修理内容等について見解の相違が生じ,修理等に着手できないような場合,交渉期間も含めて相当な修理期間が判断されることになります。

 被害車両が全損したため,買替えが必要な場合,相当期間は1か月前後と認定される例が多いようです。修理が相当な場合は,実際の修理日数に加えて,修理の着手が遅れるような事情がある場合,その事情が被害者側の事情でない限りは,一定程度,考慮されています。また,交渉期間については,おおむね1か月程度に限定されることが多いようです。
 経済的全損との主張に対し,分損と認定されても修理する意思がないような事案では,相当期間は,買替えに要する期間と修理に要する期間のどちらか短い方に限るとされているようです。 交通事故によって,被害者が運転していた車両が損傷した場合,車両修理費又は車両の時価相当額が損害として認められます(車両修理費について参照)。

 物損は,所有権の侵害に対する賠償なので,通常は,車両の所有者が不法行為に基づく損害賠償請求権者ということになります。
 車両の所有者が被害者自身である場合は問題はありませんが,所有権留保付売買やリース契約の場合は,買主やユーザーに車両の所有権はありません。しかし,実際に車両を使用しているのは,買主・ユーザーであるので,買主やユーザーが加害者に損害賠償請求できないのか?ということが問題となります。

 所有権付留保売買の場合,売買代金も完済前は,車両の所有権は売主にあります。代金の完済前に物損が生じた場合,所有権の侵害により売主が把握していた交換価値が滅失,低下することになります。
 したがって,所有権者である売主が損害賠償請求権を取得します。なお,事故後,売主が損害賠償請求権を行使する前に買主が代金を完済した場合は,買主が当然に売主から損害賠償請求権を取得するとした裁判例があります。

 買主が修理費を支払った場合は,買主がその賠償を求めることができます。修理費の支払いが所有権留保付割賦契約上,買主の負担とされている場合,修理費は買主の損害とした裁判例があります。

 一方,リース契約は,リース業者は契約期間終了後,車両の返還を受けます。所有権留保付売買よりも所有権の実体を有しているといえます。
 したがって,リース業者が損害賠償請求権者になります。

 修理費をユーザーが支払った場合は,ユーザーが損害賠償請求権者となります。リース契約上,修理費用はユーザー負担とされている場合は,修理費の支払いがなされていない場合も,ユーザーが賠償権者となるとした裁判例があります。

 

  交通事故の人損の場合は,被害者が受けた精神的苦痛に対する填補として慰謝料を請求することができます(民法710条)。
 一方,物損の場合には,被害侵害利益が財産権である以上,損害も交換価値・使用価値といった物の価値が失われたという財産的損害に限られ,原則として,慰謝料を請求することはできません。

 ただし,判例は,物損の場合に慰謝料の請求をまったく認めないという立場には立っていません。ごく例外的な場合に限って,物損の場合に慰謝料の請求を認めています。
 財産的権利を侵害された場合に慰謝料を請求するには,被害者の愛情利益や精神的平穏を強く侵害するといった特段の事情が存在することが必要になります。被害者の愛情利益といっても,被害者の個人の極めて特別な愛情まで保護されるわけではありません。

 裁判例で物損の場合に慰謝料を認められた例としては,以下のようなものがあります。
 (1)自宅で就寝中にトラックが衝突し自宅が損傷した(住居の平穏,生活の利便の侵害)
 (2)家族同然に愛情を注いだペットが死亡した
 (3)墓石への衝突事故により墓石が倒壊した

 裁判実務の傾向としては,家屋等の特殊ば物件の損壊やペットの死傷は慰謝料が認められると考えられますが,自動車の損傷そのものは慰謝料は認められないといえます。 交通事故により,被害車両が損傷し,修理が不可能な状態になった場合,車両を買替えることになります。車両を買替えるに際して,通常必要とされる費用は,交通事故と相当因果関係のある損害として,加害者に請求することができます。

 裁判実務上,買替費用として認められる費用としては以下のものがあります。
 ①自動車登録番号変更費用
 ②車庫証明費用
 ③検査登録法定費用
 ④車庫証明法定費用
 ⑤納車費用
 ⑥検査登録手続代行費用
 ⑦車庫証明手続代行費用
 ⑧リサイクル預託金

 なお,⑥,⑦の手続代行費用は,被害者自身が行える手続きを代行してもらうことの報酬であるため,否定する見解もあります。

 裁判実務上,買替費用として認められない費用としては,以下のものがあります。
 (1)自動車税
 (2)自賠責保険料
 (3)増加保険料
 (4)希望ナンバー代行費用

 自動車税と自賠責保険は,未経過分について還付制度が存在するので,被害者としては還付を受ければ,損害を被ることはないことが理由です。
 被害者が契約している車両保険の保険料が事故の発生後に増額されることがあります。車両保険は被害者のリスク回避のために契約されたので,保険を利用するかどうかは被害者に委ねられていることから,交通事故と相当因果関係のある損害ではないと解されています。


 買替費用として限定的に認められた費用もあります。
 自動車取得税は,被害車両と同車種・同型式の車両を再調達価格で調達した場合に,自動車税相当額を損害として認めた裁判例があります。また,被害車両と同等の中古車を取得する際に要する自動車取得税を限度に損害として認めた裁判例があります。
 自動車重量税については,交通事故時の車検証の有効期間の未経過分に相当する金額を損害として認めた裁判例があります。
  交通事故に車両が損傷した場合,被害車両が営業車両で,修理・買替えにより営業ができなかったときは,営業を継続していたであれば得られたであろう利益の喪失が損害として認められることがあります。この損害を休車損や休車損害といいます。

 休車損害が認められる場合,休車損害の金額は,以下のように算定するのが一般的です。
 (被害車両1日当たりの売上高-変動経費)×必要な休車期間

 休車期間は,代車料と同じく修理・買替に必要な相当期間です。代車使用料が損害として認められる場合は,休車損害は認められません。

 タクシー等の営業用車両は,事業主が被害車両以外に代替可能な遊休車を保有していることがあります。遊休車を利用することができる場合は,遊休車を用いて,営業損害の発生を回避することができます。したがって,休車損害は認められません。
 ただし,遊休車を保有していても,遠隔地に保管しているような場合は,遊休車を用いることは容易ではありません。このような場合は,休車損害が認められる余地があります。
 保有車両の実働率,保有台数と運転手の数との関係,運転手の勤務体制,営業所の配置や配車数,仕事の受注体制などの事情を総合考慮し,被害者が遊休車を活用することにより休車損害の発生を回避し得たかどうかを検討することになります。 交通事故によって,車両が損傷を受けた場合,被害車両が物理的又は経済的に修理不能になることがあります。また,フレームなどの車体の本質的構造部分に重大な損傷が生じたため,社会通念上,車両を買い替えるのが相当な場合,事故時の車両価格と売却代金との差額を損害として請求することができます。

 最高裁昭和49年4月15日は,買替差額を損害として請求できるのは,物理的又は経済的に修理不能となった場合以外に,「買替えをすることが社会通念上相当と認められるとき」を含むとしています。そして,買替えが社会通念上相当と認められるときとは,「フレーム等車体の本質的構造部分に重大な損傷の生じたことが客観的に認められることを要する」と判断しています。

 最高裁が言及する車体の本質的構造部分に重大な損傷の生じたことが客観的に認められる場合,修理をすれば自動車として一定の性能を発揮することができます。しかし,事故前の性能までは回復不能な場合をいうと解されます。
 車体の本質的構造部分に重大な損傷が生じたといえるには,修理を行っても実際の走行性能や安全性が車両が通常有すべき性能に達しない状態をいうと解されます。被害車両が新車であるとか,新車と修理された事故車両との安全性の差については考慮されません。

 車体の本質的構造部とは,最高裁のいうフレームの他に,エンジンの交換,車軸等の足回りが挙げられています。 交通事故により車両が損傷し,修理や買替えのために車両を使用することができず,有償で他の車両(代車)を借りる必要が生じます。この代車を借りるために要した費用が代車料です。

 代車料が損害として認められるには,当然ですが,実際に代車を使用したことが必要です。さらに,代車を使用する必要性があることが必要です。
 たとえば,被害者が被害車両以外に車両を保有している場合は,代車の必要性は否定されます。被害車両が営業に用いられていた場合は,原則,代車の必要性は認められます。自家用車の場合,被害車両が通勤,通学のために用いられていた場合は肯定されやすく,趣味やレジャーに用いられていた場合は否定されやすいといえます。
 代替交通機関が存在することのみで,代車の必要性が否定されるわけではありません。使用目的や使用状況に照らして,代替交通機関の利用が可能で相当と認められるときは,必要性は否定されます。

 代車のグレードは,被害車両と必ずしも同一の車種である必要はなく,相応する車種ということになります。これは,代車の使用が被害車両の修理や買替えのために使用できないという比較的短期間の応急的な対応であるからと説明されています。
 代車のグレードについては,被害車両が高級車で被害者が同等のグレードの高級車を代車として使用し,高額の代車料を請求した場合に問題となります。
  交通事故によって,車両が損傷し,修理することで事故前の状態に戻る場合,車両修理費が賠償されれば,交通事故による損害は填補されたことになります。

 しかし,修理を行ったが機能や外観に欠陥が残ったり,事故歴の存在により隠れた瑕疵があるのではないか,又は縁起が悪い等の理由で中古車市場で価格が低下することがあります。
 事故当時の車両価格と修理後の車両価格の差額を評価損といいます。評価損には①技術上の評価損と②取引上の評価損に分けられます。

 技術上の評価損は,修理をしても完全な原状回復ができず,機能や外観に何らかの欠陥が残ることによって生じた評価損のことです。
 裁判実務上,技術上の評価損自体を認めることに争いはないようです。もっとも,自動車の製造技術や修理方法の変化,修理技術の進歩により,技術上の評価損が生じるケースはほとんどないのではないかとの指摘がなされています。

 取引上の評価損は,修理により原状回復がなされ欠陥が残らなかった場合でも,中古車市場で価格が低下した場合の評価損のことです。
 この取引上の評価損を認めるかどうかは争いがありますが,裁判実務上は,一般論としての取引上の評価損を肯定した上で,事案に応じて,評価損の有無,金額を判断していると言われています。
 交通事故による物損の中心は車両損害です。車両損害の中でも中心になるのが,車両の修理費です。車両の修理費は,全損と一部損傷とに分けて考えます。

 ①全損
  車両が修理不能又は修理費が事故時の時価額を上回る場合は,全損と評価します。損害額は,事故時の車両の時価額となります。

 時価額をどのように算定するのか?という問題があります。原則,同一車種・年式・型・使用状態・走行距離などの自動車を中古車市場で取得する際の価格を時価額とします(市場価格方式)。
 課税又は企業会計上の減価償却の定率法や定額法で時価額を算定することは,加害者と被害者の双方に異議がないといった特段の事情がない限り,許されません。
 中古車市場価格の算定に際しては,レッドブックと呼ばれるオート自動車価格月報等を参考にしています。レッドブックには,古い車種や特殊車両は掲載されていないため,中古車の専門雑誌やインターネット等の情報を参考にすることもあります。

 ②一部損傷
  車両が修理可能であって,修理費が事故前の時価相当額を下回る場合は,必要かつ相当な範囲の修理費が損害となります。

 修理費用については,修理工場と保険会社のアジャスターが協議をし,協定が成立すればその額で解決することになります。協定が成立しない場合に紛争になります。
 損傷の部位・程度,修理の程度・方法の相当性が争われることになります。 交通事故による損害は,①生命・身体の侵害に対する人損と②財産の侵害に対する物損の2つに大きく分かれます。
 ①の人損と②の物損は,請求権としては別個のものとして扱われています。また,複数の財産権が侵害されたときは,請求権は侵害された財産権ごとに別個のものと解されています。

 物損の代表で実務上も問題になるのは車両に関する損害です。車両損害には,まず,車両の滅失,毀損から所有者に直接生じた損害である「修理費」・「買替差額」・「評価損」があります。これらの第一次損害から派生した損害で,物から生じ得べかりし利益・便益の喪失の「代車使用料」・「休車損」・「登録関係手数料」・「雑費」・「物損に関する慰謝料」があります。また,場合によっては「営業損害」が認められることがあります。

 車両損害以外に車両の積載物が破損した場合や交通事故により建物が損壊したような場合も物損の損害賠償の対象となります。

 物損も人損と同様,損害賠償の方法は金銭賠償です。車両が滅失・毀損した場合,被害車両と同種同程度の車両自体を賠償するのではなく,金銭で賠償することになります。
 金銭的評価の基準に関して,損害額の算定は原則として不法行為時(=交通事故時)の交換価値を基準とするのが判例です。 交通事故の被害者が加害者に対し自賠法3条に基づき損害賠償請求を行うには,加害者が「運行供用者」であり,被害者が「他人」であることが必要になります。「運行供用者」と「他人」とは相いれない概念ということができます。

 事案によりますが,運行供用者が一人とは限らず,複数の運行供用者が存在することがあります。そのうち,被害運行供用者が加害運行供用者に対して自賠法3条に基づき損害賠償請求をすることができるか?という問題があります。共同運行供用者の他人性の問題です。
 この問題には,2つのリーディングケースとなる最高裁判決が存在します。①最高裁昭和50年11月4日判決と②最高裁昭和57年11月26日の2つです。

 ①の最高裁は,車両の所有者にも運行支配は残っており,運行供用者であるが,被害者も事故時に車両に対する運行支配を有していたので運行供用者に当たると判断しています。そのうえで,所有者の運行支配の程度・態様と被害者の運行支配の程度・態様とを比較し,所有者による運行支配の程度・態様が間接的・潜在的・抽象的であるのに対し,被害者の運行支配の程度・態様が直接的・顕在的・具体的であるので,被害者は「他人」とはいえないと判断しています。

 ②の最高裁は,被害運行供用者の運行支配が加害運行供用者の運行支配の程度と同等の場合,被害運行供用者は「他人」ではないと判断しています。そして,所有者は事故の防止について中心的な責任を負っており,事故車に同乗している以上,事故時に車両を運転していなくても運行支配の程度は「特段の事情」がない限り,加害運行供用者と同程度であると判断しています。

 例外的に「他人」と認められる「特段の事情」について最高裁自身は,加害運行供用者が所有者の運行支配に服さず,所有者の指示を守らなかった場合を挙げています。
 運転代行と運行供用者責任で触れた運転代行契約については最高裁は上記の「特段の事情」に当たると解しています。
  自賠法3条で責任を負う責任主体は運行供用者です。運行供用者に対して損賠賠償請求することができるのは「他人」でなければなりません。
 「他人」とは,運行供用者と運転者以外の者(最高裁昭和37年12月14日判決)ということになります。

 運転代行と運行供用者責任で触れた最高裁平成9年10月31日判決は,運転代行を依頼したXが「他人」に当たるかという点が問題になった判決です。
 最高裁は,「自動車の所有者は,第三者に自動車の運転をゆだねて同乗している場合であっても,事故防止につき中心的な責任を負う者として」,「第三者に対する関係において」自賠「法3条の他人に当たない」。Xは「自動車の運転することによる交通事故の発生の危険を回避するために,運転代行業者であるP代行に本件自動車の運転代行を依頼したものであり,他方,P代行は,運転代行業務を引き受けることにより」,X「に対して,本件自動車を安全に運行して目的地まで運送する義務を負った」。「本件自動車の運行による事故の発生を防止する中心的責任はP代行が負い」,X「の運行支配はP代行に」「比べて間接的,補助的なものにとどまっていたものというべきである」。と述べ,XはP代行に対する関係において自賠法3条の「他人」に当たると判断しました。

  自己のために自動車を運行の用に供する者,すなわち運行供用者は自賠法3条の運行供用者責任を負います。
 
 運行代行を依頼した場合,通常,代行を依頼したXは代行業者Yが運転する自分の自動車に同乗します。代行業者Yが代行運転中に人身事故を起こした場合,同乗していた自動車の所有者であるXが運行供用者責任を負うかのでしょうか?

 現在のところ,この問題に関して,直接の最高裁判決は存在しません。
 Xは飲酒等によって自動車が運転できない状況にあったため,運転代行業者に有償で代行運転を依頼したので,Yの代行運転中は,Xは運行支配を失っていて,運行供用者に当たらないという見解があります。
 しかし,Xも自動車外の歩行者等との関係では運行支配を完全に喪失しないとする見解が有力であると言われています。

 最高裁平成9年10月31日判決は,「自ら本件自動車を運転することによる交通事故の発生の危険を回避するために,運転代行業者であるP代行に本件自動車の運転代行を依頼したものであり,他方,P代行は,運転代行業務を引き受けることにより,被上告人に対して、本件自動車を安全に運行して目的地まで運送する義務を負ったものと認められる。このような両者の関係からすれば,本件事故当時においては,本件自動車の運行による事故の発生を防止する中心的な責任はP代行が負い,被上告人の運行支配はP代行のそれに比べて間接的,補助的なものにとどまっていた」と述べています。最高裁は,Xが完全に運行支配を失っていないとの立場に立っていると考えられます。 強制加入保険である自賠責保険の保険金の支払は,法令に基づいて制定された「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」に基づきなされます。自賠責保険会社は,この支払基準に拘束されます。

 この支払基準に裁判所が拘束されるか?という問題があります。いいかえると,交通事故の被害者の損害額が自賠責保険の支払基準による認定額を超過する場合に被害者が自賠責保険会社に対して,超過分の支払を求めることができるか?という問題です。

 最高裁平成18年3月30日判決は,自賠責保険の支払基準は,訴訟外で保険会社が保険金等を支払う場合の基準であって裁判所に対する拘束力はないと判断しています。
 したがって,被害者が自賠責保険会社に対して,超過分の支払を求めることができるということになります。
 もっとも,運行供用者が任意保険に加入している場合は,自賠責保険の超過分は任意保険から支払われることになるので,自賠責保険会社に超過分の支払を求めるというケースはあまりないといえます。

 被害者と加害者との間の損害賠償請求訴訟において,判決で自賠責保険の支払基準によって支払われた損害賠償額を超える賠償額が認定された場合,保険金額の範囲内であれば,自賠責保険会社に追加支払いの請求をすると,追加支払いがなされるようです。 交通事故によって,被害者が重篤な傷害を負うことがあります。たとえば,脳に傷害を負い,いわゆる植物状態となることもあります。

 被害者が植物状態に陥った場合に,賠償法としては2つ問題が生じます。一つは被害者の生存期間の短縮を考慮すべきではないかという問題です。もう一つは生活費控除の問題です。
 生活費控除の問題については,以前に触れていますので,今回は,生存期間の短縮について触れておきます。

 最高裁昭和63年6月17日判決は,症状固定時9歳の被害者の余命を40歳までと認定した原審の判断を是認しています。
 また,最高裁平成6年11月24日判決も事故時32歳の被害者の余命を症状固定時から12年とした原審の判断を是認しています。
 このように,植物状態に陥った人の余命が通常よりも短いことを損害額の算定においても反映させています。

 しかし,下級審の裁判例は,生存期間の短縮を認めないものが多いと言われています。その理由は,植物状態に陥っても20年以上生存していた例があることや,植物状態を脱する人もいることなどから,科学的知見をもって植物状態であるから生存期間を短縮しなければならないとする根拠に乏しいからと考えられています。

 

  交通事故による損害賠償請求に際し,被害者側にも何らかの過失があれば,過失相殺がなされます。
 加害者がXとYの2名で共同不法行為が成立する場合,被害者Zとの過失相殺をどのようにするのかについて2つの最高裁判決が存在します。

 最高裁平成13年3月13日判決は,交通事故と医療過誤が競合した事案です。最高裁は,「過失相殺は各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべき」と相対的過失相殺の方法によるべきと判断しました。

 最高裁平成15年7月11日判決は,複数の加害者の過失と被害者の過失が競合する一つの交通事故で,交通事故の原因となったすべての過失割合が認定できるときは,絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償について,加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負うと絶対的過失相殺の方法によると判断しています。

 上記の2つの最高裁判決は相反するものではなく両立するものです。15年判決によれば,絶対的過失割合を認定できない場合は相対的過失の方法により,認定できる場合には絶対的過失割合の方法によることになると考えられます。

 13年判決のように,交通事故と医療過誤が競合する異質的,異時的不法行為の場合には,絶対的過失割合を認定することは困難であり,相対的過失相殺によると考えられます。 交通事故で鎖骨を損傷した場合,鎖骨に著しい変形障害を残す場合は,後遺障害12級5号が認定されます。
 
 鎖骨は先天性の欠損や腫瘍・骨髄炎により全摘出しても肩関節の可動性や日常生活動作に重大な支障はないと言われています。
 鎖骨の変形は,その運動障害の程度が通常は軽微であり,労働能力の喪失が認められないことがあります。

 鎖骨の変形障害で後遺障害が認定されるには,変形や欠損が裸体になったときに,明らかにわかる程度のものであることが必要です。頸から肩にかけての容姿を保つという鎖骨の機能が害されているといえます。鎖骨の変形自体が労働能力の喪失に影響するケースは限られると考えられますが,モデル等の容姿が重要な要素である職種の場合は,労働能力の喪失が認められる余地があります。

 前述のように,鎖骨の損傷は,肩関節の可動性や日常生活に重大な支障はないと言われていますが,全く支障がないということを意味するわけではありません。
 鎖骨の変形と肩関節の機能障害がある場合は,後遺障害の等級は併合して認定されますので,鎖骨の変形障害で可動域の制限が4分の3未満の場合に労働能力の喪失の有無が問題になります。
 肉体労働的側面が強い場合には,労働能力に影響を与える場合があることから,労働能力の喪失が認められる余地があります。

 鎖骨の変形とともに疼痛が存在する場合は,職種による影響に大差なく労働に影響を与え,労働能力の喪失を認めることができます。 歯牙障害は,歯科補綴を加えた歯の数によって後遺障害の等級が認定されます(口の後遺障害参照)。
 歯科補綴を加えるとは,現に喪失または著しく欠損した歯牙に対する補綴のことをいいます。喪失した歯に変えて義歯を入れたり,欠損した歯牙を修復するので,補綴が行われれば,歯の機能は回復され,労働能力の喪失は問題にならないと考えられます。

 多くの職業で歯牙障害は,労働能力への直接的な影響はないと考えられ,労働能力の喪失は否定されています。
 しかし,歯牙障害により後遺障害に至らない程度の構音機能に支障が生じることがありえます。そのような場合,被害者が営業職等の他人とのコミュニケーションが重要な職業に従事していれば労働能力の喪失が認められる余地があります。
 また,歯牙障害は,歯を食いしばって力を入れるような仕事に支障が生じる可能性があります。そのことが就労機会や就労可能な職種を狭めたり,労働の意欲を低下させるということも考えられます。このように被害者がスポーツ選手や肉体労働的側面の強い職種に従事している場合には労働能力の喪失が認められる余地があります。

 歯牙障害による労働能力の喪失が否定され,後遺障害による逸失利益が認められない場合は,後遺障害慰謝料の増額事由として斟酌されることがあります。 交通事故の損害賠償請求をするにあたり,加害者に賠償責任があることを立証するための資料,被害者の損害を立証するための資料等様々な資料が必要になります。その中でも,交通事故証明書は,基本的な資料ということができます。

 交通事故証明書は,自動車安全運転センターの都道府県方面事務所長が警察から提供された証明資料に基づいて交通事故の事実を確認したことを証明する書類です。
 事故の日時・発生場所,当事者の住所・氏名・生年月日,車両番号,自賠責保険会社,事故態様等の交通事故を特定するのに必要な事項が記載されています。

 非接触事故の場合も加害者に一定の責任が認められる場合には誘引事故として加害者を特定した交通事故証明書の交付を受けることができます。

 加害者の責任が明らかではない場合には,事故の相手方を「路面」とするなどして,交通事故証明書を受けれることがあり,交通事故があったことの事実の証明としては使えることができます。
 たとえば,自損事故の場合も警察に報告を行うことで交通事故証明書の交付を受け,傷害保険金の請求等の資料とすることが可能となります。

 交通事故証明書は,自動車安全運転センターの事務所へ行けば,窓口で即日交付が受けられますが,警察署に郵便振替申請用紙が置いてあり,必要事項を記入し郵便局で振替手続きをすれば郵送で取得することができます。交通事故の当事者本人は,自動車安全運転センターのHPから申請することもできます。
 
 なお,交通事故証明書の保存期間は5年間です。

徐行中に後方から追突され,14級の後遺障害を負った40代男性の事例

依頼者

40代男性
 

委任の経緯

別の事件の受任中に事故に遭った依頼者が保険会社の担当者と交渉がわずらわしいので委任
 

事故の概要

自動車で徐行中に被害車両に後方から加害車両が衝突(自動車と自動車)

過失割合加害者:被害者=100:0

 

後遺障害診断書における傷病名

頚椎捻挫,左肩・左膝打撲
 

後遺障害の等級認定

14級
頚椎捻挫後の首の痛み,右手掌部の過敏等の症状について後遺障害認定

 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

手続き

自賠責へ被害者請求,示談交渉
 

取得金額

合計371万9386円
自賠責保険:114万9212円
任意保険:257万0174円

 

コメント

事故直後から受任し,自賠責への被害者請求,任意保険会社との示談交渉を行いました。事故直後から弁護士に依頼することで,被害者が直接,保険会社との対応する必要がなくなり,治療に専念することができるようになります。任意保険会社との示談交渉の結果,任意保険会社から257万0174円を取得することができましたが,保険会社が当初,社内基準として提示してきた額は約87万円でした。


交通事故の被害に遭われた場合は,なるべく早期に弁護士に相談することをお勧めします。
 

 交通事故で頭部・顔面・頸部や上肢・下肢以外の日常露出する部位に醜状痕が残った場合,残った醜状痕の面積,長さに応じて後遺障害が認定されます(醜状の後遺障害参照)。

 外貌醜状は,デスクワークや肉体労働などの通常の労働に影響を及ぼさないことから,後遺障害による逸失利益は発生しないとされてきました。
 しかし,特に被害者が女性でモデル等の容姿が重視される職業に従事している場合には,業務に支障が生じることが想定されます。男性でも営業職やウェイター等の容姿がある程度重視される職業に従事している場合には,内勤への異動により昇進が遅れる,転職の際に選択できる職業の幅が狭まるといった支障が生じることがあります。
 このよぷに,外貌醜状が労働に直接影響を及ぼす場合は,自賠責の等級表の労働能力喪失率を参考に,被害者の職業,年齢,性別等を考慮して外貌醜状が労働に与える影響を考慮して労働能力喪失率を決定することになります。

 外貌醜状によって労働への直接的な影響は認められないが,周りの視線が気になる等により対人関係,対外的活動に消極的になり間接的に労働へ影響を及ぼす場合には,後遺障害慰謝料の増額事由として考慮されることがあります。増額される慰謝料額は100万円から200万円程度の幅で行われることが多いと言われています。 交通事故によって,後遺障害が残存した場合,後遺障害による逸失利益を損害として賠償請求することができます。

 後遺障害による逸失利益は,
 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
 によって,算定します。

 後遺障害は,概念的には,症状が永久に残存し就労可能期間中に改善されることはないと考えていますので,労働能力喪失期間の終期は死亡逸失利益と同じということになります。労働能力喪失期間の終期は通常67歳までです。
 しかし,後遺障害軽度の場合,労働能力喪失期間が短縮されることがあります。その典型が,むちうちです。

 大阪地方裁判所の損害賠償の算定基準では,むちうちの場合の労働能力喪失期間は,後遺障害の等級に応じて,以下の期間が目安とされています。
 14級:2年から5年
 12級:5年から10年

 むちうちの場合に,労働能力喪失期間が他の後遺障害より制限されるのは,馴化,つまり,慣れによって労働能力が回復する可能性があることが理由として挙げられています。
 裁判実務上は,14級の場合は5年,12級の場合は10年と認定されることが多いようです。

 むちうち以外の神経症状の場合にも,むちうちと同様に労働能力喪失期間が制限されるかが争点になります。 交通事故で後遺障害が残存した場合,後遺障害の等級に応じて後遺障害慰謝料が損害として認められます。
 後遺障害が加重障害の場合は,逸失利益と同じく,後遺障害慰謝料の算定についても争いがあります。

 決まった算定方法は確立されておらず,裁判例では以下のような算定方法がとられています。
 ①加重後の等級に相応する慰謝料額から既存障害の等級に相応する慰謝料額を差引く。
 ②既存障害を寄与度減額として考慮する。
 ③逸失利益の算定の際の労働能力喪失率から後遺障害等級を逆算し,それに近い金額とする。
 ④前回の交通事故で受領した慰謝料額を差引く。
 
 加重障害の場合の後遺障害による逸失利益を否定した事案では,慰謝料の増額事由とした裁判例があります。また,加重障害の後遺障害のみを前提とした場合とほぼ同額とした裁判例もあります。
 ただし,慰謝料の算定においては,裁判基準は存在しますが,いろいろな事情を考慮して慰謝料額を決定するので,加重障害の後遺障害のみを前提とした場合とほぼ同額とした裁判例も既存障害を何らからの形で既存障害を考慮している可能性はあります。

 なお,別部位・別系列の後遺障害の場合には,既存障害による減額がなされないことが多いといえますが,既存障害が現症の後遺障害の程度に影響したと認められる場合は,寄与度減額がなされることがあります。 後遺障害が加重障害の場合の逸失利益の算定には,①基礎収入,②労働能力の喪失率,③素因減額と同様に損害額の減額事由になるかという点が問題となります。

 基礎収入については,以下の考え方があります。
 (1)交通事故当時(通常は事故前年)の実収入を基礎収入とする。
 (2)賃金センサスの平均賃金から一定額を減額した額を基礎収入とする。。
 (3)賃金センサスの平均賃金をそのまま基礎収入とする。

 上記の基礎収入の考え方は,既存障害をどのように考慮するのか?という問題です。労働能力の喪失率において既存障害をどのように評価するのか?という問題とも関連してきます。
 (1)の場合は,被害者の実収入は既存障害があることを前提とした収入といえるので,(1)と(2)は基礎収入において既存障害を評価しているということができます。
 (3)の場合は,障害のない人の統計値であることを前提とすると,基礎収入において,既存障害を評価していないということができます。

 労働能力の喪失率についても以下の3つの考え方があります。
 a喪失率を引き算したもの
 b独自の喪失率を採用する
 c現症の喪失率をそのまま採用する

 以上を前提に,加重障害の逸失利益の算定に際しては,裁判例に照らして以下の3つの方式が考えられますが,議論のあるところで定説は確立されていません。
 ⅰ)交通事故による独自の労働能力喪失率を認定し,事故直前の実収入を基礎収入とする。
 ⅱ)加重後の逸失利益から既存障害のみによる逸失利益を控除する。
 ⅲ)交通事故後の逸失利益を既存障害を考慮せず算定し,既存障害を理由として寄与度減額をする。

  交通事故の損害は,①生命・身体の侵害に対する人損と②財産の侵害に対する物損の2つに大きく分けることができます。
 人損と物損は,自賠法の適用があるかどうか等の違いがあり,自賠法は人損にしか適用されません(自賠法3条)。自賠責保険は自賠法の運行供用者責任とリンクしているため,物損の場合には保険金は支給されることはありません。

 物損は財産の侵害であり,車両の損傷による損害が典型です。通常,物損と人損の区別は明確です。
 ところで,自賠法3条の「身体」とは,厳密に被害者の肉体を意味するものではなく,日常生活に不可欠なものとして身体に密着させているものは人損として自賠法が適用されると解されています。
 具体的には,義肢,義足,義眼,コルセット,松葉づえ,補聴器,メガネ,コンタクトレンズです。これらは自賠責保険の支払基準に明記されています。

 また,日常使用する着衣や靴(高価でないものに限る)が人損として扱われる場合もあります。
 腕時計については,人損とする裁判例(大阪地裁昭和48年6月22日判決)と物損とする裁判例(東京高裁昭和48年10月30日判決)と見解が分かれています。なお,指輪,ネックレス,イヤリングなどの宝飾品は物損として扱われます。
 交通事故の損害賠償請求の争点の一つに過失相殺があります。別冊判例タイムズ38号の「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」に事故類型ごとに過失相殺率がまとめられていて,実務上も参考にされています。
 別冊判例タイムズの過失相殺率は接触事故を前提にしているため,非接触事故の場合,保険会社が別冊判例タイムズと異なる過失相殺率(被害者に不利に修正している)を主張していくることがあります。

 接触事故か非接触事故かは結果論にすぎず,交通事故の原因について加害者と被害者のどちらに,どの程度の責任があるかという原因論としての過失相殺の問題とは次元が異なります。
 したがって,非接触であること自体は帰責性を基礎づけるものではなく,非接触であること自体が直ちに過失相殺率に影響を及ぼすことはないと考えられています。

 裁判例の中には,非接触事故の過失相殺率を別冊判例タイムズの過失相殺率から修正したものも存在します。
 判決において過失相殺率の考慮要素として,①被害者の事故回避措置の適切性,②加害者による被害者の走行妨害の程度や③加害者の判断の不適切性の程度が考慮されています。このうち,②と③は接触事故の場合も過失相殺率の考慮要素になるので,非接触事故特有の過失相殺率の考慮要素としては①被害者の事故回避措置の適切性ということになります。

 被害者の事故回避措置の適切性については,時間的・空間的・心理的諸状況を総合考慮して判断することになります。そして,被害者のとった事故回避措置が当該事故状況下で通常人がとるであろう事故回避措置を逸脱するのもであった場合には不適切性の程度に応じて過失相殺率が被害者に不利に修正されることになると考えられています。 加重障害に関する説明の中で,「同一部位」や「同一系列」という言葉が出てきたので,後遺障害の等級認定表について触れておこうと思います。

 障害等級表は,身体を解剖学の観点から「部位」に分けます。そして各部位ごとに身体障害を機能面に重点を置いた生理学的観点から一種類又は数種類の障害群に分けます。これを「系列」といいます。さらに,各障害は労働能力の喪失の程度に応じて一定の順序のもとに配列しています。これを「序列」といいます。

 部位は,眼,耳,鼻,口,神経系統の機能又は精神,頭部・顔面・頸部,胸腹部,体幹,上肢,下肢に分けられています(後遺障害の種類についても参照)。

 系列は部位を35種の系列に細分化しています。大きくは器質的障害,機能的傷害に分かれます。上肢を例に説明します。
 上肢の器質的損傷としては①欠損障害,②変形障害,③醜状障害があります。器質的損傷とは別に機能障害があります(上肢(肩,腕)の後遺障害も参照)。
 系列には,みなし系列というものが存在します。同一部位に系列の異なる複数の障害が生じた場合は同一又は愛関連するものと取扱うことが認定実務上合理的であると考えられ,同一系列とみなして取扱われます。
 みなし系列の具体例として挙げられているのものとしては,同一上肢の機能障害と手指の欠損又は機能障害があります。

 序列はいわゆる等級のことで,労働能力の喪失の程度に応じて1級から14級までに区分されます。この同一系列の障害相互間における等級の上位,下位の関係を序列と呼んでいます。
 障害等級表に定めがない身体障害や同一系列に2つ以上の障害が存在する場合の等級の認定は,序列を考慮して行われるということになります。 交通事故の被害者が加害者に対して行う損害賠償請求権は不法行為に基づくものです。不法行為に基づく損害賠償請求権は,損害の発生と同時に何らの催告をしなくても遅滞に陥ります(最高裁昭和37年9月4日判決)。交通事故の場合は,事故日から遅滞に陥り,遅延損害金が発生します。

 交通事故の場合,加害者へ損害賠償請求を行うまでに,被害者は自賠責保険や任意保険からの内払等何らかの給付を受けていることがほとんどです(損益相殺参照)。
 民法491条は,弁済によって債務の全部を消滅させれないときは,費用→利息→元本の順に充当します。
 
 自賠責保険については,特段の主張がないときは,元本に充当する裁判例が多いと言われています。
 しかし,最高裁平成16年12月20日判決は,事故時から自賠責保険金等の支払日までの間の遅延損害金が既に発生していたのであるから,自賠責保険金等が支払時期における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは,遅延損害金の支払債務にまず充当されるべきと判断しました。
 したがって,遅延損害金から充当すべきとの主張がなされれば,遅延損害金から充当し,その残額が元金に充当することになります。

 自賠責保険以外の損益相殺については,任意保険からの支払いも含めて,損害額元本から充当していることがほとんどです。
 なお,上記の最高裁平成16年12月20日判決は,自賠責保険のみならず,遺族厚生年金等についても遅延損害金から充当すべきと判断しています。 自賠責保険の後遺障害の等級認定は,労災保険の障害補償給付の障害の等級認定基準に準じて行われます。

 後遺障害の等級認定に加重障害という制度が存在します。労災保険では,「既に身体に障害のあった者が業務災害(又は通勤災害)によって同一の部位に障害の程度を加重した場合は,加重した限度で障害補償を行う」としています。
 自賠責施行令も「既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによって同一部位について後遺障害の程度を加重した場合」とほぼ同様の定義をしています。

 たとえば,交通事故で頚椎捻挫の傷害を負い,後遺障害として14級9号が認定された被害者が数年後,別の交通事故で再度頚椎捻挫の傷害を負ったとします。このような場合,加重障害となるので,今回の交通事故で後遺障害の程度が12級13号と評価されなければ,非該当ということになります。
 つまり,新たに障害が加わった結果,障害等級表上,現存する障害が既存障害より重くなった場合のみ加重障害として等級が認定されます。

 既存障害は,先天性・後天性を問わず,また,交通事故によるものかどうかを問いません。また,同一部位とは,同一系列を意味するので,まったく同一の部位の場合に限定されません。

 加重障害の場合,自賠責保険の支払いは,加重後の等級に応じる保険金額から既にあった後遺障害の等級に応じる保険金額を控除した額が支払われます。
 たとえば,既存障害11級7号,加重障害8級2号の場合の自賠責保険金額は,
 819万円(8級の保険金額)-331万円(11級の保険金額)=488万円ということになります。

 加重障害は,後遺障害による逸失利益の算定方法と後遺障害慰謝料の算定方法が問題となります。

  交通事故の被害に遭った場合,被害者が弁護士費用特約に加入していれば,弁護士費用を保険会社が負担してくれます(無条件ではない)。
 被害者自身が弁護士費用特約に加入していなくとも,弁護士費用特約の被保険者である場合があります。

 ある保険会社の弁護士費用特約の約款では,以下に該当する者は被保険者と規定しています(※細かい規定は省略していますので,必ず約款をご確認ください)。

 ①保険契約者
 ②保険契約者の配偶者(内縁を含む)
 ③保険契約者又はその配偶者の同居の親族
 ④保険契約者又はその配偶者の別居の未婚の子

 ⑤自動車保険及び付帯する特約に規定する所有自動車に搭乗中の者
 ⑥①~④に該当しない者で,①~④に該当する者が運転者として運転中の所有自動車以外の自動車に搭乗中の者

 ⑦①~⑥以外の者で所有自動車の所有者
 ⑧①~⑦以外の者で①~④に該当する者が運転者として運転中の所有自動車以外の自動車の所有者

 以上のように,弁護士費用特約の被保険者の範囲は非常に広いと言えます。被害者が家族であれば,契約車両に搭乗していなくても,弁護士費用特約の被保険者となります。他人であっても,契約車両に搭乗していれば弁護士費用特約の被保険者となります。

 交通事故に遭われたら,ご家族や同乗していた自動車の運転者が弁護士費用特約に加入していないかどうか,確認してみるといいでしょう。 交通事故の被害者が幼児,生徒,学生の場合,逸失利益の算定に当たって,基礎収入をどのように算定するのかが問題となります。

 三庁共同提言によれば,原則として賃金センサスの学歴計・全年齢平均賃金を基礎収入として算出します。
 ただし,被害者が大学生や大学を進学する蓋然性が認められる場合は,賃金センサスの大学卒・全年齢平均賃金を基礎収入として逸失利益を算出します。

 年少女子の基礎収入については,かつては,女性労働者の学歴計・全年齢平均賃金を基礎収入として算出する裁判例が多くありました(男女の賃金格差は生活費控除率で調整)。
 しかし,最近は,男女の賃金格差が解消されていることなどから,男女を合わせた全労働者の学歴計・全年齢平均賃金を基礎収入とする裁判例が増加しています。
 大阪地方裁判所の算定基準では,年少女子の逸失利益は,原則として,男女を合わせた全労働者の学歴計・全年齢平均賃金を基礎収入とするとしています。
 
 死亡逸失利益の算定においては,生活費控除を行います。生活費控除率は,一家の支柱と女性は30%~40%とされています。
 年少女子の基礎収入を男女を合わせた全労働者の平均賃金とする場合には,男性の生活費控除率が50%であることとの均衡上,生活費控除率を45%程度とするというのが,大阪地方裁判所の算定基準です。
  運転者の好意又は無償で同乗していた自動車が交通事故に遭い,同乗者が損害を被ったケースで,運行供用者や運転者の同乗者に対する賠償責任を制限できるかという問題があります。

 かつては,自賠法3条の「他人」とはいえないのではないかという議論がありました。しかし,最高裁昭和42年9月29日判決が,同乗する自動車の運転者との関係では,好意・無償同乗であっても,他人性が否定されないことを明らかにしました。

 もっとも,同乗者自身が自動車の所有者であり自己の自動車を運転させていたケースでは,同乗者は運行供用者であり,同乗者の運行支配が直接的,顕在的,具体的である場合は,他人性は否定させることになります。

 
 好意同乗,無償同乗の問題は,自賠責法3条の他人性を前提に,なお,好意同乗,無償同乗であることが賠償責任の減額事由になるのかという問題ということになります。

 好意同乗,無償同乗を以下のような類型に分けて考えるのが一般的です。
 ①単なる好意同乗,無償同乗
 ②事故発生の危険性が高い客観的事情(運転者が無免許,飲酒,疲労,薬物濫用等)があることを知っていたにもかかわらず,あえて同乗した
 ③同乗者が事故発生の危険が増大するような状況を作った(スピード違反をあおった等)

 ①の単なる好意同乗,無償同乗に関しては,賠償責任を減額する根拠とはなりません。しかし,②と③のような場合は,過失相殺規定の適用又は類推適用により,賠償責任は減額されることになります。 交通事故により,被害者が死亡した場合,被害者の相続人が損害賠償請求権の行使主体になります。また,相続人以外にも民法711条に基づき被害者の父母,配偶者,子は固有の慰謝料を請求することができます(→近親者の慰謝料請求)。

 被害者の内縁の配偶者や,相続を放棄した者などは,固有の慰謝料を別として,加害者に損害賠償請求権を行使できないことになります。
 しかし,被害者の相続人として損害賠償請求権を有しない場合でも,被害者によって扶養を受けていた場合には,扶養利益の賠償を請求することができます。
 扶養利益の喪失による損害額は,相続によって取得する死亡者の逸失利益の額と同じ額になるわけではありません。被害者の生前の収入,被扶養者の生計の維持に充てられていた部分などの具体的事情に応じて損害額が認定されます。
 被害者の内縁の配偶者と相続人との関係については,被害者の逸失利益のうち,扶養利益部分が内縁の配偶者に帰属し,残りが相続人に帰属することになります。

 なお,扶養利益の賠償を請求できる者が,扶養利益について填補がなされたときは,その金額は相続人に填補すべき逸失利益の額から控除されます(最高裁平成5年4月6日判決)。
  会社の取締役などが,交通事故で死亡又は負傷した結果,会社に損害が生じることがあります。たとえば,予定していた商談に出席できずに契約を締結できなかったというようなケースです。このような直接の被害者ではない会社に生じた損害を間接損害又は企業損害といいます。

 不法行為による損害賠償請求権を行使できるのは,直接の被害者です。原則として,会社は,固有の損害である間接損害について加害者に請求することはできません。
 しかし,会社と交通事故の被害者である役員等の間に,経済的な一体性が認められる場合には,例外的に,会社が加害者に間接損害について請求することができます(最高裁昭和43年11月15日判決)。

 経済的一体性については,資本金,売上高,従業員の数などの企業規模,直接の被害者の地位,業務内容,権限,直接の被害者の財産と会社の財産の分別の有無,株主総会・取締役会等の開催状況などを考慮して判断します。

 
 会社の役員等が交通事故に遭った場合に,会社が被る損害には,固有の損害である間接損害の他に反射損害があります。
 交通事故で負傷した役員や従業員が休業し就労していない間も会社が給与を支払っていた場合,反射損害の問題になります。
 本来,休業損害として直接の被害者が加害者に対して請求できる損害を会社が肩代わりしていることになるので,会社が加害者に対し損害として請求することができると考えられています。
  交通事故で傷害を負い,後遺障害が残存した場合,通常は,後遺障害による逸失利益を損害として加害者に請求することができます。

 後遺障害による逸失利益は,以下のように計算します。
 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

 労働能力喪失率は,被害者の労働能力がどの程度喪失したのかの認定判断によることになります。一般的には,後遺障害が自賠責施行令の別表第1及び第2のいずれに該当するかを参考に,被害者の職業,年齢,性別,後遺障害の部位・程度,事故後の稼働状況,所得の変動等を考慮して判断されます。

 自賠責施行令の別表は,労災保険の障害補償給付で用いられるものと同じ内容で,自賠責保険会社に対する被害者請求等の支払いにおいては,後遺障害の等級認定は,原則として労災の基準に準じて行われます(参考:後遺障害の等級と労働能力喪失率の関係)。

 裁判実務においても,自賠責における後遺障害の認定判断がおおむね尊重されています。しかし,自賠責の支払基準は裁判所を拘束しませんので,裁判所は,自賠責で認定された等級が妥当ではないと判断した場合は,上位の等級を認定することも,下位の等級を認定することもできます。
 また,労働能力喪失率についても,自賠責よりも高く認定することも,低く認定することもできます。
 ただし,自賠責で認定された後遺障害の認定について,加害者から反証がない限りは,裁判所は,自賠責と同じ認定をすることが多いようです。

 このように,自賠責と裁判所との判断が異なることがあるのは,よって立つ制度の違いによるものといえます。
 自賠責が準用している労災保険における労働能力とは,一般的な平均的労働能力をいい,個々の労働者の年齢,職種,利き腕や知識,経験等は加味されません。
 一方,裁判所は被害者に現実にどれだけの損害が生じ,それを金銭的に評価するといくらになるのか?を認定することになります。労働能力の喪失率は損害額の算定の一環であり,上記に挙げたような諸事情を考慮して判断することになります。 交通事故の被害者の損害賠償額が減額されるのは,被害者に過失があり,過失相殺がなされる場合と損益相殺の対象となる給付を被害者が受給した場合などがあります。

 過失相殺と損益相殺の両方がなされる場合,先に過失相殺とするのか?それとも損益相殺をするのか?が問題となります。先に損益相殺する方が被害者の損害額は多くなり,被害者に有利になります。

 自賠責保険,政府保障事業,任意保険については,先に過失相殺します。労災保険についても先に過失相殺をします。

 健康保険法,国民健康保険法による給付(健康保険)は,過失相殺前に被害者の損害額から控除するというのが,裁判実務です。
 交通事故の治療に健康保険を利用した場合,被害者自身の負担は3割となります。残りの7割は健保協会等が医療機関に支払うことになります(健保協会は支払った7割を加害者に請求できることになります)。このとき,先に損益相殺をするので,結局,治療費としては,被害者自身が負担した3割を損害額として,その後に過失相殺をすればいいということになります。

 しかし,最高裁平成17年6月2日判決は,政府保障事業によるてん補額の算定に際し,国民健康保険法の葬祭費の給付額を過失相殺後に控除すべきと判断しました。この判決は,自賠法の解釈に限定した判断であり,健康保険法による給付の損益相殺と過失相殺との先後関係について判断したものではありませんが,その後の見解は分かれているようです。

 国民年金,厚生年金等の年金については,裁判例が分かれており,実務上,見解が統一されていないと言われています。 死亡事故の場合,被害者の相続人や民法711条の近親者が,加害者に対して,損害賠償請求することができます。損益相殺の対象となる給付をそのうちの一人が受給していた場合,損害額からどのように控除するのか?というのが,損益相殺の主観的範囲の問題です。

 結論としては,損益相殺は,各種給付の受給権者についてのみ行い,その者の損害額から控除するということになります。

 リーディングケースとなったのは,最高裁昭和50年10月24日判決です。国家公務員等退職手当法による退職手当と国家公務員共済組合法による遺族年金,国家公務員災害補償法による遺族補償年金の損益相殺の主観的範囲が問題となりました。
 上記の各受給権者は,受給資格のある遺族のうち所定の順位にある者と定められており,遺族が妻と子の場合は,受給権者は死亡した者の収入により生計を維持していた妻のみと定められています。遺族の加害者に対する損害賠償額の算定にあたって,給付相当額は妻の損害賠償債権からのみ控除すべきであり,子の損害賠償債権から控除することはできないと最高裁は判断しました。
 受給権者ではない遺族が事実上受給権者から各給付の利益を享受することがあっても,それは法律上保障された利益ではなく,受給権者でない遺族の損害賠償債権額から享受利益を控除することはできないというのが,その理由です。

 その後,最高裁平成16年12月20日判決が,遺族厚生年金等の損益相殺の主観的範囲について,同様の判断をしています。 損益相殺については,損益相殺の対象となる給付に該当したとして,いつまでの給付が控除されるのか?という時的範囲の問題があります。

 たとえば,交通事故で被害者が死亡した場合,交通事故が業務上災害であれば,遺族は労災保険から遺族補償給付の支給を受けることができます。
 労災保険の遺族補償給付には,遺族補償年金と遺族補償一時金があります。遺族補償年金は,年金ですから受給権が存在する限り,支給を受けることができます。
 損益相殺に当たり,将来給付を受けるべき年金額についても金額を算定し,損害額から控除する必要があるのか?というのが,時的範囲の問題です。

 最高裁平成5年3月24日大法廷判決は,地方公務員等共済組合法による遺族年金について,すでに支給を受けた分と支給を受けることが確定した分に限り控除すべきで,将来の支給未確定分は控除する必要がないと判断しています。

 したがって,損益相殺の時的範囲については,現実に履行された場合又は同視できる程度に存続及び履行が確実である場合に限って控除の対象となるということになります。
 年金については,事実審の口頭弁論終結時に具体的な支給額が確定している分までが損益相殺の対象となります。

  被害者が,交通事故により,死亡したり,後遺障害が残存した場合は,加害者に対して損害の賠償を請求することができます。他方で,公的な給付や保険から支払いを受けることができる場合がめずらしくありません。

 被害者や遺族が,損害賠償と同質の利益を二重に受けることは公平性を欠きます。また,被害者が第三者から利益を享受し,その限度で第三者が被害者の損害賠償請求権を代位取得することがあります。
 このような場合に,損害額から利益相当額を控除することを損益相殺と呼びます。

 何が損益相殺の対象となるのかは,給付の趣旨,給付と損害賠償との調整規定の有無,損害との同質性,給付に関する対価性の有無などを考慮して判断されます。

 判例または裁判例で控除の対象となると判断されたものを挙げておきます。
 ①自賠責保険
 ②政府保障事業
 ③任意保険
 ④労災保険
 ⑤遺族年金
 ⑥健康保険法等の療養の給付
 ⑦介護保険法による給付
 ⑧人身傷害保険

 控除の対象とならないと判断されたものに,以下のようなものがあります。
 ①搭乗者保険
 ②生命保険
 ③生活保護法における扶助費
 ④香典
 ⑤加害者からの見舞金
 ⑥養育費

 損益相殺については,何が損益相殺の対象となるのか?という問題のほかに,いつまでの給付を控除するのか?,どの相続人から控除すべきか?,過失相殺との先後関係という問題があります。 交通事故により,被害者に後遺障害が残存したが,現実に収入が減少していない場合に,後遺障害による逸失利益が認められるかという問題があります。
 
 この問題は,損害の概念という不法行為制度の根本的な問題にかかわります。
 損害をどのようにとらえるかについては,判例は厳格な差額説には立っておらず,労働能力の喪失による損害を被害者が現に従事している職業との関連で差額説的な考慮をしながら評価していると理解されています(→損害の概念参照)。

 現在の判例の立場を前提とすると,後遺障害の程度が軽微で,被害者が従事する職業の性質等から,将来における収入の減少が具体的に認められないときは,逸失利益は否定されることになります。
 一方,交通事故が原因で現実に労働能力が低下し,被害者に減収が生じていないのが,被害者の不断の努力や使用者の温情によるものであって,それが長期間継続するか定かではない場合には,逸失利益を認めることができると考えられます。

 裁判例で考慮されている要素は,おおむね以下のようなものです。
 ①減収の有無
 ②昇進,昇給等における不利益
 ③業務への支障
 ④退職・転職の可能性
 ⑤勤務先の規模・存続可能性等
 ⑥被害者の努力
 ⑦勤務先の配慮等
 ⑧生活上の支障 交通事故による損害賠償請求に当たっては,被害者は,加害者の責任原因を主張・立証する必要があります。そのため,事故態様を具体的に主張・立証することになります。
 事故態様を把握するのに,刑事記録を参照することは有用です。実際,事故態様の立証資料としては,刑事記録が最も直接的であり,有用な証拠といえます。

 交通事故の刑事記録には,実況見分調書,診断書,車両の写真,供述調書などが作成されます。刑事記録については,刑事訴訟(裁判)が確定している場合は,誰でも刑事記録を閲覧することができます。被害者等利害関係人は,刑事記録を謄写することもできます。

 死亡事故や被害者が重大な傷害を負ったというな事故以外は,加害者が不起訴になることが通常です。不起訴記録に関しては,被害者は実況見分調書を閲覧・謄写することができます。しかし,供述調書に関しては,民事訴訟において送付嘱託の方法によるということになります。

 供述調書の送付嘱託は,①供述調書の内容が民事訴訟の結論を直接左右する重要な争点に関するものであって,かつ,その争点に関するほぼ唯一の証拠であるなど証明に欠くことができないこと,②供述者が死亡等により民事訴訟において供述することができない場合又はその供述調書の内容が供述者の民事裁判での証言内容と実質的に相反する場合であること,③供述調書の開示により,捜査・公判への具体的な支障又は関係者の生命・身体の安全を侵害するおそれがなく,かつ,関係者の名誉・プライバシーを侵害するおそれがあるとは認められない場合というのを検察庁では,開示要件としています。

 なお,捜査中の刑事記録については,現在のところ,閲覧・謄写することはできません。 交通事故で傷害を負った被害者が,症状固定後,後遺障害が残存したものの,職場に復帰し事故前と同じ収入を得ている場合があります。
 被害者に減収が生じていない場合にも,後遺障害による逸失利益が損害として認められるか?という問題があります。
 
 上記の問題は,不法行為制度の下,賠償の対象となる損害とは何かという根本的な問題にかかわります。
 損害のとらえ方は,主たるものに,①差額説と②労働能力喪失説があります。
 ①差額説は,交通事故がなければ被害者が得られたであろう収入と,事故後の現実収入との差額が損害であるという考え方です。差額説を徹底すれば,交通事故後に減収が生じてなければ,そもそも損害はないということになります。
 ②労働能力喪失率は,損害を労働能力の喪失・減少を財産的損害ととらえます。交通事故後の収入の減少の有無は,労働能力の喪失・減少の程度を評価する事情にすぎないと考えます。

 最高裁昭和42年11月10日判決は,交通事故後に現実に収入の減少がない場合の損害賠償請求を認めませんでした。
 その後の最高裁昭和56年12月22日判決は,結論としては,逸失利益を否定しています。しかし,傍論にすぎませんが,「事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別な努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであって」,その「要因がなければ収入の減少を来しているものと認められる場合とか,労働能力喪失の程度が軽微であっても,本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし,特に昇給,昇任,転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあるものと認められる場合など,後遺症が被害者にもたらす経済的利益を肯認する特段の事情」がある場合には,後遺障害による労働能力低下に基づく財産上の損害があると述べています。
 
 最高裁昭和42年11月10日判決は,差額説に立っていると評価されることがありますが,昭和56年12月22日判決は,労働能力喪失説に近いことを述べています。
 実際,判例は,現実に生じた具体的な収入額の差異を離れて,ある程度抽象的な額として逸失利益の発生をとらえています。
 したがって,判例は,厳格な差額説に立っておらず,労働能力の喪失による損害を被害者が現に従事している職種との関連という面で差額説的な考慮をしながら評価していると理解することができると評価されています。

 
  交通事故の被害者が,加害者に対する損害賠償請求訴訟を弁護士に委任した場合,弁護士費用を損害として相手方に請求することができます。
 最高裁昭和44年2月27日判決が,弁護士費用が不法行為と相当因果関係のある損害と明示しています。

 裁判実務上は,認容額の10%程度を基本とし,事案の難易,認容額その他諸般の事情を考慮して,損害額を決めています。
 したがって,当然に認容額の10%が弁護士費用として損害として認められるわけではありません。傾向としては,認容額が高ければ10%を下回り,認容額が低ければ10%を上回ることが多いようです。

 交通事故の場合,訴訟提起に先立って,自賠責保険金の支払を受けることができたのに,支払を受けずに訴訟提起した場合は,認容額はその分高くなりますが,弁護士費用は低くなります。

 弁護士費用は,過失相殺後の認容額を考慮して算定されるため,弁護士費用について改めて過失相殺することはありません。
 また,弁護士費用も事故時から履行遅滞に陥り,遅延損害金が発生します。

 ところで,日本の民事訴訟は,弁護士費用の敗訴者負担を制度として採用していません。損害として認められる弁護士費用は,被害者が不法行為によって生じた損害賠償を求めるに際し,弁護士に訴訟遂行を委任し,かつ,相手方に対して勝訴した場合に限り,弁護士費用の一部又は全部が損害として認められるという性質のものです。

 任意保険会社との示談交渉,紛争処理センター,訴訟提起後の和解においては,弁護士費用は遅延損害金と同様,認められません。
 ただし,近時,裁判上の和解においては,一部,弁護士費用が考慮されることがあります。 交通事故による損害のうち,休業損害と後遺障害による逸失利益を併せて,逸失利益(消極的損害)と呼びます。

 逸失利益の算定に当たっては,様々な問題がありますが,被害者の基礎収入をどのように算定するかが,問題となることがあります。

 日本で発生した交通事故は,被害者が外国人でも,原則として,日本の不法行為に関する法令が適用されます。
 基礎収入の算定に際しては,被害者の将来の生活状況に関する一事情として,在留資格の有無が問題になります。一般的には,以下のように整理されています。

 被害者が,永住資格を有している場合は,日本人が被害者の場合と同様に逸失利益を算定します。

 被害者が,就労可能な在留資格を有して,現に日本で就労していた場合は,日本での現実収入の金額を基礎収入とします。在留期間に制限があるが,更新を受けることができる蓋然性を立証できれば,更新後の期間についても日本での現実収入の額が基礎収入となります。更新を受けることができる蓋然性の立証がない場合は,在留期間後は母国での収入等の額を基礎収入とします。

 観光客のように,就労可能な在留資格を有さず,日本で就労していない場合は,母国での収入等の額を基礎収入とします。

 就労可能な在留資格を有していないが,日本で就労していた場合は,日本での現実収入を基礎収入とします。しかし,その期間を長期にわたって認定することはできず,その後は母国での収入等を基礎収入とします。 交通事故による人的損害のうち,休業損害と後遺障害による逸失利益を併せて,逸失利益(消極損害)と呼びます。
 逸失利益の算定に当たっては,どのように基礎収入を算定するのか?が問題となることがあります。

 交通事故の被害者が,無職者(家事従事者ではない)の場合,逸失利益の算定に当たって,基礎収入は,おおむね以下のように算定されます。

【休業損害】
 交通事故前に現実に労働の対価を得ていない以上,原則として,休業損害は認められません。ただし,治療期間が長期にわたり,治療期間中に就職する蓋然性が認められるときは,例外的に,休業損害が認められることがあります。

 再就職の蓋然性の立証は,労働の能力・意欲,就労の見込みの蓋然性等に基づきます。最も認められやすいのは,就職が内定していた場合や就労開始時期が決まっている場合です。
 また,就職が内定していなくても,就労開始のための準備や就職活動をしていた場合に休業損害が認められることがあります。

 治療期間中に就職する蓋然性が認められる場合の基礎収入は,失業前の現実の収入,予測される将来の職業,性別,年齢,学歴,経歴等を参考に蓋然性の高い収入額となります。多くの場合は,賃金センサスの平均賃金を下回る額になります。


【後遺障害による逸失利益】
 被害者の年齢,職歴,勤労能力,勤労意欲等にかんがみて,就職の蓋然性がある場合には,後遺障害による逸失利益が損害として認められます。
 なお,その場合の基礎収入は,休業損害の場合と同様です。
  交通事故の発生について,被害者にも何らかの過失があることがあります。被害者に過失がある場合は,被害者の過失割合に相当する額が損害額から控除されます。

 これは,民法722条2項に基づいています。民法722条2項の「被害者の過失」には,被害者本人のみならず,被害者「側」の過失も含まれると解されています(最高裁昭和42年6月27日判決)。

 どこまでの人が,被害者側に含まれるのかということが,問題となります。上記の最高裁判決は,被害者と身分上生活上一体をなすとみられる関係にある者を被害者側と解しています。
 ちなみに,上記の最高裁判決は,被害者である幼児を監督する立場にあった保育士の過失を被害者側の過失として,斟酌することができるかが争点となった事案です。最高裁は,被害者側の過失について上記のように判断し,過失相殺を否定しています。

 したがって,被害者側の過失として斟酌される人の範囲は,被害者と身分上生活上一体をなすとみられる関係にあるかどうかによって判断されることになります。
 裁判例では,夫婦や内縁関係にある者は被害者側に含むと判断されています。被害者側に含まれない例としては,婚約関係にあった場合が挙げられます。

センターラインをオーバーしてきた自動車と正面衝突し、併合14級の後遺障害を負った60代女性の事例

依頼者

60代女性
 

委任の経緯

後遺障害の事前認定の結果が妥当かどうかを相談され,その後の保険会社との対応について依頼
 

事故の概要

センターラインをオーバーし走行してきた加害車両と被害車両が正面衝突(自動車と自動車)

過失割合加害者:被害者=100:0

(保険会社主張は加害者:被害者=90:10)
 

後遺障害診断書における傷病名

頚椎捻挫,腰椎捻挫,胸骨柄骨折
 

後遺障害の等級認定

併合14級
頚椎捻挫後の頚部痛,背部痛,頭痛等の症状について14級9号
腰椎捻挫後の腰痛,臀部痛の症状について14級9号

 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

手続き

示談交渉
 

取得金額

任意保険会社からの取得:237万7908円
 

コメント

症状固定後,事前認定で併合14級が認定されましたが,認定結果に納得できず,当事務所の出張相談会に参加されました。

画像所見,神経学的所見ともに異常がないことから,事前認定の結果は妥当と判断し,任意保険会社との示談交渉に当たりました。
物損の際は主張していなかった過失相殺を主張してきましたが,刑事記録に基づき反論し,被害者の過失割合0で示談することができました。

 

交通事故の被害に遭われた場合は,なるべく早期に弁護士に相談することをお勧めします。しかし,事前認定後や任意保険会社から示談案が提示された後でも弁護士に依頼することで,賠償額が増額することが多いといえます。
 

 交通事故による損害のうち,休業損害と後遺障害による逸失利益を併せて,逸失利益と呼びます。

 休業損害は,基礎収入×休業期間×休業割合によって算定するのが通常です。

 後遺障害による逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数によって算定します。

 逸失利益の算定に当たっては,まず,基礎収入の算定が問題となります。収入を得ていない専業主婦(夫)(家事従事者と呼びます)が交通事故に遭った場合,収入を得ていないので逸失利益は認められないのでしょうか?

 最高裁昭和49年7月19日は,家事従事者の逸失利益を肯定しました。そして,家事従事者の逸失利益をは,賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金を基礎収入として算定します。
 ただし,年齢,家族構成,身体状況,家事労働の内容等に照らして,賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金を得られる蓋然性がない場合には,学歴計・女性対応年齢の平均賃金等を参照して基礎収入を認定します。

 家事従事者が専業主婦(夫)ではなく,収入を得ている場合は,実収入額が賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金を上回っている場合は,実収入額を基礎収入として逸失利益を算定します。下回っている場合は,賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金を基礎収入として算定します。この場合,賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金を得られる蓋然性のない場合の取扱いは上記と同様です。

 平成25年の賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金は,353万9300円です。家事従事者の逸失利益は,事案によっては相当高額になることがあります。
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 交通事故によって,車いす生活を余儀なくされた場合に,自宅を車いすで生活ができるように,廊下や階段,浴室等の段差を解消する工事を行う必要が生じることや,適した家に引越しを余儀なくされることがあります。

 これらの家屋改造費,自動車改造費,調度品購入費,転居費用,家賃差額等は,症状の内容・程度に応じて,必要かつ相当な範囲で損害として認められます。
 家屋改造費は,工事費用が高額になることが多く,必要性及び費用の相当性に争いが生じることが多い損害費目です。

 一般論としては,車いすによる移動のための玄関スロープ設置,自宅内の段差解消,トイレや浴室の改造等は認められやすいと考えられます。
 しかし,家屋の改造は相当性が要求されますから,たとえば,被害者の自室を2階に設け,リフトを設置するような場合は損害としては認められないでしょう。

 新築の工事費や転居費用,家賃差額を請求する場合は,自宅が賃貸物件であること,家屋の改造では車いすによる移動空間を確保することが物理的に不可能であること,改造よりも新築の方が経済的であること等の新築工事・転居の必要性・相当性を立証する必要性があります。

 家屋改造費が損害として認められる場合,一定程度,介護の負担が軽減されることが考えられます。介護の負担軽減については,将来の介護費の算定に際して考慮されると考えられます。

 また,介護保険の介護住宅改修費等の公的給付を受けれることがあります。公的給付はすでに受給した分を除き将来分は損害から控除されないと解されています。 交通事故の損害賠償のうち,後遺障害による逸失利益は,以下の計算式で算定します。

 基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数

 死亡逸失利益と異なり,生活費の控除はされません。死亡の場合と違い,後遺障害による逸失利益の場合,被害者は生活する過程で生活費を支出し続ける必要があり,損益相殺として生活費を控除する必要がないからです。

 ところで,交通事故によって,被害者が植物状態になり,もはや回復する見込みがないという場合の後遺障害による逸失利益の算定に際し,生活費控除をすべきではないかという議論があります。
 植物状態となった被害者の要する生活費は,通常の生活費よりも安くすむはずなので,その差は損益相殺すべきというのがその理由です。

 裁判例は,生活費控除を認める立場と,生活費控除を認めない立場に分かれています。生活費控除を認める裁判例では,生活費控除割合を20%から30%としていることが多いようです。

 現在の裁判例の傾向としては,生活費控除を認めない立場に立っていると言われています。
 たとえば,「生活費は,必ずしも労働能力の再生産費用だけを内容とするものではなく」,被害者は「今後も生命維持のための生活費の支出を要することは明らかである上,自宅療養中の雑費の多くは逸失利益中から支出されることが見込まれる」から「逸失利益の算定に当たり,生活費を控除するのは相当で」ない(東京地裁平成10年3月19日判決)と判断されています。
 交通事故により,被害者が亡くなってしまった場合,葬儀関係費を損害として請求することができます。

 遅かれ早かれ,人は亡くなるので,交通事故による損害とは言えないのではないかという議論がかつてはありました。しかし,最高裁昭和43年10月3日判決は,遺族の負担した葬儀費用は,特に不相当でない限り,「人の死亡事故によって生じた必要的出費として,加害者側の賠償すべき損害と解するのが相当であり,人が早晩死亡すべきことをもって」,賠償を免れることはできないとして,葬儀関係費を損害として認めました。

 大阪地方裁判所の賠償額の基準は以下のようになります。
 ①葬儀関係費は150万円とする。
 ②死亡の事実があれば,特段の立証は不要
 ③葬儀関係費には,墓碑建立費・仏壇費・仏具購入費・遺体処置費等の諸経費を含む。
 ④遺体運送料を要した場合は相当額を加算する。
 ⑤香典は損害から控除せず,香典返し,弔問客接待費は損害と認めない。

 以上のように,死亡の事実の立証があれば,葬儀の執行と基準額程度の出費は必要なものと認められることから,特に立証することなく,150万円が葬儀関係費として認められます。
 ただし,実際に支出した額が基準額を下回る場合は,実際に支出した額を損害として認めるのが相当と解されています。

 葬儀関係費が定額とされているのは,現実の支出額が地域,慣習,宗派によってまちまちであるため,事案による公平を図るという考慮が働いています。また,判例は葬儀関係費を損害として認めますが,いずれ支出するのが避けられないものであり,支出の時期が早まったにすぎないということも考慮されているのではないかと考えられます。 一般に交通事故をはじめ,不法行為の損害賠償請求は,一時金賠償方式によります。民法に規定はありませんが,不法行為時に将来の損害も含め1個の損害賠償請求権が発生すると考えれば一時金賠償方式によると考えれます。

 将来の介護費の算定に当たっては,後遺障害の内容・程度により変動する将来の予測に関係する問題です。性質上,損害額の算定の基礎となる事情に変更が生じる可能性が高いので,定期金賠償になじみやすいと考えられます。
 将来の介護費の算定に際し,一時金賠償を命じる場合には,将来の不確定要素が大きいので,金額が控えめに認定判断される傾向にあると言われています。
 そうすると,将来の介護費については,定期金賠償によるのが合理的ではないかと考えられます。
 
 被害者が一時金賠償を求めているにもかかわらず,裁判所が定期金賠償を命じることができるかという問題があります。
 最高裁は,「損害賠償請求権が訴訟上一時金による賠償の支払を求める旨の申立てをしている場合に,定期金による支払を命ずる判決をすることはできない」と否定しています(最高裁昭和62年2月6日判決)。
 最高裁は特に理由を述べてはいませんが,加害者の将来の支払拒絶や支払不能に備えた履行確保制度がないこと,事情変更により定期金の額が不相当となったときの変更制度がないことが理由として考えられています。
 上記の理由のうち,後者については,民訴法117条により制度的には解決しましたが,前者の問題は依然として残っています。
 
 なお,東京高裁平成15年7月29日判決は,原告が一時金賠償を求めていたにもかかわらず,定期金賠償を命じています。
  将来の介護費が損害として認められる場合は,原則として平均余命までの間の金額が損害額となります。

 被害者が交通事故後に,事故と別の原因で死亡した場合にも,将来の介護費が平均余命までの間,損害として認められるのかが問題となります。

 後遺障害による逸失利益にも同様の問題があり,①死亡時までの逸失利益を損害とする切断説と②労働能力喪失期間の算定には死亡の事実を考慮しない継続説があり,判例は,原則として②切断説に立っています。

 しかし,将来の介護費については,最高裁は切断説に立っています。そのことを判断したのは,最高裁平成11年12月20日判決です。
 「介護費用の賠償については,逸失利益の賠償とはおのずから別個の考慮を必要とする」。「介護費用の賠償は,被害者において現実に支出すべき費用を補てんするものであり,判決において将来の介護費用の支払を命ずるのは,引き続き被害者の介護を必要とする蓋然性が認められるからにほかならない」。「ところが,被害者が死亡すれば,その時点以降の介護は不要となるのであるから,もはや介護費用の賠償を命ずべき理由はなく,その費用をなお加害者に負担させることは,被害者ないしその遺族に根拠のない利得を与える結果となり,かえって衡平の理念に反する」。

 将来の介護費について,切断説に立つ場合,事実審の口頭弁論終結時に被害者が生存しているか,それとも死亡しているかによって賠償額に大きな差が生じることになります。
 これに対して,上記の最高裁判決は,賠償額に差が生じることが,「被害者死亡後の介護費用を損害として認める理由にはならない」とのみ判示しています。 交通事故により,被害者に介護が必要となる後遺障害が残った場合,症状固定後の介護費が損害として認められることがあります。
 後述のように,将来の介護費は,原則として平均余命までの間,認められますので,非常に高額になり,訴訟で大きな争点になります。

 将来の介護費についての大阪地方裁判所の損害額の基準は以下のとおりです。
 ①原則として,平均余命までの間,被害者本人の損害として認める。
 ②職業付添人の場合は必要かつ相当な実費
 ③近親者付添の場合,常時介護を要するときは1日当たり8000円,随時介護を要するときは介護の必要性の程度・内容に応じて相当な額
 ④身体的介護を要しない看視的付添を要する場合も,障害の内容・程度,被害者の年齢,必要とされる看視の内容・程度等に応じて,相当な額を損害として認めることがある。

 そのそも,将来の介護費については,前提として,介護の必要性の有無が大きな問題になります。
 自賠責保険は,介護を要する後遺障害として別表第一の1級と2級を定めていますが,裁判実務上は,別表第一の1級・2級以外の後遺障害についても,具体的な後遺障害の内容・程度等から介護の必要性が認められれば,将来の介護費が損害として認められます。

 高次脳機能障害,脊髄損傷,下肢欠損・機能障害に関する後遺障害については,等級が3級以下でも将来の介護費が損害として認める裁判例が多いと言われています。
  交通事故によって被害者が負傷し,症状固定後,後遺障害が残存した後,被害者が自殺した場合,交通事故と自殺との間に相当因果関係があれば,加害者に死亡逸失利益を損害として請求することができます。→交通事故後,被害者が別の事故で死亡した場合

 しかし,自殺には程度の差はあれ,被害者の心因的要因が,影響していることから,相当因果関係のある損害をすべて加害者に賠償させるのは損害の公平な分担という不法行為の趣旨に反すると考えられます。→素因減額
 
 最高裁平成5年9月9日判決は,加害者に死亡による損害の賠償責任を認めた上で,自殺に被害者の心因的要因が寄与しているとして,損害額を減額しました。
  「事故により」被害者「が被った傷害は,身体に重大な器質的傷害を伴う後遺症を残すようなものではなかったとはいうものの」,「事故の態様が」被害者「に 大きな精神的衝撃を与え,しかもその衝撃が長い年月にわたって残るようなものであったこと,その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となっ て」,被害者「が災害神経症状態に陥り,更にその状態から抜け出せないままうつ病にり患した者の自殺率は全人口の自殺率と比較してはるかに高いなど」の 「事実関係を総合すると」,「事故と」被害者「の自殺との間に相当因果関係があるとした上,自殺には」被害者の「心因的要因も寄与しているとして相応の減 額をして死亡による損害額を定めた原審の判断は,正当」である。
 結果として,最高裁は,損害額から80%の減額をし,加害者に20%の限度で賠償責任を認めました。 交通事故により負傷した被害者が症状固定後に,別の原因で死亡した場合,後遺障害による逸失利益をどのように算定するのかが問題になります。

 ここまで,解説ページで紹介した記事をまとめると,以下のようになります。
 (1)最高裁は,原則,継続説に立ち,労働能力喪失期間の認定上,死亡の事実は考慮せず,賠償を限定しない。
 (2)(1)は被害者が自殺の場合も同様である。
 (3)交通事故と被害者の自殺との間に相当因果関係がある場合も同様である。

 被害者が死亡した以上,生活費が不要になることから,後遺障害による逸失利益の算定に当たっても,生活費を控除する必要があるのではないかという疑問が出てきます。
 被害者の死亡後は生活費を控除すべきであるという見解は,継続説をとる学説においても有力でした。

 しかし,最高裁平成8年4月25日判決は,以下のとおり,原則として生活費の控除を否定しました。
 「交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合,労働能力の一部喪失による財産上の損害の額の算定に当たっては,交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り,死亡後の生活費を控除することができる」。

 交通事故と被害者の自殺との間に相当因果関係がある場合には,被害者(の遺族)は,死亡逸失利益を請求するか,後遺障害による逸失利益を請求するかを選択できると考えられます。
 そして,後遺障害による逸失利益の請求を選択した場合でも,死亡後の生活費控除が認められるということになります。

 以上,逸失利益について,まとめてみましたが,積極損害である将来の介護費の算定をどのようにするのかという点については,後日紹介します。
  被害者が交通事故によって後遺障害が残存した後に事故を無関係の原因で死亡した場合,逸失利益の算定については,切断説と継続説の争いがありますが,最高裁は原則,継続説に立つことを明らかにしました。

 被害者が症状固定後に別の交通事故で死亡した事案の最高裁平成8年5月31日判決は,最高裁平成8年4月25日判決を引用し,継続説に立つことを改めて明らかにした上で,さらに,以下のように述べています。
 「被害者の死亡が病気,事故,自殺,天災等のいかなる事由に基づくものか,死亡につき不法行為等に基づく責任を負担すべき第三者が存在するかどうか,交通事故と死亡との間に相当因果関係ないし条件関係が存在するかどうかといった事情によって異なるものではない」。
 「被害者が第二の交通事故によって死亡した場合,それが第三者の不法行為によるものであっても」,「第三者の負担すべき賠償額は最初の交通事故に基づく後遺障害により低下した被害者の労働能力を前提に算定すべきものであるから」,継続説をとることによって,「はじめて被害者ないしその遺族が,前後二つの交通事故により被害者の被った全損害についての賠償を受けることが可能となる」。

 最高裁平成8年5月31日判決は,4月25日判決以上に,継続説が原則であることを踏み込んでいます。被害者が交通事故後に自殺した場合でも継続説に立つと言っています。また,事故と死亡との間に相当因果関係がある場合も継続説に立つと言っています。

 以上を前提とすると,交通事故と被害者との自殺に相当因果関係がある場合(=死亡による逸失利益を請求できる)でも,継続説に立ち後遺障害による逸失利益を請求できるということになります。
 被害者(の遺族)としては,死亡逸失利益を請求するか,後遺障害による逸失利益を請求するかを選択できることになると考えられます。
 交通事故に被害者が自殺し,自殺が事故と相当因果関係がある場合,被害者の心因的要因が影響しているとして損害額が相応に減額されることがあります。
 後遺障害が重度の場合,後遺障害による逸失利益を請求した方が,死亡逸失利益を請求するよりも賠償金を多く受け取れるということも考えられます。 交通事故によって傷害を負い,治療の甲斐なく後遺障害が残存した場合には,後遺障害による逸失利益が損害賠償として請求することができます。

 後遺障害による逸失利益は,以下のように算出します。
 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

 労働能力の喪失期間は,むちうちや局部の神経症状でなければ,67歳を終期とするのが通常です(ただし,後遺障害の程度によります)。
 被害者が交通事故によって後遺障害が残存した後に事故を無関係の原因で死亡した場合,逸失利益の算定が問題となります。

 ①切断説は,逸失利益の範囲は死亡時までと賠償の範囲を限定します。②継続説は,労働能力喪失期間の認定上,死亡の事実は考慮せず,賠償を限定しません。

 交通事故と無関係の原因で被害者が死亡するケースとしては,①別の事故,②病死,③自殺などが感がられます。①の別の事故と②病死については,最高裁判決があり,原則,継続説をとっています。

 被害者が病死した事案の最高裁平成8年4月25日は,以下のように判示しています。
 「交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し,労働能力の一部を喪失した場合において」,「逸失利益の算定に当たっては,その後に被害者が死亡したとしても」,「交通事故の時点で,その死亡の原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り」,「死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではない」。

 最高裁がいう「特段の事情」としては,交通事故に遭った時点で,すでに末期がんに罹患し,余命幾ばくもないというようなケースが考えられますが,他のケースは想定しがたいと言われています。

 別の事故により被害者が死亡した事案の最高裁平成8年5月31日判決については,後日,紹介します。 交通事故の発生について,被害者にも過失がある場合は,損害額から被害者の過失割合に相当する金額が控除されます。

 被害者が有している素質が損害の発生又は拡大の原因となっている場合があります。たとえば,被害者が交通事故の前に身体障害を有していた,心臓疾患等の病気にかかっていた,事故後に被害者がノイローゼになり治療費が通常よりも多くかかった等が考えられます。

 このような損害の発生や拡大の原因となった被害者の素質を素因といいます。素因には,①身体的要因と②心理的要因の2つがあります。損害賠償請求額の算定に当たり,被害者の素因を斟酌して,減額することを素因減額といいます。

 身体的要因による素因減額の基本的な考え方は,以下のとおりです。
 被害者に対する加害行為と被害者の疾患がともに原因となって,損害が発生した場合に,疾患の態様・程度に照らして,加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を欠くと認められるときは,被害者の疾患を斟酌することができます。
 ただし,被害者の身体的特徴が平均的な体格や体質と異なっていても,それが疾患に当てはまらあない場合は特段の事情がない限り,素因減額することはできません。

 心因的要因による素因減額の基本的な考え方は,以下のとおりです。
 身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係があり,その損害が加害行為のみによって通常発生する程度・範囲を超え,かつ,損害の拡大に被害者の心因的要因が寄与しているときは,被害者の事情を斟酌することができます。 
  交通事故で傷害を負い,入院を余儀なくされた場合,入院中に必要となる日用品雑貨費(衣服・寝具等),栄養補給費,通信費(電話代等),文化費(新聞代・テレビ賃借料)などの諸々の費用が発生します。
 これらの費用も交通事故と因果関係のある損害として加害者に請求することができます。

 損害の発生とその金額は,被害者が立証する必要があるので,これらの費用も個別に立証するのが民法の原則です。
 しかし,金額が大きくないことや個別にこれらの費用を立証するのは著しく煩雑であることから,実務上は,一般的に要するであろう金額を入院雑費として定額認定しています。
 大阪地方裁判所の基準では,1日につき1500円です。

 したがって,訴訟においても,入院雑費について,いちいち立証する必要はありません。個別に1500円を上回ることを立証しても増額されないと考えられています。

 ところで,入院雑費は,入院によって通常必要であると考えられるものを念頭に置いています。場合によっては,通常の範囲を超えて入院雑費を支払わなければならないことも考えられます。
 通常の範囲を超えて,特に必要になった費用については,定額部分の入院雑費以外に個別に損害として認定される余地があります。
 たとえば,神戸地裁平成16年12月20日判決は,1日1500円の入院雑費とは別に,貸しおむつ代1日2000円を損害として認定しています。

  交通事故で被害者が亡くなった場合,将来得られたであろう収入を逸失利益として加害者に損害賠償請求できます。

 被害者が年金を受給していた場合,将来得られたであろう年金を逸失利益として認められるかという問題があります。

 年金は,国民年金を基礎して,上乗せとして①老齢・退職年金,②障害年金,③遺族年金があります。逸失利益性が認められるかは,年金の給付目的,保険料と年金給付との間の対価性,年金給付存続の確実性に基づいて判断されます。

 ①老齢・退職年金については,逸失利益性が認められます。②障害年金も逸失利益性が認められますが,加給分は逸失利益性は否定されています。
 ③遺族年金については,逸失利益性は認められません。

 年金の逸失利益性が認められた場合の受給期間ですが,受給権者が生存している限り受給しえたと認められる場合は,平均余命までの年数を以て積算することになります。

 被害者が年金を受給していた場合は,上記のとおりですが,被害者が年金を受給していない場合に,年金の逸失利益性が認められるかどうかについては,裁判例の判断が分かれています。
 被害者がすでに年金受給資格を取得している場合は,年金の受給が確実視されるため,逸失利益として認められやすいと考えられます。

 年金の逸失利益性が認められたとして,被害者が年金しか収入がない場合には,収入に占める生活費の割合が高いと考えられることから,生活費控除率は通常より高く判断されることが多いです。 交通事故の損害賠償は,通常,一時金賠償として一括での支払を加害者に求め,加害者から支払を受けます。

 交通事故がなければ,将来得られたであろう収入の賠償を求める逸失利益についても一時金賠償として,支払を求める場合は,将来にわたる逸失利益の総額を現在価値に換算する必要があります。そこで,中間利息を控除することになります。

 中間利息の控除の方法は,①単利で行うホフマン方式と②複利で行うライプニッツ方式の2つがります。最高裁は,どちらの方式も不合理とはいえないと是認しています(最高裁平成2年3月23日判決等)。
 しかしながら,現在は,大阪地方裁判所をはじめほぼ全国的にライプニッツ方式が採用されています(→三庁共同提言参照)。

 中間利息の控除割合は,民事法定利率の年5%によるというのが,判例です(最高裁平成17年6月14日判決)。

 中間利息の控除をいつの時点を基準として行うのかは,①事故時,②症状固定時,③紛争解決時の3つの見解が存在するようです。
 事故時に全損害が発生し,遅延損害金も事故時から発生するという最高裁の考え方からすると,理論的には事故時を基準にすることになります。
 しかし,煩雑な計算を回避するという趣旨から後遺障害の逸失利益の算定に当たっては,症状固定時を基準に損害を計算するという扱いをしていることが多いと思われます。 交通事故により,不幸にも被害者が亡くなってしまった場合は,損害として死亡慰謝料を加害者に請求できます。

 慰謝料は,被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償ですが,被害者が死亡した場合は,近親者にも慰謝料請求権が認められます(民法711条)。
 交通事故の死亡事故の場合に加害者に損害賠償請求を行うのは,被害者の相続人ですが,民法711条は「父母,配偶者及び子」を行為主体と規定しており,相続人の範囲と慰謝料請求権を行使できる近親者の範囲は必ずしも一致しません。

 また,慰謝料請求権を行使できる近親者は,上記の「父母,配偶者及び子」に必ずしも限定されるわけではありません。
 被害者との間に,「父母,配偶者及び子」と実質的に同視できる身分関係が存在すれば,民法711条の類推適用により固有の慰謝料を請求することができます(最高裁昭和49年12月17日判決)。たとえば,内縁の配偶者などは,民法711条の類推適用により固有の慰謝料請求権を行使することがでしょう。

 死亡慰謝料の慰謝料額は,「死亡事故の損害賠償」に大阪地方裁判所の基準を載せてあります。この基準額は,近親者の慰謝料を含んだ金額とされています。
 
 いままでは,死亡慰謝料の話しでしたが,判例は,被害者が受けた傷害により近親者が生命侵害の場合に比肩し得べき精神上の苦痛を受けたときは,近親者の慰謝料請求権を認めています(最高裁昭和33年8月5日等)。
 また,被害者が重度の後遺障害負った場合のほか,近親者による被害者の介護が必要な場合には,近親者固有の慰謝料請求権が認められることがあります。 交通事故には,加害者が自賠法3条の運行供用者責任を負う場合と負わない場合があるという話しをしました(→運行供用者責任)。
 自賠法3条が適用されるには,加害者が運行供用者である必要がありますが,自賠法には,運行供用者の定義規定がありません。

 立法担当者は,自動車の使用について支配権を有し,かつ,その使用によって利益を受ける者を運行供用者と解していたようです。想定していたのは,自動車の所有者・使用者で,所有者以外の無断運転者等が運行供用者になるとは考えていなかったようです。

 判例は,加害車両について,運行支配と運行利益が帰属するものを運行供用者としています。もっとも,裁判例では運行支配を中心に運行供用者かどうかを判断していると言われています。
 判例のいう運行支配とは,直接の支配力,事実上の支配力,客観的支配と当初はとらえていましたが,その後は,加害車両の運行を指示,制御すべき立場ととらえているようです。

 自動車の所有者は,当然,運行支配を有していますが,所有者以外の人が車を他人に貸与していたり,あるいは無断で運転された場合に,所有者が運行支配を有しているといえるかどうかです。
 たとえば,無断運転の場合,運転者と車の所有者との間に密接な人的関係(親族関係,雇用契約等)があれば,車の所有者は運行供用者責任を負うと判断されることが多いと考えられます。いわゆる泥棒運転の場合には,運転者と所有者との間に人的関係がないことが多く,通常は,車を盗まれた時点で所有者は運行支配を失い,運行供用者責任を負わないと考えられます。ただし,公道上にエンジンキーを付けたままドアロックもせずに駐停車していたような場合は所有者が運行供用者責任を免れないことがあります。 交通事故に遭い,傷害を負った被害者が加害者に損害賠償の請求をする場合,民法の特別法である自動車損害賠償保障法(自賠法)が適用されるケースがほとんどです。

 自賠法3条は,自己のために自動車を運行の用に供する者は,その運行によって他人の生命または身体を害したときは,これによって生じた損害を賠償する責任を負うと規定しています。この責任を運行供用者責任と呼んでいます。

 自賠法3条但書は,運行供用者が責任を免れる要件を定めています。その要件は,①運行供用者と運転者に過失がないこと,②被害者や第三者に故意,過失があること,③自動車に欠陥,機能障害がないことの3つです。
 この3つを運行供用者が立証できなければ,賠償責任を免れることはできません。

 つまり,自賠法3条は,加害者である運行供用者に立証責任を転換するだけでなく,立証すべき内容を加重しています。
 したがって,事実上の無過失責任を課していると評価できます。

 自賠法3条が適用されるには,上記のとおり,被害者が「他人」であり,加害者が「運行供用者」である必要があります。
 交通事故の加害者には,運行供用者に該当する場合とそうでないがあります。運行供用者に該当しない場合,自賠法3条の運行供用者責任を負わないというだけで,別途,一般法である民法709条等で賠償責任を負うことはあります。



  交通事故により負傷した被害者の入通院に近親者等が付添った場合,損害として認められるかについて,大阪地方裁判所の基準は以下のとおりです。

 ①入通院の付添看護費は医師の指示があった場合は被害者本人の損害として認める。
 ②医師の指示がない場合も症状の内容,程度,被害者の年齢等から付添看護の必要性があれば,被害者本人の損害として認める。
 
 ①又は②により,付添看護費が損害として認められる場合の損害額についての大阪地方裁判所基準は,以下のとおりです。
 ③職業付添人を付けた場合は,必要かつ相当な実費を損害額として認める。
 ④近親者付添看護の場合は,1日当たり入院の場合は6000円,通院の場合は3000円を損害として認める。


 近親者の付添看護費は,近親者が被害者に付き添ったことによる損害を金銭として評価するものです。実際に近親者に被害者が報酬を支払っている必要はありません。付添看護費は,交通費,雑費,その他必要な諸経費を含んだ金額です。
 →通院交通費の算定参照


 上記の②に関連して,完全看護の態勢を取っている病院でも,症状の内容,程度や被害者の年齢等から付添看護費が損害として認められることがあります。また,付添看護の内容が,食事,排泄等の介助を行っていたり,長時間の付添をしていたりと負担が重い場合には,基準額どおりの金額を認めないことがあるようです。

 近親者が仕事を休んで被害者に付添った場合,近親者の休業による損害と④の付添看護費のうち,高い方が損害として認められます。
 ただし,被害者と近親者の身分関係から必ずしも当該近親者が付添う必要なく,職業付添人で足りる場合は,近親者に休業損害が発生しても③が限度となります。

   交通事故の逸失利益の算定に当たり,基礎収入の算定で問題となることが多いのは,自営業者(事業所得者)です。

 自営業者の基礎収入は,原則,交通事故前年の申告所得額を基礎として算定します。所得の中に,近親者の労働によるものが含まれている場合は,被害者の寄与部分のみを基礎収入とします。
 交通事故による休業中の支出を余儀なくされる家賃や従業員の給与等の固定費についても,損害として認められます。

 自営業者の中には,申告所得よりも実際の所得が多いと主張されることがあります。このような主張自体を許さないという裁判例はないようですが,申告外所得の認定は,厳格に行われます。というのは,申告外所得の主張は自己矛盾の主張に他ならないからです。裁判例では,「高度の証明を要する」と言及したものがあります。

 したがって,収入,原価や営業経費,店舗設備費等の諸経費について,信用性の高い証拠による合理的な疑いを入れない程度の立証が必要ということになります。
 具体的には,通常の業務過程で作成される会計帳簿,伝票,日計帳,レジの控え等の証拠によります。各証拠の信用性は,文書の体裁,記載内容,作成経緯等から厳格に判断されることになります。

 なお,事故後に修正申告が行われた場合,申告所得が実際の所得と合致しているか疑問があるので,判決に際しては,修正申告書の控えのみで申告所得を所得として認定することは困難であるとの指摘がなされています。
 交通事故により負傷し,休業により収入が得られなかった場合や後遺障害が残り,労働能力が低下し収入が減少した場合は,それぞれ休業損害,後遺障害による逸失利益を損害として請求できます。これらをまとめて逸失利益又は消極損害と呼びます。

 逸失利益の算定に当たっては基礎収入をどのように算定するかが問題となります。たとえば,会社役員は,会社から役員報酬を受けていますが,そのすべてが基礎収入と算定されるわけではありません。

 会社役員が会社から受ける報酬には,労務提供の対価部分と利益配当部分の両方が含まれています。逸失利益の対象となるのは,労務提供の対価部分です。通常,役員報酬のうち,いくらが労務提供の対価部分であると明示して支給されることはありませんので,労務提供の対価部分が役員報酬に占める割合が問題になります。

 裁判例では,①会社の規模,②会社の営業状態,③被害者である役員の職務内容,④被害者である役員の報酬額,⑤他の役員や従業員の職務内容,⑥他の役員や従業員の給与等の額等を勘案して判断されます。

 なお,交通事故で被害者が亡くなった場合は,被害者が死亡しなければ得ることができたであろう収入を死亡による逸失利益として損害として請求することができます。
 休業損害と後遺障害の逸失利益の場合は,上記のとおり,役員報酬の利益配当部分を基礎収入から除外しますが,死亡逸失利益の場合は,利益配当分を基礎収入から除外するかどうかは争いがあります。
 交通事故により傷害を負ってしまった場合,医療機関で治療を受けなければなりません。その際の治療費は,損害として加害者に請求できることになります。

 大阪地方裁判所の治療関係費についての基準は以下のとおりです。
 ①治療費及び入院費は,必要かつ相当な実費を認める。
 ②症状固定後の治療費は原則として認めない。
 ③入院中の特別室使用料は,医師の指示があった場合,症状が重篤であった場合,空室がなかった場合等の特別の事情がある場合に限って,相当な期間について認める。
 ④整骨院における施術費,鍼灸,マッサージ費用,温泉治療費等は,医師の指示があった場合又は症状により有効かつ相当な場合は,相当額を認めることがある。

 治療関係費は,治療費,入院費のほかに診断書作成費等の文書料も含まれます。原則として,要した実費全額が損害として認められます。
 
 症状固定後の治療費は上記のとおり,原則,認められませんが,症状の内容・程度に照らし,必要かつ相当なものは損害として認められることがあります。
 
 整骨院等での施術費については,医師による治療ではないため,原則,損害としては認められず,上記の基準によります。
 しかし,整骨院での施術について医師の指示があることは,通常ありませんので,症状により有効かつ相当な場合に相当額が損害として認められます。
 柔道整復師法,あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師等に関する法律により,免許制度が確立されていることや,医療機関のペインクリニックに鍼灸治療が用いられることがあることから,症状の軽減や機能の回復など効果が上がっていること,施術期間,施術内容,施術費の相当性を立証することで損害として認められやすいと考えられます。

 交通事故が労災(業務上災害,通勤災害)である場合は,労災保険から給付を受けることができます。

 労災保険の給付としては,療養補償給付,休業補償給付,障害補償給付,遺族補償給付,葬祭料,傷病補償年金,介護保障給付などがあります。

 労災と自賠責保険や加害者の任意保険の両方から給付を受ける,いわゆる二重取りはできず,労災と自賠責等で調整する必要があります。
 交通事故の場合,自賠責を優先すべきという行政の通達がありますが,法律ではありませんので,被害者が労災保険の給付申請をすれば,自賠責を先行すべきという理由で拒否されることはありません。

 被害者にも過失があり,過失相殺がなされるケースでは,労災を使用するメリットは非常に大きいです。
 総損害額から過失相殺をした後の損害額から労災の給付を控除します。労災の給付を控除する際,費目拘束があり,労災保険給付の趣旨目的と民事上の損害賠償とが一致する関係にあるものに限り,損害額から控除されます。

 たとえば,治療関係費として100万円,被害者の過失が4割と認定され,労災の療養補償給付100万円を受領していた場合
 過失相殺後の治療関係費は60万円となります。
  100万円×0.6=60万円
 過失相殺後の治療関係費から療養補償給付を控除します。
  60万円-100万円=-40万円
 すると,控除しきれない40万円が生じますが,この40万円を消極損害や慰謝料から控除することはできません。

 労災の給付のうち,休業補償給付・障害補償給付・遺族補償給付・傷病補償年金は,消極損害と対応し,消極損害から控除します。
 葬祭料は葬儀関係費用,介護補償給付は介護費用と対応し,それぞれから控除します。

 療養補償給付が治療費に対応するのは当然ですが,治療費以外の入院雑費,通院交通費等の積極損害を対応関係にあるかは争いがあります。

 
 労災には,社会復帰促進事業の一環として特別支給金が給付されますが,特別支給金は損害額からは控除されません。 交通事故の損害賠償として請求できる費目はいろいろとありますが,今回は,通院交通費について,解説します。
 大阪地方裁判所の基準は以下のようになっています。
 
 ①入退院,通院の交通費は実費相当額を認める。
 ②タクシーを利用する場合は,傷害の内容,程度,交通の便等から相当性が認められる場合に限る。
 ③自家用車利用の場合のガソリン代は15円/1kmとして,必要に応じて,高速道路料金,駐車場代を認める。
 ④近親者の付添い,見舞いのための交通費は,原則として認めない。


 近親者の付添い又は見舞いのための交通費が損害として認められないのは,近親者の付添費の中に含まれているからです。ただし,近親者が遠隔に居住しており,付添い又は見舞いが社会通念上相当と認められる場合は,別途,認められ余地があります。
 以上を前提に,近親者が海外に居住している場合でも,その旅費が認められる余地があります(最高裁昭和49年4月25日判決)。

 通院交通費の金額は領収書等により立証することが原則です。
 しかし,公共交通機関を利用した場合は,片道の金額と通院日数を立証すれば,ルートが合理的であればその金額が損害として認められます。
 自家用車を利用した場合は,自宅から病院までの距離と高速道路料金,駐車場料金をそれぞれ立証する必要があります。

 タクシーの利用は,上記のように,タクシーを利用することの相当性が認められることが前提になります。相当性が認められない場合は,公共交通機関の料金が損害額として認められることになります。 交通事故が労災(業務上災害,通勤災害)でなければ,交通事故の治療にも健康保険を使用することが可能です。

 交通事故の治療は,自由診療で行われることがほとんどですが,入院を伴うようなケガを負った場合は,保険会社から健康保険を使ってほしいと打診されることがあります。

 健康保険を使うメリットは,治療費の総額を押さえることができることにあります。
 交通事故の損害のうち,治療費は,通常,保険会社が医療機関に直接支払うため,被害者としては,金額を意識することがあまりありません。しかし,被害者にも過失があり,過失相殺がなされる場合は,治療費も含めた損害額から過失相殺した後の残額から治療費が控除されます。
 したがって,治療費が高額になると,その分,被害者が実際に受け取れる損害額が減ってしまいまうことになります。

 被害者にも過失があり,過失相殺されることが予想される事案では,健康保険を積極的に使用した方がいいということになります。
 また,人身傷害保険を使う場合は,健康保険等の公的給付を使用する努力義務が約款上,存在することが通常です。

 交通事故の治療に健康保険を利用する際は,協会けんぽ又は健康保険組合に第三者行為の傷病届を提出する必要があります。 平成26年5月20日に施行された自動車運転死傷行為処罰法では,一定の病気等の影響により,その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運行し,人を死傷させた場合,自動車運転過失致傷罪ではなく,新しい危険運転致死傷罪で処罰対象となります。

 平成26年6月1日,改正道路交通法が施行され,免許の拒否事由等とされている一定の病気等に該当する者を的確に把握するための制度ができました。

 ①免許の取得・更新の際に全員に対し,病状に関する公安員会の質問制度を設け,虚偽の回答をした者に対して1年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられることになります。
 ちなみに質問は,過去5年以内に病気などを原因として「意識を失ったことがある」等5問を「はい」か「いいえ」で答える形式のようです。

 ②一定の病気等に該当する者を診断した医師による任意の届出制度の創設
 医師が一定の病気などに該当すると診断した場合, 診察結果を都道府県公安委員会に任意で届け出ることができるようになります。

 ③一定の病気等の疑いのある者を医師の診断までの間,暫定的に3か月の範囲で免許を停止

 ④一定の病気等に該当する者であることを理由に免許を取消された場合の,免許再取得に関する負担を軽減する措置
  一定の病気に該当すること等を理由に免許を取り消された場合,取消しから3年以内は,再取得時の運転免許試験(適性試験は除く)が免除されます。

 なお,一定の病気とは,以下の病気をいいます。
 ①統合失調症
 ②てんかん
 ③再発性の失神
 ④無自覚性の低血糖症
 ⑤躁うつ病
 ⑥重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
 ⑦認知症
 ⑧その他自動車等の安全な運転に必要な認知,予測,判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気

 そして,上記一定病気の他に,アルコール,麻薬,大麻,覚せい剤,あへんの中毒を加えたものを一定の病気等ということになります。

  交通事故の損害賠償請求を解決するに当たり,人身傷害保険の存在を無視することはできません。
 人身傷害保険は,①自動車事故によって被保険者が死傷した場合に,②被保険者の過失割合を考慮することなく,③約款所定の基準により積算された損害額を基準に,④保険金を支払うという傷害保険です。
 自動車保険に当然に付保されていたり,特約で付けたりと,人身傷害保険の付保率は80%を超えているとも言われています。

 人身傷害保険金は損害賠償の算定に際しては,既払金として賠償額から控除します。被害者に過失がある場合に,人身傷害保険をどのように控除するのかが問題となります。
 人身傷害保険金を先に受領した事案について,最高裁平成24年2月20日判決(判タ1366号83頁)は,いわゆる裁判基準差額説に立つことを明らかにしました。
 裁判基準差額説は,人身傷害保険金と損害賠償金の合計額が裁判基準損害額を上回る場合のみ(人身傷害)保険会社が,その上回る部分を代位取得するという考え方です。

 という説明では,よくわからないので,以下の例に元に被害者が受け取れる損害額を算定してみることにします。
裁判基準損害額 6000万円
被害者の過失割合 20%(1200万円)
過失相殺後の損害額 4800万円
人身傷害保険金 4000万円
 人身傷害保険金4000万円は,まず被害者の過失部分の1200万円に充当します。そうすると,2800万円がはみ出します。
  4000万円-1200万円=2800万円
 はみ出た2800万円を過失相殺後の損害額から控除した額が被害者の受領できる損害額になります。
  4800万円-2800万円=2000万円
 したがって,被害者は最終的に2000万円+人身傷害保険の4000万円の合計6000万円を受領することができます。
 このように,被害者に過失があるにもかかわらず,民法上認められるべき過失相殺前の損害額(裁判基準損害額)を確保することができるのが人身傷害保険の最大のメリットです。


 なお上記の例は,人身傷害保険金を損害賠償金よりも先に受領した場合ですが,損害賠償請求金を先に受領した後に人身傷害保険金を受領する場合については,裁判基準差額説を否定した大阪高裁の裁判例があります。 交通事故の損害費目にのうち,逸失利益(死亡逸失利益,休業損害,後遺障害逸失利益)の算定についての実務は,平成11年11月22日に発表された東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」に基づいています。

 共同提言は,逸失利益の算定において三庁で取扱いが異なっていたものを以下のように,統一しようというのが一番の趣旨です。

 ①逸失利益の算定における基礎収入は,幼児・生徒・学生及び比較的若年の被害者で生涯を通じて全年齢平均賃金を得られる蓋然性がある場合には,原則,全年齢平均賃金または学歴別平均賃金による。それ以外の者は事故前年の年収額による。

 ここでいう比較的若年の被害者は,おおむね30歳未満の者を想定しています。

 ②全年齢平均賃金,学歴別平均賃金は,死亡した前年のものを採用する。

 ③逸失利益の算定における中間利息控除方法は,特段の事情がない限り年5分の割合によるライプニッツ方式を採用する。

 共同提言の骨子は上記のとおりですが,逸失利益の算定について,具体的な算定例を挙げており,そのことが実務に大きな影響を与えたと言われています。

 たとえば,高齢の家事従事者の基礎収入について以下のケースを挙げています。
 
 ①88歳専業主婦(夫と2人で年金暮らし)
 家事労働は,もはや自ら生活していくための日常的な活動と評価するのが相当として,逸失利益は認められない。

 ②74歳専業主婦(夫と2人で年金暮らし)
 65歳以上の女性の平均賃金の7割を基礎収入として逸失利益を算定しています。 平成26年5月20日に,自動車運転死傷行為処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)が施行されました。
 
 飲酒運転や無免許運転等の悪質で危険な運転行為が社会問題にもなりましたが,危険運転致死傷罪の構成要件に該当せず,より軽い自動車運転過失致死傷罪が適用されることに対して批判がありました。
 そこで,運転の悪質性や危険性等の実態に応じて処罰できるよう,自動車運転死傷行為処罰法(以下「新法」といいます)が制定され罰則が整備されました。新法の概要は以下のとおりです。
 
 ①刑法から危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪が新法へ移されるとともに,危険運転致死傷罪に新しい類型が追加されました。
 ②従来の危険運転致死傷罪より法定刑の軽い新しい危険運転致死傷罪が制定されました。
 ③飲酒運転等の逃げ得に対処するため,影響発覚免脱罪が制定されました。
 ④無免許運転で死傷事犯を起こした場合に刑を加重する規定を制定しました。


 ①危険運転致死傷罪
 アルコール,薬物の影響により正常な運転が困難な状態で走行する等の従来の5類型に加え,新たに,通行禁止道路を進行し運転する類型が追加されました。


 ②新しい危険運転致死傷罪
 アルコール,薬物又は一定の病気の影響により,その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運行し,よって正常な運転が困難な状態に陥り死傷させる行為を新たに危険運転致死傷罪として処罰対象となります。法定刑は死亡させた場合15年以下の懲役,負傷させた場合は12年以下の懲役で従来の危険運転致死傷罪より低くなっています。


 ③アルコール等影響発覚免脱罪
 アルコール,薬物の影響により,その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で運転し,運転上必要な注意を怠り,人を死傷させた場合に,アルコール等の影響の有無,程度の発覚を免れるために,①さらにアルコール等を摂取,②その場を離れアルコール濃度等を減少させる等の行為が処罰対象となります。法定刑は12年以下の懲役です。


 ④無免許運転による加重
 危険運転致傷罪等を犯した者が無免許の場合,以下のように,刑が加重され法定刑が重くなります。

 危険運転致死傷罪の負傷の場合:15年以下の懲役→20年以下の懲役
 新しい危険運転致死傷罪の死亡させた場合:15年以下の懲役→20年以下の懲役
 新しい危険運転致死傷罪の負傷の場合:12年以下の懲役→15年以下の懲役
 アルコール等影響発覚免脱罪:12年以下の懲役→15年以下の懲役
 自動車運転過失致傷罪→7年以下の懲役→10年以下の懲役

 

自動車の玉突き事故に遭遇し頚椎,腰椎捻挫で併合14級の後遺障害を負った70代男性の事例

依頼者

70代男性
 

委任の経緯

保険会社から示談案が提示された段階で,当事務所の出張相談へ参加し,その後,受任
 

事故の概要

自動車の玉突き事故(自動車と自動車)

過失割合加害者:被害者=100:0

 

後遺障害診断書における傷病名

頚椎,腰椎捻挫
 

後遺障害の等級認定

併合14級
頚椎捻挫後の頚部痛,両手違和感等につき14級9号
腰椎捻挫後の腰痛,左下肢後面痛,しびれ等の症状につき14級9号

 

弁護士介入前の示談提示

143万6029
 

手続き

示談交渉
 

取得金額

313万0000円
 

コメント

保険会社の担当が弁護士に代わり,ご自身で示談交渉をしていましたが,当事務所へ示談交渉を依頼されました。被害者本人の交渉では,約68万円の提示が143万6029円に上がったにとどまりました。


交通事故の損害賠償は,①自賠責基準,②任意保険基準,③裁判基準の3つがあり,順に金額が大きくなっていきます。特に任意保険基準と裁判基準では大きく開きがあります。


弁護士が被害者に代わって交渉することで,約2.2倍(当初提示額の約4.6倍)の賠償金を取得することができました。


保険会社から示談案を提示されても,すぐにサインせずに,弁護士に相談することをお勧めします。
 

第2腰椎圧迫骨折で8級相当の後遺障害を負った60代男性の事例

依頼者

60代男性
 

委任の経緯

事故後,事前認定での後遺障害等級認定後,任意保険会社から示談案の提示があり,示談案の妥当性について相談後,受任
 

事故の概要

駐車場から自動車を誘導し車道に出た被害者と走行中の自動車との接触事故(自動車と歩行者)

過失割合被害者:加害者=20:80
保険会社の見解は,被害者:加害者=30:70だが,早期解決を前提に20:80で和解

 

後遺障害診断書における傷病名

第2腰椎圧迫骨折
 

後遺障害の等級認定

加重障害8級相当(既存障害11級7号)
①第2腰椎圧迫骨折について,せき柱に中程度の変形を残すものとして,8級相当
②第12胸椎の圧迫骨折がせき柱に変形を残すものとして,既存障害(11級7号)と評価
以上により,①現存障害8級相当と②既存障害11級の加重障害と認定

 

弁護士介入前の示談提示

609万8830円
 

介入後の取得金額

748万2934円
労災事故であったため,この他に労災保険から療養補償給付及び休業補償給付(特別支給金含む)合計446万6068円受給済み

 

手続き

任意保険会社と示談交渉
 

コメント

当事務所へ委任前に後遺障害の認定がなされていました。しかし,後遺障害は加重障害と認定されており,逸失利益の基礎収入,労働能力喪失率・喪失期間及び後遺障害慰謝料について既存障害をどのように評価するのかという点が争いになりました。


また,労災保険を受給していましたので,損益相殺の方法,過失割合について法律上の争点がいくつもあった事案でした。


被害者の過失割合が30~40になる可能性もあたっため,既存障害の評価については,当初の主張よりもかなり譲歩し和解しました。被害者の過失割合が大きくなければ,訴訟に持ち込みたかった案件でした。
 

停車中の被害車両に後方から追突され、14級の後遺障害を負った40代男性の事例

依頼者

40代男性
 

委任の経緯

事故直後に,今後の保険会社との対応等について相談に来られ,そのまま受任
 

事故の概要

停車中の被害車両に後方から加害車両が衝突(自動車と自動車)

過失割合加害者:被害者=100:0

 

後遺障害診断書における傷病名

頚椎捻挫,腰椎捻挫,右上・下肢末梢神経障害
 

後遺障害の等級認定

14級
頚椎捻挫後の頂部から肩の痛み,右前腕から右手背のしびれの症状について後遺障害認定

 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

手続き

自賠責へ被害者請求,示談交渉
 

取得金額

合計457万2302円
物損:20万0000円(他に車両修理代68万2302円あり)
自賠責保険:75万0000円
任意保険(人損):294万0000円

 

コメント

事故直後から受任し,自賠責への被害者請求,任意保険会社との示談交渉を行いました。事故直後から弁護士に依頼することで,被害者が直接,保険会社との対応する必要がなくなり,治療に専念することができるようになります。治療についても整形外科にきっちり通院してもらい,後遺障害の認定を受けることができました。


交通事故の被害に遭われた場合は,なるべく早期に弁護士に相談することをお勧めします。
 

自動車どおしの正面衝突事故によって併合9級の後遺障害を負った40代女性の事例

依頼者

40代女性
 

委任の経緯

後遺障害認定後,保険会社からの提示額が妥当かどうかを相談後,当事務所へ依頼
 

事故の概要

自動車どおしの正面衝突事故

過失割合被害者:加害者=0:100

 

後遺障害診断書における傷病名

左外傷性網膜動脈分枝閉塞症,頚椎捻挫,外傷性頚肩腕症候群,右肩関節拘縮(鎖骨骨折),全身打撲,肺挫傷,右鎖骨骨折,左膝関節打撲創
 

後遺障害の等級認定

併合9級
左眼が見えにくい,左眼の視野内に影が見える等の症状につき13級3号
右鎖骨骨折に伴う右肩関節の機能障害につき10級10号
頚部痛が頑固に持続,遺残している等の症状につき14級9号

 

弁護士介入前の示談提示

約1700万円

介入後の取得金額約2600万円

 

手続き

任意保険会社と示談交渉
 

コメント

後遺障害の等級認定後に受任した事案です。弁護士費用と遅延損害金を除いて,ほぼこちらの主張どおりの金額で和解が成立し,結果的に,当初の保険会社の提示額から900万円以上の増額になりました。


交通事故の損害賠償の基準は,①自賠責基準,②任意保険基準,③裁判(弁護士)基準があり,裁判基準が最も賠償額が多くなります。


保険会社から示談案(通常は免責証書にサインを求められる)の提示があった場合,すぐにサインせずに,弁護士に相談することをお勧めします。
 

道路を横断中に飲酒運転の自動車と衝突されてお亡くなりになられた死亡事故の事例

依頼者

40代女性(被害者の子),70代男性(被害者の夫)
 

委任の経緯

刑事裁判で判決が確定したことから,加害者への損害賠償交渉を当事務所へ依頼
 

事故の概要

被害者が道路を横断中に,飲酒運転の上,赤信号で走行した自動車と衝突,加害者は,そのまま現場から逃走し,被害者は即死した死亡事故(自動車と歩行者)
 

過失割合

争いなし(被害者の過失割合0)
 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

介入後の取得金額

合計4653万1004円
①自賠責:2069万9990円
②任意保険:2583万1014円

 

手続き

自賠責への被害者(16条)請求,任意保険会社と示談交渉
 

コメント

加害者の刑事裁判で有罪が確定したことから,依頼者は当事務所へ損害賠償請求を依頼した案件でした。
事故は,加害者の飲酒運転に端を発し,事故後にひき逃げ,さらには,山林に自動車を放置する等の隠ぺい工作を行うといった非常に悪質な事故でした。

任意保険会社との交渉ではこれらの事情を慰謝料の増額事由に当たると主張し,最終的に2583万1014円で示談することができました。

 

交差点での出会い頭の衝突事故で左大腿骨顆部骨折、左手関節脱臼骨折で併合11級の後遺障害を負った30代男性の事例

依頼者

30代男性
 

委任の経緯

事故後,加害者が責任を否定し続けていたが,刑事裁判で加害者の有罪が確定したことから,加害者に対する損害賠償請求を行いたいと当事務所へ依頼
 

事故の概要

交差点での出会い頭の衝突事故(自動普通二輪と普通貨物自動車)
 

過失割合

当事務所依頼後は争いなし
 

後遺障害診断書における傷病名

左大腿骨顆部骨折(関節内骨折),左手関節脱臼骨折(橈骨遠位端骨折,尺骨茎状突起骨折)
 

後遺障害の等級認定

併合11級
12級13号:左手関節脱臼骨折(橈骨遠位端骨折,尺骨茎状突起骨折)後の
痛み等の症状
12級8号: 左手尺骨茎状突起骨折後の変形障害(癒合不全)
12級13号:左大腿骨顆部骨折後の痛み等

 

弁護士介入前の示談提示

なし


加害者が責任を否定していたため,任意保険会社は治療費の支払い等の対応をしていない。通勤途上の事故であったため,労災申請し,療養給付,休業給付(特別給付含む)を受け,治療を行っていた。
 

介入後の取得金額

合計1284万9513円
①物損:15万3370円
②自賠責:326万7540円
③任意保険:942万8603円

 

手続き

自賠責への被害者(16条)請求,任意保険会社と示談交渉
 

コメント

加害者が責任を否定し続けていましたが,刑事裁判で有罪が確定したことから,依頼者は当事務所へ損害賠償請求を依頼した案件でした。刑事裁判は控訴審まで争っていたため,事故後約1年7か月経過して判決確定した後に着手しました。


任意保険会社との交渉では,加害者が信号を無視していたこと,責任を否定し続けていたことが慰謝料の増額事由になると主張し,裁判基準の10%増額の慰謝料を含め,ほぼ当方の提示どおりの金額で和解できました。


膝関節及び手関節の可動域制限もありましたが,いずれも4分の3以下には制限されておらず,自賠責保険上,後遺障害には該当しませんでした。もう少し早期に事件に着手していれば,可動域制限についても後遺障害の認定を受けれたかもしれません。


交通事故の被害に遭われた場合は,事故後,なるべく早い段階で,弁護士に相談することをお勧めします。
 

停車中の追突され頚椎捻挫,腰椎捻挫で併合14級の後遺障害を負った30代男性の事例

依頼者

30代男性
 

委任の経緯

事故後,半年ほど経過し,今後の手続き等を知りたいと相談後に受任
 

事故の概要

停車中の被害者車両に加害者車両が衝突した衝突事故(自動車と自動車)
 

過失割合

争いなし
 

後遺障害診断書における傷病名

頚椎捻挫,腰椎捻挫
 

後遺障害の等級認定

併合14級
頚部痛,右上肢のしびれ感,疼痛,めまい等につき14級9号
腰痛につき14級9号

 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

手続き

自賠責へ被害者請求,示談交渉
 

取得金額

327万2314円
自賠責保険:77万2190円
任意保険:250万0124円

 

コメント

事故発生後,約半年経過してから相談に来られました。相談に来られた時点では,整形外科への通院は月2回程度で,整骨院での施術に偏っていました。


受任後の約2か月間でできるだけ整形外科へ通院してもらい自賠責へ被害者請求し,結果,後遺障害14級が認定されました。


事故後,早期であれば,治療先等の修正が可能であり,できるだけ早期の相談をお勧めします。
 

後退車との衝突し14級9号の後遺障害を負った30代男性の事例

依頼者

30代男性
 

委任の経緯

自賠責で後遺障害が認定されたことを受けて,その後の賠償交渉等の手続きを依頼
 

事故の概要

後退車との衝突事故(自動車と歩行者)
 

過失割合

争いなし
 

後遺障害診断書における傷病名

頚椎捻挫,腰椎捻挫,胸椎捻挫,両膝靭帯損傷兼膝内障
 

後遺障害の等級認定

14級9号
頚椎捻挫後の首の痛み,頭痛等の症状について14級認定

 

弁護士介入前の示談提示

80万0043円
 

手続き

訴訟提起
 

裁判所の和解提示

330万円
 

取得金額

360万円
 

コメント

任意保険会社との交渉を経ずに,訴訟提起した案件です。訴訟の終盤に裁判所から330万円での和解提示がありました。


訴訟が長引いたていたこともあり,和解にあたって,遅延損害金と弁護士費用についても考慮した上で,最終的に360万円で和解が成立しました。
 

胸腰椎椎体骨折で8級の後遺障害を負った70代女性が賠償金を2倍以上に増額した事例

依頼者

70代女性
 

委任の経緯

相手方の保険会社から示談案が提示された段階で,適切な金額であるかアドバイスを受けたいと当事務所へご相談後,ご依頼されました。
 

事故の概要

交差点での出会い頭の衝突事故(自転車と普通乗用自動車)
 

過失割合

被害者:加害者=3:7

 

後遺障害診断書における傷病名

胸腰椎椎体骨折

 

後遺障害の等級認定

「せき柱に中程度の変形を残すもの」として,8級

 

弁護士介入前の示談提示

850万円
休業損害は先に解決しており,それ以外の損害賠償額として提示された。

 

介入後の取得金額

合計1792万0872円
①物損:5万0400円
②人損:1787万0472円

 

手続き

任意保険会社と示談交渉
 

コメント

任意保険会社の対応に不信感を抱き,示談案が提示された後にご相談をされた案件でした。


任意保険会社との交渉では,被害者がご高齢という事情等から後遺障害逸失利益の基礎収入及び喪失期間の交渉が中心となりましたが,最終的に保険会社の当初示談案から2倍以上の金額で和解できました。


後遺障害等級認定がある事案では,任意保険会社の提示額と裁判基準で算定した損害賠償額との間に大きな差が生じることが多くあります。


任意保険会社から提示がされた後でも間に合いますので,一度,弁護士にご相談されることをお勧めします。
 

14級9号の頸椎捻挫・腰椎捻挫を負った30代女性・主婦の事例

依頼者

30代女性・主婦
 

委任の経緯

相手方の代理人から治療費の一括払いの打切りを告げられた段階で,当事務所へご相談後,ご依頼されました。
 

事故の概要

青信号横断歩行中の衝突事故(歩行者と普通乗用自動車)

 

過失割合

被害者過失なし

 

後遺障害診断書における傷病名

頸椎捻挫・腰椎捻挫
 

 

【後遺障害の等級認定】

14級9号

頸椎捻挫後の症状について「局部に神経症状を残すもの」として,14級9号

 

弁護士介入前の示談提示

なし
 

介入後の取得金額

合計291万4481円
①自賠責保険:75万0000円
②任意保険:216万4481円

 

手続き

被害者請求(後遺障害等級14級9号獲得),任意保険会社と示談交渉
 

コメント

加害者側の任意保険会社が治療費を支払っていましたが,約4か月経過したところで,治療費の打切りを一方的に告げられ,不安を抱えた中でご相談された案件でした。


被害者の状態等から,引き続き治療を受けることが適切であるとの判断に至り,健康保険に切り替えて治療を継続し,事故後約6か月経過した時点で症状固定とし,被害者請求をしました。その際,被害者が整形外科への実治療日数が少なかった理由について,症状が軽かったためではない旨を具体的に説明する書面を添付しました。結果的に14級が認定され,示談交渉により解決しました。


14級の認定においては,健康保険に切り替えて自己負担をしてでも治療継続することが功を奏することがあります。 交通事故の被害に遭われた場合は,事故後,なるべく早い段階で,弁護士に相談することをお勧めします。
 

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